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紫陽花に旅をしているキミの存在とは

紫陽花が咲き乱れる梅雨の通学路

ぼくは独りで雨に打たれながら

うまずたゆまず 自分の“言葉”を整理していた


この孤独な気持ちに当てはまるワードが浮かびそうな気もしていたが

それはまるで泡沫の雫のように

浮かんでは消え 浮かんでは消え

ぼくをしっかり困らせた


靴がえらく小さくぎゅうぎゅうになっており

踵に不思議な痛みを感じた

雨の水滴が ぼくのその靴擦れの傷に染みてくる

そこに特別な不快感を覚えることもなく

ぼくはただ黙ってそれを感じていた


何か音が聞こえたような気もしたが

きっとそれはぼくが枯草を踏んだ音だろう

カッカッカッと 時折耳に入ってくる


道の向こう側には大好きな公園があり

遊びに行きたかったが

どうも目の前に霧がかかっているような気がして

足取りが重くなった


ふと目をこらしてみると

目の前にある大きな家の庭から伸びる紫陽花の葉っぱに

小さなでんでん虫がくっついているのが分かった


のんびり のんびりと

歩みを進めて その葉っぱの色と景色をたしなんでいる感じ――


縛られることもなく

この地球(ほし)に住み

自分のペースで旅をしている


なんだか彼のたくましいその姿がとても羨ましかったし

僕にも同じことが出来る気がしてきた


空は白く しばらく雨がやむ気配も感じられなかったが

僕の傷だらけの足は 少しだけ軽くなったような気がした


おかげで 目の前の霧が晴れたよ

僕が行きたい公園には きっと素晴らしい景色が 待っているんだろうな


「ありがとう」

自然と “言葉”を発していた

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