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エアガンで武装する農家たちを狙うビジネス

結論から

  • 2020年にJA福井の女性3人が猿害対策にエアガンを導入し、モンキーバスターズの結成をTwitter上で報告したことがネットメディアやマスコミに報じられた。彼女らの装備品を特定したところ当時Amazonで3000円で買えると話題になった夜店のクオリティのチープトイが紛れ込んでいた。

  • それらは一部の業者に「害獣対策」などの広告付きでものによっては元値の倍以上の価格で売られており、今も知らずにうっかり購入する被害者を静かに待っている。

オチとかはないです。

モンキーバスターズって覚えてますか?

こちらは2020年7月9日の中日新聞の記事です。
JA福井の有志の女性3人がエアガンで武装し、作物を荒らすニホンザルの目撃情報を受けると駆けつけて威嚇などを行い追い払う活動をはじめたというもの。威嚇だけでも効果はあるようで「銃を見ると逃げるようになった」とのこと。生活感溢れる格好の女性たちがエアガンを構える姿はインパクト抜群で当時SNS上でそこそこ話題になりました。

個人的に一番好きな画像


トイガンマニアはまず銃種の特定をしてしまう

私はそこそこ歴が長いので、こういうのを見ると「何持ってるんだろう?」となるんですよ。マニアの方もそうでない方も一緒に見ていきましょう。

中央のグロックの人が呼びかけ人でリーダーの石村昌子さん

石村さん(真ん中)は簡単で、おそらく東京マルイの電動グロック18Cにオプションの100連発のロングマガジンを装備しています。結構張り込みましたね。引き金を引くだけで弾が出るバッテリー駆動の電動ガンです。取り回しのしやすさ、操作の簡便さ、飛距離、充分な弾数と、どれをとっても考え抜かれたベテランのチョイスに感じます。さすがリーダーですね。

あとのお2人のお持ちのものですが、少々形が変です。M4っぽい何かと、スライドにセフティがある1911系の何かのようですが、国内大手メーカーの電動ガンのラインナップにこんなものは記憶にありません。
結論から言ってしまうと、このM4とガバ(?)はセットで販売されているもので、ベルソス(VERSOS)という商社が企画し、海外に生産を委託して販売している商品です。
今でもAmazonで購入できますが価格はなんとセットで税込4040円です。
(2023年4月現在)

マック堺さんによるレビュー動画もありますが、以前は3000円台で買えたようです。エアコキ(ピストンのエア圧でBB弾を押し出す方式。一般に構造がシンプルで安価)とはいえこれがセットで3000円は超破格です。
実際に動作する様子や性能などはマックさんの動画を参照していただきたいのですが、いわゆる夜店のクオリティの製品で、お祭りの景品とかで置いてるような品ですね。いくらマガジンが自重で落下するとはいえ、あんまりな使い勝手です。一応、野生動物にエアガンを向けるのはアウト寄りのアウトな行為なので、音で威嚇をするという建前と運用になっているのですが、こんなにモサモサした操作と音で実用(?)に耐えるのか疑問です。
いくら安いとはいえ、もっと他になかったのでしょうか。


農業用という宣伝文句で堂々と高額販売されるチープトイ

こうしたチープトイが野生動物の被害に困っている農家に向けて「農業用」「鳥撃退」などと広告を出して売られている実態は、調べればすぐわかりました。というかこのM4とガバを特定する作業の過程でまず先にこちらを見つけました。結構堂々とやってます。

80mは盛りすぎてて草

楽天で「エアガン 害獣駆除」で検索すると先ほどのベルソスのセットを7000円から高いもので11000円で販売している業者が確認できます。ガバ単体をバラ売りで4000円というのもあります。低評価がいっぱいついてるのでネットに慣れてて注意深い人はブラウザバックすると思いますが、こういう業者は新聞などにも広告を出しデジタルディバイドされた客層を狙っているようです。モンキーバスターズがどういった販路から購入したのか分かりませんが、界隈で害獣駆除向けとしてポピュラーな商品なので目に止まったとすれば結構悪質なビジネスですね。


エアガンによる害獣駆除には先例がある

ここから先はおまけですが、行政が主体となって害獣対策にエアガンを導入した事例としては、モンキーバスターズ以前で有名なものとしては2016年に神奈川県で行われたエアガンを用いた勉強会があります。もっと前にもあったと思いますが。

※写真手前からMP5 SD6、M733コマンド、MP5クルツA4、MP5A5となかなかのラインナップ

神奈川県のニホンザルによる被害額は14,327万円(平成25年度)にもなるそうで、エアガン以外にも花火や電気柵の設置など様々な対策が講じられ、エアガンだけで効果をあげたわけではないのですが、この様子がマスコミによって比較的大きめに報じられた結果、例の業者などはこの神奈川県の事例を広告に盛り込んでいます。しかし実際に販売されているのはこのような立派な電動ガンではなくエアコキのチープトイです。困ってる農家を食い物にする商材って掘ったら闇が深そうですね。

報道内の「道具」という単語のチョイスにアウトレイジみを感じる

神奈川県では県をあげてニホンザルの保護管理に取り組んでおり、事業計画書に「エアガンの購入補助費および普及啓発の実施」とあるように対策として一定の効果が認められているようです。ただこの画像からも分かる通り、神奈川県の装備品はモンキーバスターズに比べてとても豪華で、県下の専門店は「今日はもう閉店だ」となったのではないでしょうか。

#この後起こる悲劇がわかる人

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