見出し画像

「東京観光日誌」#29|新橋|パナソニック汐留美術館

4月24日(日)曇りのち雨。JR新橋駅に着いた。
いつもネットで交通アクセスは確認するが、目的地に着くまでに案内図も設置されているので、あったら大概チェックする。地図を見るのが好きなのだ。銀座口から出て東へ8分程度歩けば「パナソニック汐留美術館」に着くはずだ。

駅周辺案内図
JR新橋駅銀座口から出発

・ 「ぐるっとパス」で巡る第2弾

先週「朝倉彫塑館」で「ぐるっとパス」の利用2ヶ月間をスタートさせた。今回はピカソが来ている「パナソニック汐留美術館」に決めて、ホームページの案内に従ってe-tixのオンラインチケットを取り、入館時間の予約を12時に入れておいた。この時点では支払いはない。0円。当日に受付で支払うことになる訳だが、「ぐるっとパスカード」があればここは無料で入館できることになっている。
通常であれば、一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生:700円、高校生:500円、中学生以下:無料となる。(ということで「朝倉彫塑館」で500円プラス今回1,200円だから現在1,700円)。

展覧会のポスターを見付けた(写真下)。この界隈に美術館がある。

パナソニック東京汐留ビルの案内

ここからビルの谷間の方へ向かって歩いて行く(写真下)。あれが美術館のあるビルかな・・。

パナソニック東京汐留ビル
パナソニック東京汐留ビル入口近く

やっぱりそうだ。ガラス越しに美術館の表示があった(写真上)。
まだ傘をさすほどでもないけど、先ほどからポツポツと雨が降り出している。あまり降らないといいけど・・。こちらが入口になる(写真下)。日本ではあまり見かけない回転ドアになっていた。では中に入ってみよう。

パナソニック東京汐留ビル入口
エスカレータ前の案内表示

入ってすぐ前にモニタに映し出された美術館の案内表示(写真上左)。写真右上のモニタに映し出された作品は「顔(マリー・テレーズ)」というピカソのリトグラフである。

・ 展覧会に入る前

マリー・テレーズ・・・ピカソが45歳の時に出会った時、マリーは17歳。当時ピカソはオルガと結婚していたので不倫関係だっだ。その後次の愛人、ドラ・マールの出現で破局。ピカソが91歳で亡くなってその5年後の1977年マリーは自宅のガレージで首を吊って自殺している。67歳の時だ。
最初の結婚相手だったオルガもまた自殺している。

エスカレータに乗って4階に着くと「写真撮影禁止」の表示発見。オフィスも兼ねたこのビルは、防犯対策もしっかりしているようで気軽に写真が撮れる様子ではなさそうだ。

12時入場の予約で10分前に着いた。入れてもらえるか案内係の女性に尋ねてみたら問題ないとのことでさらに奥へ進んで行く。目の前にいた警備員から手荷物はすぐ横のロッカーに入れるよう強く勧められた(写真下)。

ロッカールーム(100円返却型)

荷物をロッカーに入れ身軽になる。警備員さんはドアマンも兼ねているのか、親切に透明のドアを開けてくれた。やっと受付カウンターに来た。
「ぐるっとパスカード」を見せ、無料で入場させてもらう。
「ここは写真が撮れますか?」と尋ねてみたら、すぐ横の展示場入口前と警備員がいる横のポスターのみ、と丁寧に無情な回答をいただく。
では、その2か所で堂々と記念撮影といきましょう。

美術館会場前のポスターと警備員さん(ちょうど交替の儀式中)
会場入口前(一緒に来た相手と撮り合ったりするためのスポット?)
展覧会のチラシ

展覧会「イスラエル博物館所蔵ピカソ― ひらめきの原点 ―」(2022年4月9日~6月19日)の案内はこちら。

20世紀最大の画家と誰もが認めるパブロ・ピカソ(1881-1973)。ピカソは、過去の芸術を吸収し、同時代の人々からインスピレーションを受けながら、常に新しく唯一無二の作品を生み出し続けました。創造力と革新性に溢れた彼の芸術は今なお私たちを魅了してやみません。
世界有数の文化施設であるイスラエル博物館(エルサレム)は、800点あまりのグラフィック作品を軸とする豊かなピカソ・コレクションを有しています。本展は、同館所蔵のピカソの作品より、精選した版画作品を中心に紹介します。油彩画、水彩画、素描、写真も織り交ぜ、パリに出た1900年頃から亡くなる3年前の1970年までの作品を年代順に展示し、青の時代、バラ色の時代を経て、キュビスム、新古典主義、さらにはシュルレアリスムへと向かう画風の変遷を追うとともに、版画における技術的実験の軌跡、そして生涯に繰り返し描いた主題とモチーフの変容をたどります。古典的な表現から抽象的形態まで、自在にスタイルを変化させるピカソの驚異の創造性と創作の過程に触れる絶好の機会です。

パナソニック汐留美術館HPより

会場内は、少々周りの鑑賞者を気にしなければならない状況ではあったが、ひどく混んでいるというわけでもないので、日曜日のお昼時間にしては悪くはない鑑賞空間だった。
写真を撮ることができれば、展示横の解説文は撮影して後でゆっくり読むのだが、作品の鑑賞より解説文を見ている時間が長くなるのはもったいない(だいたいそこで人が溜まっていたりもする)。人が多い時は解説読みを省かないと進めない。それでも、目に留まったピカソの格言・・
「私は対象を見えるようにではなく、私が思うように描くのだ」
そう言えるのがすごい。
ということは・・ピカソの作品は“彼の頭の中”ということでもある。ピカソの世界そしてその世界に関わった女性について書いていこう。

展覧会会場図
*配布資料より

会場内(写真上)の展示内容は以下のような流れになっている。
Ⅰ(1900~1906年)初期―青青の時代とバラ色の時代
Ⅱ(1910~1920年)分析的キュビズム、総合的キュビズム
Ⅲ(1920~1937年)新古典主義、シュルレアリスム(ヴォラール連作)
Ⅳ(1937~1953年)戦時期―ドラ・マール、フランソワーズ・ジロー
Ⅴ(1953~1970年)晩年―ジャクリーヌ・ロック、闘牛、バッカナリア、画家とモデル、(347シリーズ)
ルオー・ギャラリー
ピカソの写真

・ ピカソの世界と愛した7人の女性

薄暗い展示場内は「Ⅰ初期」の青とバラ色の時代から始まる。

「貧しい食事」エッチング
*展覧会チラシ裏面より

通して観た後の感想になるがエッチングやドライポイントといった版画の作品がかなり多い。そんな中で「貧しい食事」(写真上)は初期の頃の有名な作品。サルタンバンク(大道芸人)のシリーズが最初のコーナーを占めていた。

この頃、有名になる前のピカソを知る唯一の女性、そしてピカソが愛した最初の女性フェルナンドゥ・オリビエと出会う。生活のためにモデルとして働いていた彼女は、ピカソの専属モデルとなった。しかし、ピカソが画家として成功した後、彼女への興味はなくなり破局。前夫と正式に離婚していなかった人妻のオリビエは、その後ピカソから生活援助を受けながら暮らしたという。

「Ⅱキュビズム」は「ピカソ」の代名詞とも言える。あまり多くの展示はなかったが、年代別に紹介するなら外せない時期だ。

「コップ、バスの瓶、新聞」油彩、クレヨン
*展覧会チラシ裏面より

キュビズム時代にピカソと出会う2人目の女性エヴァ・グエル。結婚の話もしていたらしいが、1951年結核で亡くなった。

ピカソが36歳の時に初めて結婚したのがオルガ・クロルバである。3人目の女性になる。その時オルガは26歳。しかし結婚して4年で疎遠となり、マリー・テレーズの妊娠を機に別居。それでもオルガはピカソとの離婚を拒み、生涯離婚はしなかった。が、後に自殺。
4人目の愛人、マリー・テレーズについては最初に記した通りだ。

「Ⅲ 新古典主義、シュルレアリスム」ピカソが39歳から56歳頃までの絶頂期の作品にあたる。特にヴォラール連作はピカソの版画作品の最高傑作のひとつと言われているようだ。基本的には彫刻家とモデルの関係が描かれ、彫刻家との対話や性のドラマが展開されている。途中ミノタウロスやサーカス、曲芸師が加わったり、場所もアトリエから闘牛場へと移っていく。そういった作品が観れる。
ちなみにヴォラールとは、ピカソをはじめ数多くの印象派の画家を取り扱った美術商人のことだ。コレクターや美術書出版者としても知られている。

「夜、少女に導かれる盲目のミノタウロス」(<ヴォラール連作>より)
エッチング、ドライポイント、アクアチント
*展覧会チラシ裏面より

「Ⅳ 戦時期」5人目の女性ドラ・マールはピカソの愛人であり自立した写真家だった。ゲルニカの制作にも立ち会い、その過程を写真に記録している。また「泣く女」のモデルとしても有名である。

ドラと付き合っていた頃に6人目の女性、21歳のフランソワーズ・ジローと出会いピカソの猛プッシュで同棲。ピカソが63歳の時だ。子ども二人をもうけたが、ピカソの横暴さに耐えられず二人の子どもを連れてピカソのもとを去る。ピカソを捨てた唯一の女性と言われている。

ドラはピカソと破局した後、精神病院に入院。手切れ金として作品を譲り受けたものの売却せず困窮のまま亡くなった。

「海の前の女」油彩
*展覧会チラシ裏面より

「Ⅴ 晩年」ジャクリーヌ・ロックはピカソの最後の7人目の女性であり、ピカソが91歳で亡くなるまで一緒にいた2番目の妻である。出会った当初は26歳だった。これまでの恋人たちの中でも最も多い(約400点)モデルになっている。
ピカソが亡くなると、その財産権争いで大変な目にあったようだ。1986年に59歳でピストル自殺。

ピカソの展示作品と合せて女性遍歴をかいつまんで書いてみたが、出会った女性たちは何だかピカソにエネルギーを吸い取られてしまったような印象だ。

「牧神と山羊」リノカット
*展覧会チラシ裏面より

闘牛やバッカナリア(ローマ神話の酒神バッカスの祭り)などピカソが好んだテーマの作品が展示。347のシリーズには作品名が「無題」と日付になっていたが・・どうも春画っぽい作品も結構あったりする。

最後に常設展示室として設けられている「ルオー・ギャラリー」に入室。
この美術館にはフランスの画家ジョルジュ・ルオーの初期から晩年までの作品約240点のコレクションがあり、その一部が展示されている。

最後はマン・レイ等が撮ったピカソの写真を観て終了。
見応えは思った以上にあったかも。しかし会場内はやや狭く、大作の展示には向かないスペースだった。

パナソニック東京汐留ビルを出ると、先ほどとあまり変わらない小雨が降っていた。
「何だか・・ちょっと寒いな」

パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1
パナソニック東京汐留ビル4階
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
[開館時間]10:00~18:00(入館は17:30まで)
[休館日]水曜日(祝日は開館)展示替期間、年末年始、夏季休業期間
*展覧会によって水曜日が開館になる場合がございます
公式ページ:
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?