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【作品にふれる】 #17 Unboxed

林苑芳2

Unboxed 〜判断を判断する〜

「女の子だから文系にすべき」「こっちの方が大手だから」「もう30 歳だし、今の彼と結婚しようかな」 人は1日に35,000 回判断をしている。しかし、その判断は本当に自分自身で行ったものなのだろうか。Unboxed は無意識に固定化された認識や価値観のフレームを外し、自分の判断を客観視できるツールキットである。「判断を判断する」過程を経て、より前向きな判断への転換を作りたいと考えた。

今泉ゼミ H.E


制作の苦労に、それぞれのゼミならではのエピソード・・・今年度は、コロナ渦で増えてしまった悩みもありました。デザイン情報学科のみなさんに、卒制の裏側をインタビューしました。


Q1 卒制のテーマを決めたきっかけは何ですか?
判断を判断するというテーマで作っています。人は一日に3万5000回判断していると言われています。就活で、「こっちの方が大手だから」「結婚しようかな」などいろいろな判断がありますが、それは本当に自分自身でしている判断なのだろうか?それを紐解いていきたいと考え、このテーマを選びました。
 私は両親が中国出身で、華僑として23年間生活してきました。また、去年留学先のニューヨークで生活するなど、いくつかの文化圏を経験して気づいたことは、「『当たり前』という言葉が苦手」。英語では「common sense」と訳されるけれどニュアンスが違うなと感じます。common senseは、みんなが知っているknowledgeや普遍的な事実です。日本でいう、社会の中で築きあげられた常識とは異なります。
「当たり前」は考えること放棄してるというか、誰かが作ったテンプレートに沿って生きてるだけだと感じます。思い返してみると世の中には無意識的にネガティブだととらえてしまうことがありました。でき婚や、シングルマザーなど、そのような環境で幸せな人はいるにもかかわらず、認識が固定化してしまっているのは勿体無いな、と考えていました。


Q2 卒制を進める中で、苦労したことや悩んだことは?
まず、アウトプットを何にするか、とても迷いました。アイデアを出してみても「弱いね」とコメントをもらったり。全部悩みでしたね。ただ、そうやって悩むのも楽しくはありました!
 次に、頭で思っていることを言語化することが難しい、ということは最初から感じていました。ちょっと気になることや、もやもやを人に伝えるために言語化すると稚拙になってしまうことが多くて、それをいつも今泉先生が翻訳してくれたりしました。
 最後に、タイムマネジメントです。今まで私はチームでものを作っていて、明確な締め切りもありました。卒制は比較的に長期戦だったのでなかなか感覚がつかめませんでした。


Q3 卒制の制作プロセスを教えてください。
壮大なテーマすぎて、勉強すればするほどわからないことが増えていきました。基本的には論文を読んだり、本を読んだり、197人から集めたアンケートを元にデプスインタビューを行うなどで進めていきました。デプスインタビューとは、対話しながらその人の経験を掘り下げて行くインタビューのことです。
 テーマは5月時点で決まっていましたが、8月まではまだ手を動かしておらず、考え事や読書の日々でした。9~11月は週一回ほど卒制のことをじっくり考える時間を作り、アンケートなども集めていました。12月にやっと手を動かし始めて、ぼーっと考えてたことを形にしました。1月の提出(最終審査は卒制展期間の直前です)では、ベータ版でツールボックスを作って、コップや水やカレーを詰めたものを提出しました。


Q3 ゼミエピソードを聞かせてください。

先生とバイブスが合うなと感じていました。興味がある分野が合うから関係ない話が盛り上がってしまうこともありました。ネットフリックスの最近の面白い話や海外コンテンツの話、こういうイベントでこういうデータ出ていてなど。だいたい先生がくださるリコメンドはすでに観ていたことも多かったです。
 今泉先生のすごいところはお返事がすごく早いことです。toreroを使って、進捗を先生に報告するのですが、深夜3時や4時に載せたものに、朝の9時に返事をくださっているということもありました。また、年末12月30日までズーム面談をしてくださったり。早起きだし考える速度もものすごく早いんだろうな、と感じました。

Q4 来場者の方々に注目していただきたいポイントは?

今回当たり前を疑うコンテンツだからこそ、くだらないものもツールボックスに入れました。聴診器を入れたのですが、頭はロジカルに考えてしまうから、聴診器で鼓動を聞いてドキドキする方にしようよ、とか。コップと水が入っていて、水を入れてもらうのですが、その水をどう表現しますか、というものもあります。半分「も」入っているのか、半分「しか」入ってないのか、など。同じ水でも様々な判断あるよねと。すぐ答えのわかる効率の良いデザインではなくて、遠回りだからこそ身をもってわかるデザインを意識して作ったので、そこに注目していただきたいです。



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