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【作品にふれる】 #15 処方箋文庫

処方箋文庫
「よみぐすり、処本します。」 ー箱の中の本屋さん

『文学でも一本のカンフル注射くらいのききめはあるのだ。生命にとって。(- 新美南吉)』『小説は劇薬ですよ。魂の病人のサイミン薬です。(- 坂口安吾)』……明日への命をつなぐものでありながら、時には人体に悪影響を及ぼす点において、文学と薬は似ている。処方箋文庫は、前を向くための希望や明るさを与える「安定剤レーベル」と、非日常感やショックを与える「刺激剤レーベル」二種の処本箱から、利用者の心の状態や状況に寄り添った本を処方するサービスであり、あたらしい本との出会い方の提案を行う。では、服用していただきたい。

木下ゼミ K.T

川崎3

制作の苦労に、それぞれのゼミならではのエピソード・・・今年度は、コロナ渦で増えてしまった悩みもありました。デザイン情報学科のみなさんに、卒制の裏側をインタビューしました。


Q1 卒制のテーマを決めたきっかけは何ですか?

ムサビ入学前から、本や文学館が好きだったので、卒制では「本にまつわる空間、もしくは企画の提案」をしようと……それだけは、予てより決めていました。
 しかし、アイディアが思うようにまとまらないまま夏になり、続く自粛生活の中で精神が衰弱。そんな時に、ある小説の一節に心救われ、文学は心の薬であることを痛感しました。作家の坂口安吾氏や新美南吉氏の作品や日記にも、そういった風の言葉が残っています。実体験と、先人たちの言葉などを踏まえた上で、文学を薬と見立てた本屋や企画ができないか……と思いついたのが、この『処方箋文庫』のはじまりです。


Q2 卒制を進める中で、苦労したことや悩んだことは?

対面でのゼミが可能となったの後期からでしたので、教授やクラスメイトに初めましてと挨拶をしたのが九月の下旬です。それまでの、方向性があやふやのまま、一人でただ闇雲に動いていたいたときのことを思い出すのは、今も少し苦しい。
 誰かに現時点でのアイディアを聞いてもらったり、ちょっとしたアドバイスを貰うだけで、今の自分の立ち位置や進行具合が客観視できることが多いです。視点が固定されたまま一人で黙々と作業を進めていると、やりたいことや目的をいつの間にか見失っていたり、気づいた時にはレールから外れている……なんてことも。
 実際、私自身は十月頃まで、自分の中でなんとか消化しきろうとしていたので、その分アイディアが絡まったまま固まってしまい、軌道修正するのに一苦労しています。


Q6 来場者の方々に注目していただきたいポイント

近未来的な薬局風にアレンジした空間も勿論ですが……文庫本の入ったパッケージや、壁にかかった50冊のカルテ、点滴から垂れる文字といった「言葉」を見ていただきたいです。また、本展示で、誰かの「新しい本との出会い」を処方できたなら、大成功だと思っています。

※ただし、処方される本の効果には個人差があります。








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