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存在しないCDの品番の話

hide (X Japan)のソロとしてのライブドキュメンタリービデオ『Ugly Pink Machine File.2』は今から25年前の1997年3月26日に発売された。その同年同日にhideのもう一つのプロジェクトバンドであるzilchの作品が出る可能性があったかもしれない形跡がネット上に見つかった。

・CTCR-17015

ここ数年のうちにできたと思われるタワーレコードのデータベースサイトで、先日何気なくzilchを検索すると1997年3月26日発売『エレクトリック・キューカンバー』というCDの情報を発見。

hideのディスコグラフィを多少知っている人ならこのようなタイトルのCDなど世に出ていないことは即座にわかる。

hideの実質3枚目のアルバムと言って差し支えないzilchの『3・2・1』というアルバムは、hideの生前に完成しながらも契約等の所謂大人の事情で完成後すぐには発売が叶わず、hideが亡くなった後の1998年7月23日に発売された。エレクトリック・キューカンバー (Electric Cucumber) はそのアルバム1曲目のリードトラックでありPVも作られている。

この曲は1996年の前半には既に完成していたと思われるので、先に書いた1997年3月26日に発売することは不可能ではない。しかし結果として発売はされていない。データベース上での単なる誤情報・誤植の類ではないかという疑念も拭えないが、リンクを見ると品番やJANコードまで載っており、やけに具体的だ。そこでこのCTCR-17015という品番や4945817170156というコードで検索してみると他にも同じ情報を載せているサイトが見つかった。

これらは何の根拠もないのに掲載しているのだろうか?詳しい資料があるわけではないので以下素人の憶測になってしまうが、おそらくそれぞれのサイトが独自に情報を載せているわけではなく、CDのカタログがすべて載っているような、業界で共用している何かしらのデータベースのようなものがあり、それを精査することなくそのままサイトに反映させているのでこのような同時多発の間違いが起きていると思われる。実際に発売しているか否かすべて確認するのは至難の技なのでそれは無理もない話。

ここで注目したいのは間違いを載せていることではなく「発売する予定だったもの」まで含んでいるデータベースがあるのではないかという点。CDの情報を調べる際、私はオリコンのサイトCDジャーナルのサイトをよく使うがそこには「発売されたもの」しか載ってないし当然それで良い。音楽雑誌に紹介記事を書いたりCDショップで予約受付をするために「発売する予定のもの」の情報が事前に業界に流れる。大半のものはその情報通りに発売されるのだがいつの間にか雑誌に新譜の続報が載らなくなったり、予約がキャンセルになってしまうことがたまにある。業界情報であるその「発売する予定だったもの」までをそのままデータベース化してしまったとのだとしたらそれはそれで情報として興味深い。

・小沢健二のケース

次に私の別の守備範囲のひとつである小沢健二のアルバムについて

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※以前Twitterで拾った画像です

この画像のものは私の記憶に間違いがなければたしか新星堂で毎月発行していたフリーペーパーで、私も毎度もらっていたがいつしか捨ててしまった。これは1997年10月頃のもので、多分同じものを持っていたのではないかという気がする。このタイトル未定のアルバムがスチャダラのシンコがプロデュースしたと言われるものなのか、ベスト盤的なものなのかはよくわからないが、とにかくこれはファンならご存知の通り発売されていない。しかしここにも既にTOCT-9990という品番が付いている。TOCT-9990で検索すると出てくるのは以下のサイト。

発売日が伸びたのか1998年1月1日発売になっている。代わりにというわけではないだろうが実際に1月1日に出たのはある光の12インチ。

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・CTCR-17015の前後の品番

話をzilchに戻して、発売はされなかったエレクトリック・キューカンバー [CTCR-17015]の前後の品番の作品が気になったので調べてみた。

品番・発売日・アーティスト・タイトルで並べてみる。

[CTCR-17012] 1997.02.26 V.A. / Punk Rock Jukebox
[CTCR-17013] 1997.03.26 Naked / What's Wrong with Myself
[CTCR-17014] 1997.03.26 Ensign / Ensign
[CTCR-17015] 1997.03.26 Zilch / Electric Cucumber
[CTCR-17016] 1997.03.26 Oblivion Dust / Numb

このうちzilchと同じ発売日の3点を入手した。

Naked / What's Wrong with Myself [CTCR-17013]

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Ensign / Ensign [CTCR-17014]

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Oblivion Dust / Numb [CTCR-17016]

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NakedはLAのパンクバンド、Ensignはニュージャージーのハードコア、Oblivion Dustはzilchのレイ・マクヴェイがプロデュースした日本のバンドでhideとも所縁があるのでこれは以前から所持していた。この並びにzilchが加わっても何の違和感もないロックなラインナップになっているが当然CTCR-17015は欠番になっている。おそらく発売する予定はあったのではないか、と結論づけたい。ただ、1997年3月26日時点ではまだアルバムの半分程度しか完成していないはずで、形態としてはOblivion Dustのようなマキシシングル、もしくはリンク先の販売価格を信じるならミニアルバム的なものになったのではないかと思われる。

単に「幻のアルバム」とか「お蔵入りの曲」といったぼんやりした表現で終わらずに、品番や発売日まで決まっていたのに発売中止になったのだ、と想像すると具体性があり幻のCDがよりリアルに感じられ面白い。探せば他にも存在しないCDの品番がありそうなデータベースだ。


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