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”天皇の料理番”秘伝のレシピ

皇室取材余話【4】“天皇の料理番”秘伝のレシピ

2017年5月2日

 先月20日に、赤坂御苑で天皇・皇后両陛下主催の園遊会が開かれました。

各界で活躍した人や政府関係者など2000人余りが招待されました。
 今回は、皇后さまをはじめ皇族の女性は着物姿。昨年のリオオリンピックで活躍したメダリストのみなさんも出席し、大変華やかな園遊会となりました。

  メダリストの人が何人か「園遊会で焼き鳥やジンギスカンが食べられるとは思わなかった」と感想を述べていました。園遊会では会場内にテントが7か所設置されて、そこで、飲み物や食べ物が出されるのです。


 献立の内容は「オードブル、サンドイッチ、ちまき鮨、海苔巻鮨、ジンギスカン、焼鳥、御料牧場生産品(ソーセージ等)、フルーツカクテル、洋菓子、クッキー、つまみ物、日本酒、ウイスキー、ビール、ポンチ、オレンジジュース、紅茶、日本茶、ウーロン茶」。献立の一部は有名ホテルなどに注文しますが、ジンギスカンの羊肉と焼鳥は、皇室の牧場―御料牧場産です。これを宮内庁の大膳課を中心とした調理担当者が目の前でジュージューと焼くのです。


 御料牧場とは、前々回にこのコラムで触れた外国大使の信任状捧呈式の馬車列の馬の飼育を行っているほか、食用の肉、牛乳、卵、野菜などを生産しています。そのホームメイドの肉が、園遊会で供されているのです。この羊肉は、宮中晩さん会の肉料理にも使われるという柔らかい美味しい肉だということです。
 取材を進めると、このジンギスカンで使われるソースは、TBSでもドラマとなった“天皇の料理番”として知られる秋山徳蔵さん「秘伝のレシピ」であることが分かりました。秋山徳蔵さんは、大正から昭和にかけて宮内省(のちの宮内庁)の大膳課で主厨長をつとめた方です。大膳課とは、天皇と皇后さま、皇太子ご一家の日常の食事や、園遊会や宮中晩さん会、茶会などの接遇の食事を担当する課です。
  84歳まで宮内庁で現役を務めた秋山さん。考案したジンギスカンのソースは、大膳課によると「しょうゆ、みりん、お酢、日本酒をベースに香辛料や野菜、フルーツ、ナッツなど30種類の調味料や食材を使っている」そうです。この「秘伝のレシピ」の作り方は教えてもらえませんでしたが、食べたことがある人に聞くと『独特の風味の、これまで食べたことのない味。とてもおいしい。』とのこと。


 園遊会の帰りには、おみやげもあります。和菓子の箱が手渡され、この中には「菊焼残月」という焼菓子が5つ入っています。菊の御紋の焼き印がついていることからこの名で呼ばれる和菓子。賜物(しぶつ)として、叙勲の後にも3個入りを賜るということです。園遊会のときには、出席者約2000人の全員に渡されるため、2000人×5個=1万個もの数が必要です。複数の和菓子専門店に発注するのだそうです。
 皇室のお世話をする宮内庁。大膳課など霞ヶ関の他の省庁にはない、珍しい部署があります。取材するたびに、一つ一つの行事に、長い歴史が詰まっているなと実感します。

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