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④タックスプランニング FP1級

◎所得税の申告納税


所得税の申告納税額を計算するには
①その人の総所得金額を計算
(総所得金額は、大雑把に言うと、総合課税の所得を合計し、損益通算した後の金額)


FP1級2020/1問59

次の設例に基づいて,下記の各問に答えなさい。

《設例》
個人事業主であるAさんは、妻Bさんと小売業を営むとともに、所有する賃貸マンションから賃貸収入を得ている。Aさんは、営んでいる事業が軌道に乗り、さらなる拡大を企図して、将来的に法人化することを検討している。
Aさんは、2019年中に、非上場株式の配当金を受け取った。この配当金については、総合課税により配当控除の適用を受ける予定である。また、加入していた生命保険契約を解約し、解約返戻金を受け取った。
Aさんの家族構成および2019年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。
なお、Aさんは、2019年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。

〈Aさんとその家族に関する資料〉
Aさん(50歳)  : 青色申告者
妻Bさん(50歳) : 2019年中に青色事業専従者として給与収入80万円を得ている。
長女Cさん(24歳): 大学院生。2019年中の収入はない。
長男Dさん(20歳): 大学生。2019年中にアルバイトにより給与収入100万円を得ている。

〈Aさんの2019年分の収入等に関する資料〉
I.事業所得に関する事項
(1)2019年中における売上高、仕入高等
売上高:9,960万円
仕入高: 7,500万円
売上値引および返品高:14万円
年初の商品棚卸高  :710万円
年末の商品棚卸高  :745万円
必要経費※     :690万円
※上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、当該必要経費には、青色事業専従者給与は含まれているが、売上原価および下記(2)の減価償却費は含まれていない。

(2)2019年中に取得した減価償却資産(上記(1)の必要経費には含まれていない)
車両1台※:7月12日に事業用として48万円で購入し、取得後直ちに事業の用に供している。
(耐用年数4年、償却率(定率法 0.5 / 定額法 0.25))
※償却方法は法定償却方法とする。

II.不動産所得に関する事項
賃貸収入:720万円
必要経費:750万円
賃貸用不動産の取得に要した負債の利子:60万円
(土地の取得に係るものが42万円、建物の取得に係るものが18万円)が含まれている。

III.Aさんが2019年中に受け取った非上場株式の配当金に関する事項
配当金額 : 60万円(源泉所得税控除前)
※その支払の際に、所定の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されている。
※当該非上場株式を取得するための負債の利子はない。

IV.Aさんが2019年中に解約した生命保険に関する事項
保険の種類: 一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
契約年月 : 2009年8月
契約者(=保険料負担者) : Aさん
被保険者 : Aさん
解約返戻金額  :370万円
正味払込済保険料:300万円

※妻Bさん、長女Cさん、長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
※Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
※Aさんとその家族の年齢は、いずれも2019年12月31日現在のものである。

※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

前問《問58》を踏まえ、Aさんの2019年分の所得税および復興特別所得税の申告納税額を計算した下記の表の空欄(1)~(6)に入る最も適切な数値を求めなさい。空欄(6)については、100円未満を切り捨てること。
なお、Aさんの2019年分の所得控除の合計額を400万円とし、配当控除の適用を受けるものとする。また、記載のない事項については考慮しないものとし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

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〈資料〉所得税の速算表

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解答解説


所得税の申告納税額を計算するには、まずその人の総所得金額を計算する必要があるが、総所得金額は、大雑把に言うと、総合課税の所得を合計し、損益通算した後の金額。

本問では、事業所得と不動産所得、配当所得(非上場株式の配当金)、一時所得(一時払変額個人年金保険の解約返戻金)は全て総合課税の対象。
※非上場株式の配当金は、原則として総合課税の対象で、受取時に税率20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収される(地方税は天引きされない)。
※一時払の養老保険や個人年金保険・変額個人年金などを契約から5年以内に解約(満期による契約満了含む)した場合、金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税となる(復興特別所得税を含む)。
本問の場合、契約から解約まで5年超であるため、受け取った解約返戻金は、一時所得の収入として総合課税の対象。
さらに、一時所得は、総所得金額を算出する際に、その2分の1が合算対象です。

・事業所得:1,720万円
(事業所得の金額=売上−売上原価-必要経費-青色事業専従者給与-青色申告特別控除額
売上9,960万円-売上値引および返品高14万円
売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高
=710万円+7,500万円-745万円=7,465万円
必要経費690万円
青色事業専従者給与0円
青色申告特別控除額65万円
減価償却
=48万円×1台×0.25×6ヶ月/12ヶ月×100%
=6万円
(定額法OR定率法?個人で届出をしない場合⇒定額法
償却できるのは事業で使った月数分だけ
減価償却費=取得価額×償却率×事業での使用月数/12ヶ月×事業専用使用割合
Aさんの車両の使用開始日は7月12日なので、1年のうち5ヶ月と20日間だけ使用していますが、1ヶ月未満の使用月数は切り上げ。6ヶ月使用したとみなされる。)

・不動産所得0
不動産所得=720万円-750万=▲30万円のうち、土地の借金の利子分42万円は損益通算の対象外なので、損益通算の対象となる不動産所得の損失は発生しない。
(不動産所得=不動産収入-必要経費-青色申告特別控除だが、Aさんは事業所得の算出時に最高65万円の青色申告特別控除を使い切っているため、不動産所得からは控除できない。
不動産・事業・山林・譲渡所得の損失は、給与所得や一時所得等の他の所得と損益通算可能。
ただし、不動産所得の損失のうち、土地取得に要した負債の利子相当部分は、他の所得と損益通算できない(建物取得用なら損益通算可)。
つまり、借金して土地を購入した場合、その年は収入より支出が上回って不動産所得が損失となっても、借金の利子分は損益通算の対象外ということ。
青色申告していると、

・配当所得60万円
=源泉徴収前の配当収入-株式等取得用の借入金の利子だが、
本問の場合は借入金の利子はないため、
配当所得=60万円。

・一時所得=収入額-収入を得るために支出した額-特別控除50万円
一時所得=370万円-300万円-特別控除50万円=20万円

・総所得金額=事業所得+不動産所得+配当所得+一時所得×1/2
=1,720万円+0円+60万円+20万円×1/2=1,790万円

次に、課税総所得金額、算出税額を計算して求める。

課税総所得金額=総所得金額1,790万円-所得控除合計400万円=1,390万円
算出税額=課税総所得1,390万円×33%-153.6万円=305.1万円(2)

株式等の配当控除額は、配当所得額×10%で、課税総所得金額等が1,000万円超の場合は、1,000万円超部分については配当所得額×5%。
本問の場合、課税総所得金額1,390万円のうち配当所得60万円なので、配当所得は全額1,000万円超部分として、控除率5%となる。
よって配当控除額=60万円×5%=3万円

配当控除は、法人税と所得税の二重課税を避けるため、一定額を算出税額から控除する税額控除なので、先程の算出税額から差し引くことが可能。
よって差引所得税額(基準所得税額)=305.1万円-3万円=302.1万円
さらに、復興特別所得税は、所得税額の2.1%。
復興特別所得税=302.1万円×2.1%=63,441円(4)
所得税と復興特別所得税の合計=302.1万円+63,441円=308万4,441円

ここで、源泉徴収済みの所得税・復興特別所得税は算出税額から控除できるが、本問では配当所得が源泉徴収の対象。
前述の通り、非上場株式の配当金は、受取時に税率20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収されている。
源泉徴収済みの所得税・復興特別所得税=60万円×20.42%=12万2,520円(5)

よって申告納税額=308万4,441円-12万2,520円=296万1,921円
→296万1,900円(100円未満切捨て)(6)

A.
(1)17,900,000(円)
(2)3,051,000(円)
(3)30,000(円)
(4)63,441(円)
(5)122,520(円)
(6)2,961,900(円)

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