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ナブナさんの音楽とわたし

夜になると涙が止まらなくなる時期があった。
二週間くらい続いて、全然寝れないし、もうダメかもしれないって思った時に夜な夜な弾き語り放送を始めたのがナブナさんだった。
ナブナさん自身忙しくて、曲作りの合間に息抜きがしたいから放送しますって、アーカイブも残さないでひそひそ話をするみたいな生放送が突発的に始まる夜があって、不眠症の私はたまたま聴けるということがよくあった。
曲作りの合間に、息抜きするのも音楽なんだってちょっと笑えたりもした。

ナブナさんが「最近忙しいんですよね」「隠居するなら北欧がいいんですよ。あ、言っちゃったら隠居じゃないか」とかぼそぼそ喋りながら持ち歌から流行りの曲のカバーまで、色んな歌を歌ってくれて、私はそれを止め方の分からない涙を流し続けながらずっと聴いてた。
突然、ずっと好きだったボカロPの曲をカバーしだした時は震えた。その人はもう活動を止められているから、また電子の世界であの歌を聴けるとは思わなかったから。

泣くのって疲れるんですよ。とても。
眠れないし、その頃食欲もなくて、人ってこういう風に死んでいくのかもしれないって何度も何度も考えた。
でも、ナブナさんの歌を聴いている間は「ああ、泣いててもいいや。泣き虫でもいいや。弱い自分でいいや」って思えて、真っ暗な部屋で目を瞑って聴いていた。

「最近TikTokでボカロの曲が無断で使われていることをどう思いますか?」と訊かれて「どんな形であれ僕の音楽を楽しんでくれる人がいるのは嬉しいこと」「許せないっていう人がいるのも分かる」「でも、色んな楽しみ方があるから。喧嘩はしないでねーって気持ちで見てます」と。
「なんでも受け止めるナブナさんですよ」って笑いながら、「喧嘩はしないでね」って言葉がずっと残ってた。

たまに歌いながら、好きなアーティストの話をしながら、コメントの悩み相談に応じながら。
そうやって朝を迎えた日が何度かあった。
ナブナさんの音楽は「絶対大丈夫だから前を向け」と言うんじゃなくて「うるさいな」「間違ってるんだよ」と撒き散らしながら、それでも生きていくんだって歌で、「優しくもなれるんだよ」「まだ眠いかい?」って優しく語りかけてくれる。

今も、ほんとにたまーに、涙が止まらない夜がある。でも、そういう時は「いいや」ってそのままにしてる。あるがまま、このままでいい。
「エルマ」を聴きながら、今日も眠る。
ナブナさんやsuisさんが歌に込めた祈りは、きっとここに、届いています。

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