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誰かの街の片隅で

未知の駅、王子にある元プラネタリウム・北とぴあで春のMIZ。知らない街に降りるのはドキドキしてしまう。北とぴあという全く聞いたことのないそこは、玉置さんにとって初めての東京だったそうな。MCの中で王子のことをたくさん話したそうにしている様を見ていて、ああ、この街も誰かにとっての場所であり、その人を形成した一部なんだと実感する。

私的な話、今年は学生の頃から住んでいる街から引越したいと思っていて、都心にはほど遠い今の家には、学生の私と社会人になった私の2人がいて、(ある漫画を読んだ時、そういう例えをしていて、それが自分とぴたりと重なったのだ)だから、新しく何か仕切り直したいと思っていても、今のあの街の、あの部屋には、これからの私はとても入りきらないのだと思ったのだ。
なにかと居心地が良くて、家賃も安くて、今は転職したけど、新卒で入社した会社は同じ街にあったから引越す理由もなくて、まあ別に、それでいいと思っていた。でもここ数年、更新する度にいつもちょっぴり後悔して、心の内は「また引越さないの?」なんて自分のことほんの少し責めるような言葉が出てきていて。
でも自分が居心地が良いと思う場所にいたいと思うのは自然なことで、あの街で耳に馴染んだMIZの音楽があって、それは今日、ライブに来ようと思ったことに全部繋がっている。
もう次の場所へ行っていいんだよと、寂しがりやのわたしをわたしは許したくて仕方ない。

技術や言の葉だけじゃない、音楽だけじゃない音楽があるから、ライブが好きだ。
いつも聴くアーティストじゃなくて、いつも行くイベントじゃなくて、知らない街の、新しい年に出会えた音楽が聴きたくて、それは新しいところに行きたいと切に願う自分を受け入れる準備を、MIZに手伝ってもらったのかもしれない。

湿った週末は桜ばかり落として寂しいなと思っていたけど、プラネタリウムのホールはまるくて柔らかな光に包まれていて、ぼやけたまま聴けた『春』のことを、今年は水たまりに落ちていく桜の代わりに大切にしたい。

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