体の覚醒

小学校四年生の時、私の中のホルモンが動き出した。自分の脳みそでは説明ができない体のスイッチが入ったのだった。
胸が明らかに他のどうしようもない変化によって、痛みを伴い膨らんでいった。
乳首が敏感になり、自分が女なのだと思いっきり叫んでいるかのような体の変化が起こったのだった。
そこで、私は、脳みそと体のアンバランスさを感じていた。
脳みそはまだまだ甘えたい欲望に満ち、体は真逆に大人へと進化していっていた。このチグハグさが、心地悪くて、何故だか自尊心を傷つけられているような、自分であって自分でないような、そんな不協和音を放っていたのだった。
そしてある日、決定的な事が起きた。
父とお風呂に入った時、服を脱いだ私の胸を見て
「おまえも大人の体になってきたな」
と、初めて異性から指摘され、この世の終わり的に恥ずかしさを感じたのだった。何とも言えない感じがした。もう二度と、父の目に私の胸を見せたくないという思いだった。
「あなたはもう子供じゃない」
と、否定されたような感覚も感じた。それきり、父とお風呂に入ることはなくなった。と同時に、誰とも入らず誰の目にも自分の裸を見せたくない思いにかられた。
自分のはずだった自分が、違う自分へと変貌していく様を、誰にも見られたくなかったのだ。
自分だけで自分の変貌していく様を観察した。その観察は、今日も続いているように思う。
いつしか、自分ともう1人の自分、客観的に観察する自分がいた。このもう1人の自分の存在が、私の人生の中で重要なキャストとなっていく。
その後、初潮を迎えた私に、母は、その血で汚れたパンツを見せなさいと言ったので、私は誇らしげに見せた。
私はもうオトナなのよ、どうよ?と言わんばかりの態度でパンツについた血を見せた。そして、父に言ったのだった。
「オンナになったよ」
今、母となった私からその当時の私を見た時、何という可愛くない小学生だったのだろうかと呆れてしまうほど、私は大人びた子供だった。
今と身長もさほど変わらない体格で、早熟だったのだ。
オナニーを覚え、オーガズムを知り、その瞬間、自分のヴァギナが躍動する事も、もう当たり前のように知っていた。
ただ、男を知らなかっただけだったのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?