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【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」/伊藤計劃『ハーモニー』読解

 年末の進捗報告です(挨拶)。色々やってるんで自分でもこんがらがる可能性があり、まあ後に続く研究者もいるかも、て感じで書き残します。

 本題。「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」ですね。ここ数ヶ月ほど引っかかってまして、この問いが本当の最終問題なのかなーという気はしています。

 まずそもそも、『ハーモニー』本文では、たびたび重要な事実が隠されています。たとえば、一部の旅路。霧慧トァンが父と別れた後、最終目的のチェチェンに向かう。その過程で実は日本に寄っている。

 いや直接書けよ、と思ってたんですが、実際に書かれてはいない。
 そこで、不意に反転したんですね。つまり、「霧慧トァンは”書いてない”んじゃなくて、”書けなかった”んじゃないの?」と。

 (※以下、現段階での推論と回想パートの位置づけについて触れています)

 つまり、『ハーモニー』には何らかの形で検閲が入っている。
 もしくは、あらかじめ自己検閲した形で霧慧トァンが書いたのでは、と。
 そう考えると、あの欠如にも筋が通っているのではないか。

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