「東京観光日誌」#40|乃木坂、六本木|21_21 DESIGN SIGHT
国立新美術館を出てランチをとり、再び東京ミッドタウン西の交差点に戻って来た(写真下)。
外苑東通りを挟んで、今度は国立新美術館とは反対方向へ歩くことになる。すでに案内表示もあった(写真上)。ここからミッドタウンガーデンの中を少し歩けば目的地「21_21 DESIGN SIGHT」が見えてくるはずだ(写真下)。
・ パブリックスペースについて
何か・・のどかな感じがする(写真上)・・
日本の都市には座って寛げるパブリックスペースが意外と少ない、と日頃から思っている。ここは貴重な場所だ・・。あれ? 立て看板に何か書いてある・・何々(写真下)。
「小川内への立入りはご遠慮ください」か・・小川?・・か。これがないと遊び場になってしまうのかな・・「ASHIMIZU」と書いてあるけど。
そう言えば、日本でパブリックスペースがあっても、そこには大概注意書きが至る所にあったりする。ちょっと落ち着かないが・・やむを得ないのだろな・・実際人が集まっているところへ行くと、モラルのない人も結構いるし・・。
あ、鳩さん・・鳩さんのモラルは問題ない。
と、のどかな光景を眺めながら歩いていると、すぐに到着「21_21 DESIGN SIGHT」。
・ ギャラリー3
左右対称の建物の間に立って、どちらに入ればいいのか一瞬迷う。ひとまず、左の方から入ってみようか・・と入口のドアを開けてみる(写真下)。
「クリストの展覧会は反対側の建物になっております」とすぐさま窓口の方に案内された。きっと“あれっ⁈”という顔をしていたんだろう。
後から調べてみたら、こちらはデザインのプレゼンテーションスペース、ということだった。せっかくなので拝見させていただこう(写真下)。
クリストの作品をモチーフにしたバッグやTシャツが作品のように展示されている。
「もしかしたら・・この素材は本当のクリストの作品に使用したものですか」と尋ねてみた。
「いえいえ、これはこのために作られたものです」とお店の人。
以前、クリストの作品でマイアミの島々をピンクの布で囲う作品(《囲まれた島々》)があった。この時初めてクリストの作品を知って驚いたことを覚えている。その後、作品に使われていた(カットされた)ピンクの布が画集に入って売られているのをアメリカの書店で見た。もちろん数量限定だったと思うが、そういう作品の使い方にも感激した思い出がある。その時にその画集を買っておけば良かったな~と今になって思うが、当時の私はかなり貧乏だったのだ。
・ ギャラリー1と2
さて、展覧会場へ移動しよう。こちらがギャラリー1と2がある施設となっている(写真下)。
この規模の建物にしてはいささか小さめなエントランスである。しかし、驚くことなかれ、ここは錚々たるメンバーが関わって開業までこぎつけたのだ。
1988年ニューヨークで開催されていたイサムノグチ展の会場で、三宅一生、安藤忠雄そしてイサムノグチが顔を合わせ、デザインのためのミュージアムの必要性を語り合ったことが出発点となっている。
残念ながら、イサムノグチはその年の12月に世を去ってしまったが、その後約20年の時を経て多くの著名人・企業等が関わり、2007年に東京ミッドタウンと合わせてようやく開業となった。それから2017年開館10周年を機に、ギャラリー1と2に加えて先ほどのギャラリー3も開設された、ということだ。
ちなみにここの名称は、英米では優れた視力のことを「20/20 Vision(Sight)」という。そこから検討され最終的に“今よりもさらに一つ先を見通したデザインを発信する場”として「21/21」となり、最終的に「21_21 DESIGN SIGHT」に落ち着いた。読み方は「トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト」と言う。
では、中に入ろう。入るとすぐにチケット売り場となっている。
展覧会「クリストとジャンヌ=クロード“包まれた凱旋門”」(6月13日~2023年2月12日)の入場料は一般1,200円(大学生800円、高校生500円、中学生以下無料)。バーコード決済(メルペイ)で支払うことができた。メルペイ対応は意外と珍しい。そして、写真撮影はOKだった。
・ クリストとジャンヌ=クロード
まずはこの展覧会の「ごあいさつ」文を読んでみる。
会場内へ進んで行こう。ギャラリー1と2は地下にある(写真下)。
スケールが大きい・・こういう作品作りに驚かされる。クリストの展覧会は今回が初めてだ。
21_21 DESIGN SIGHTの敷地は周辺環境を壊すことなく、併せてデザインの美術館として主張することも考慮し、床面積の8割を地下に埋設することとした。さすがに「地中美術館」を手掛けた安藤忠雄の建築物と言える。
ここはギャラリー手前の空間となっていて、過去の作品の映像や「包まれた凱旋門」周辺の地形を表した模型が展示されていた(写真下)。
「《ヴァレー・カーテン》・・これもまた迫力ある作品だ(写真上)。つい映像を見入ってしまう。近くの壁面には「ニューヨークのスタジオ」の写真が展示されていた(写真下)。
クリストとジャンヌ=クロードの生活感のある日常風景が垣間見れて実に興味深い。80年代後半から90年代のニューヨークの雰囲気は私も僅かながら体感しているので親しみがわく。
さらに奥へ・・ギャラリー1の方から行ってみよう(写真下)。
中央にパリのエトワール凱旋門の精巧な模型が展示。これを使って梱包方法などを計画していたのだろう。ギャラリー内の片側では、梱包作業前の準備段階の様子が映像で鑑賞できるようになっていた。映像の参加者はリーダの号令の下、梱包する布を丸めたりする様子が映し出されていた(写真下)。
隣の部屋がギャラリー2になっていてギャラリー1より広めだ(写真下)。
入口手前ではこちらも映像が流れていて、実際に行われた凱旋門の梱包作業が観れるようになっている。・・現地で観てみたかったな。
・・あ!そうだ、日本でもプロジェクトが実施されたことがあったんだ。1991年にアメリカ・カリフォルニア州南部と茨城県北部で設置された「アンブレラ」という傘の作品(写真下)である。もっともこれも見逃してしまっているが。
クリストの作品をイメージしたインスタレーション(写真上)。銀色のコーティングされた青い布と赤いロープが壁面を覆っている。その中を歩いて通る。
クリストの作品はスポンサーなどに頼らず、何億円もかけて自費で賄う。実現までの交渉、経済的な問題、プロジェクトに関わった人々との交流、こうした過程をクリストは自らの作品と見なしていた。
「プロジェクトは所有できない、買えない、入場料も取らない、素晴らしく非合理なものです」「ありふれていない、役に立たない(ユースレス)ことこそが、クオリティーを支えているのです」と雑誌「美術手帖」のインタビューで語っていた。
・ 二つの展覧会を観て
今日は二つの好きなアーティストの展覧会を観ることができた。
どちらも作品との対峙が際立っていた。つい背筋が伸びてしまう。たまたま東洋と西洋のエッセンスを感じた・・考え出すと面白い。
だけど、先日読んだ本の中にこんな文があった。
「どれだけ多くの人を助けたか、どれだけの偉業を成しとげたか、そんなことは問題ではない。時間をうまく使ったといえる唯一の基準は、自分に与えられた時間をしっかりと生き、限られた時間と能力のなかで、やれることをやったかどうかだ。
どんな壮大なプロジェクトだろうと、ちっぽけな趣味だろうと、関係ない。
大事なのは、あなただけの次の一歩を踏み出すことだ。」
「限りのある時間の使い方」(オリバー・バークマン=著、高橋璃子=訳)という本の一節である。
そう言ってもらえると少し勇気づけられる感じがする。
私の一歩は・・まずは軽く飲んで帰ることかな。
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