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皆を巻き込め。

これはある聾学校高等部の自立活動をエンパワメントの視点で教育実践した時、私から生徒たちに送ったメッセージです。

聾学校では自分と同じ仲間がいても、大学に進学したり企業に就職すれば、そこは自分が少数あるいは一人になるかもしれない。だから、自分のことを伝え、自分も安心して力を発揮できる環境を築く必要になる。そのために皆を巻き込むことが大事になるよ、と。

そこにいた生徒の一人は、そのことばが印象に残ったようで、大学に入学した時、聾学校とは全く異なる世界に困惑しましたが、大学と情報保障について話し合う時に、そのことばを支えに決意を固めて相談したとのこと。

有難いことに大学は熱心に本人と話し合って支援体制を整備してくれました。
最近、聾学校の先生から教えてくださったのですが、そんな本人が最近その体験を母校で在校生に語った時に、在校生にも「皆を巻き込め」とメッセージを送ったそうです。

相手に負担をかけると思って情報保障を遠慮するのは良くない、遠慮していると、自分の満足できる講義が受けられなくなり、先生の大事な話も聞き洩らしてしまう、だから負い目を感じる必要はありません、というふうにしっかり自分のことばで語っていたとのことです。

「皆を巻き込む」ことは、見方を変えれば、皆の人生の貴重な「時間」を使わせていただくということになりますし、だからこそ、その「時間」がお互いにとって価値あるものとなるようにしたいものです。

私も学生時代に学生団体や市民団体をいくつか作った時は、創立者と初代代表としての役割を担いながら、上記の重責を背に皆との「時間」が少しでも価値あるものとなるよう、非常に神経を使ったものです。それは時として「孤独」でもありましたが、幸い「孤立」まではいきませんでした。

冒頭の本人もこれから「皆を巻き込む」ことを実践するなかで「孤独」と向き合う時があるでしょう。その「孤独」をわかちあうことで「希望」を持てる仲間や恩師とのつながりがうまれることを願うばかりです。