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原点回帰~初心忘るべからず SIAT編その3

 この記事は投稿者・松本が管楽器修理の道に入った頃を振り返るものです。ときは2009年。このころは2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンショックによる世界金融危機の真っ只中。また、豚インフルエンザの世界的流行で、パンデミックという言葉をはじめて耳にしたり、街中でマスク姿をよく目にするようになったのもこの年です。日本ももちろんその影響下にあり、不景気や病気に対して不安いっぱい。その解消を期待してか、国民は総選挙で民主党を選択し、麻生内閣から鳩山内閣へ政権交代しました。そんな岐路に立っていた日本と軌を一にするように松本も人生の岐路で新たな道に踏み込んだのです。

 4月より管楽器リペアスクールSIAT(湘南管楽器リペアスクール)に通いはじめました。最初の三日間はオリエンテーション、簡単な道具類の説明などがあり、本格的な授業は四日目4/9(木)からはじまりました。そこで面くらいました。講義はひたすらS先生がしゃべり続ける。それを聞き書き。図はさすがに板書してくれますが、説明は口頭のみ。もちろん聞き取れないところ、どのような字で書くのかわからないところは一段落したところで、先生に確認することはできますが、悠長にひとつひとつ聞いていく雰囲気ではありません。どうしても確認したいところに絞って、聞く。あとでネットなどで調べればわかりそうなことは後回し。といった調子です。だから、復習が大変でした。そのため、自分が確認するのを諦めた部分を他の生徒さんが聞いてくれた時はとてもうれしかったです。

 初日の講義は音響学。「音は空気中をすすむ縦波である」からはじまり、「波の特性は反射、屈折、回析、干渉」、「音の三大要素は強さ、高さ、音色」といった物理の授業と同内容のものが続く。「耳の構造」では生物の授業です。理科はそんなに苦手な方ではないけれど、「メンズールの法則」という初耳の法則について延々一時間以上講義が続いたのには正直閉口しました。内容は全くわからないまま、ひたすら聞いたものを書き留める作業。Don’t think, write!って感じです。

 休み時間には先生に確認できなかったことをお互いに聞きあっていました。「あぁ、分からないのは自分だけじゃないんだ」という安堵と「お互いの得意分野で補っていく」互助を実感しました。授業中あんなに必死なのに休憩時間も授業の復習。学生時代には考えられないことでした。やはり、これからリペアマンとして身を立てていこうとみんな一生懸命だったのでしょう。

 気がつけば、一日約6時間の講義で26ページもノートを取りました。大きめの字(早く書くには小さい字でちまちま書いていられませんでした)、様々な図(これが後々役に立ちました)があってのことなので、正味半分ぐらいのページで収まる内容かもしれません。それでも、こんなにノート取りしたことは恥ずかしながら、今までありませんでしたから、腕は痛くなるは、頭は知恵熱であつくなるは、てんやわんやの一日でした。これが延々数ヶ月続くのです。このスクールは半年制。おおまかに言えば、前半が座学、後半が実技です。その限られた時間ではこの方法でないとカリキュラムを消化できないのです。途中からそのことはわかってきたのですが、それでも、「必死の聞き書き」は最後まで慣れることなく、毎回へとへとになっていました。それでも続けられたのは先程書いたとおりリぺアマンになること=新しい自分になることに無我夢中だったからでしょう。後半は実技中心になり、ノート取りの呪縛からは逃れることができましたが、実技は実技で大変なことが待ち受けていました。その辺のことを次回書いてみます。

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