水の神 「鎮まれ、お前たち」
鎮まれ。山の神よ。
お前は人間たちへの猛烈な怒りを持っているようだ。
自分たちの山を、仲間たちを、切り裂いた人間たちを。
お前の怒りも分かる。
しかし、鎮まるのだ。
鎮まるところしか何も始まらない。
そしてそれは、実のところ、お前が悩むことではないのだ。
これは起こるべくして起こっていることなのだ。
お前は、人間が現れる前までは、山や海、森、植物、生き物たちが調和して生きていた。そこでは食べ食べられという関係はありつつも、大きな意味ですべてがバランスが取れていたと思っているのであろう。
しかし、それはもう変わったのだ。
氷河期にすべてのバランスが変わったように。大噴火のときにすべてのバランスが変わったように。
人間という存在がすべてのバランスを変えることになったのだ。
今までのバランスに憧れてもしょうがない。
人間を含めた、新しいバランス、新しい調和を作り出さなけばいけない。
われわれは、かの人間たちと対話をしなければいけないのだ。ほとんどの人間たちはお前やわたしの声を聞くことが出来ない。しかし、わずか一部に、われわれの声を聞き取れるものがいる。
そういった人間でも、始めはわからないふりをするかもしれない。声を声だと認識せずに生きているかもしれない。それでも、諦めずに声をかけ続けるのだ。バランスなど、一気には変わらない。地道に続けるのだ。
そのためには、まずは心を鎮めるしかない。
こちらが怒っていたら、相手は怖がって逃げるだけだ。もしくは、怖がってより我々を排除しようとするだけだ。
怒りは心の奥に留めよ。鎮まり。対話せよ。
そして、次のバランスを探り出すのだ。人間とともに。
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