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節目

またあたらしいひと月だからと節目節目でおこなわれるカジュアルな心機一転さえ許されない人がる。季節が変わっても年が変わっても、トンネルのなかにいたんじゃそんなのわかりようもない。経た時をもって頼りなく傷を覆い、それでなんとか蓋をして、費やした時をもって、それでなんとか折り合いとして。受けた痛みを無きものとして歩むことになんとかわたしは慣れなければならないと、自分に言い聞かせている人がいる。なにゆえにわたしは慣れなければならないと、怒りに震えている人がいる。
あなたがその心機を入れ替え過去に置いてきたことよって、だれかのトンネルの出口が消えることがある。あなたが振りかえらないと決めたことによって、だれかの傷はどんどん深くなる。
節目で心機一転できる人はしあわせだ。明るい、輝いている、さあ今月も頑張るぞ。それは、それじたいはきっといいことだ。


痛みとともに季節を越え、年を越え
経た時をもって頼りなく傷を覆い
それでなんとか蓋をして、費やした時をもって折り合いとして
受けた痛みを無きものとして歩むことに
なぜわたしは
慣れなければならないのだろう

あたらしいひと月がはじまったからまた心機一転と
ひとつ季節を越えたから、気持ちをあらたにと
そんなものは
だれにでも許される自由ではないのだと
知らない人が、また
今日から気持ちをあらたにと
今まさに
わたしを過去のものとするために
この、月替わりの夜に


だれもが思えたらいい
あたらしいひと月がはじまったから
嫌なことは忘れてと
だれもが前を向ければいい
暗いトンネルのなかにあって
いったいどこが月の変わり目であるのか
どこが節目なのか
わかるはずがないから
出口、ただ
それだけを探して
暗いトンネルのなかをずっと、ずっと
走っては壁にぶつかり
よれよれと、立ち上がり 歩き
いつどこにあらわれるとも知れない出口を
いつどこに差し込むとも知れない光を
決して見逃さないように
懸命に顔を上げて
懸命に顔を上げて、探しているんだ
出口を、光を
さあ心機一転と
前を向けるそのときをずっと
こころ待ちにしているのに

あたらしいひと月がはじまったから、また心機一転と
だれもが思えていたらいい
あたらしいひと月がはじまったら
嫌なことは忘れてと、だれもが前を向ければいい
そう願い
浮かべる顔のひとりひとり
月替わりの夜に
思えば先月も、その前も
そう願った





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