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デヴィ夫人はファーストレディにしてファーストペンギン

一時よりテレビ出演の機会は減っているものの、相変わらず豪華なファッションと奇抜な言動でお茶の間の注目を引いているデヴィ夫人。しかし彼女は、バラエティ番組に出演するタレント活動を生業としているわけではありません。彼女は「デヴィ夫人」という名が示すように結婚した女性なのですが、普通の夫人ではなく大統領夫人、言い換えるとファーストレディという経歴の持ち主です。

私がデヴィ夫人のことに興味を持ったのは、彼女の半生がモデルになっている、この本を読んだことがきっかけでした。

同じくデヴィ夫人をモデルとした小説には、梶山季之が著した「生贄」という作品もありますが、こちらは出版されるやいなや、デヴィ夫人側から名誉棄損だとのクレームがあり、出版差し止めとなりました。私はこの作品を読んだことがないので、どのあたりが名誉棄損なのかはわかりません。察するに、彼女はあまり自身の過去を語りたくないのかもしれません。でも、彼女の前半生は、ファーストペンギンとして敬意を表されるキャリアじゃないかと、私は思っています。

デヴィ夫人はもともと、日本国籍を持った日本人として生まれています。家庭環境はあまり裕福ではなかったとのことですが、転機となったのは19歳のときで、インドネシアのスカルノ大統領に見初められます。当時の日本国内は戦後復興から高度成長期に入り始めたころで、インドネシア向けの商社ビジネスが盛り上がってきたころ。2人の関係を取り持つ見返りを期待して、とある商社がデヴィ夫人をインドネシアに、スカルノ大統領のもとに送りこもうと画策します。

このときのスカルノ大統領は60歳手前くらいなので、かなりの年齢差がありました。なのでデヴィ夫人がインドネシア行きを戸惑ったであろうことは想像に難くありません。

  • 大統領は本当に自分を夫人に迎える気があるのだろうか? 一夫多妻制なのは知っているが、何番目の夫人になるのか?

  • オランダから独立したとはいえ、まだまだ政情不安なお国柄。治安は大丈夫なのか?

  • 商社はどこまで自分の後ろ盾をしてくれるつもりなのか? 彼らが目的としているビジネスのお先棒を担がなくてはならないのか?

国際結婚自体が稀有なことであった時代に、これらの不安を抱えながらもインドネシアに飛び込んでいった勇気や胆力は、称賛に値すべきと思います。そしてインドネシアに渡ってからも、国内で内乱があったり、後ろ盾だったはずの商社に裏切られたりと苦労の連続ですが、デヴィ夫人はめげずに、したたかに振舞い続けます。やがてビジネスで成果を出し、スカルノ大統領の側近たちにも一目を置かれる存在となっていくと、ついには三番目の夫人としてファーストレディの座を手にします。。。

こんな風に、波乱万丈でいろいろ苦労した末にやってきたサクセスストーリーが、デヴィ夫人の前半生です。梶山季之や深田祐介という作家が、彼女のことを知ってほしいと思って作品を著したことがよくわかります。デヴィ夫人ご本人はあまり語られたくないようですが、NETFLIXとかで映像化を企画してもらえないでしょうか。きっと大きな感動を呼ぶ作品となるに違いありません。

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