BIG4の1年目で苦労したこと。

私は、BIG4税理士法人で法人税申告書作成業務をしていたのですが、上司から「源泉はどうなってんの?」と質問され、税理士試験で当時、法人税法しかやったことがなく、困惑したことを覚えてます。
自分の理解のためにも、条文を適宜引用しながら、ケーススタディを用いて簡潔に説明します。
よくある事例として、内国法人が日本で業務を行うために外国法人から資金を借り入れ、利子を支払う場合を想定します。
なお、外国法人は日本に支店等はないものとします。また、租税条約と復興特別所得税は考慮しません。
租税条約による国内法の読み替えはおもしろいので別の回で説明しようと思います。

内国法人の源泉徴収義務

源泉徴収制度は、税務行政の負担軽減や効率的な徴収を行うために設けられ、これにより、外国法人の所得のうち、源泉徴収になじむものには内国法人にその支払いの際に、源泉徴収義務を課したものと考えられています。
源泉徴収に関する条文は基本的に法人税法でなく、所得税法にあります。
内国法人は、所得税法6条と212条1項により、外国法人に対して同法161条1項10号の利子の支払の際に源泉徴収することとされております。
なお、税率は、同法213条1項1号により、20%とされております。
内国法人Bは外国法人Aに対して支払う利子について20%で源泉徴収しなければなりません。

外国法人の納税義務

前記したとおり、内国法人が源泉徴収する必要があることはわかりました。では、外国法人Aが負担すべき税額を内国法人Bが源泉徴収して支払うだけで、外国法人Aは何もしないでよいのでしょうか。
外国法人の納税義務は、所得税法5条4項と同法3項に規定があり、「外国法人課税所得(同法法161条1項4号から11号まで、~)」について外国法人は納税義務があるとあります。法人税法でないの?と思われるでしょうが、外国法人の源泉所得税に関しては所得税法に規定されているのです。(もともと法人税法が所得税法から独立してできたので、そのころの名残なのでしょう。)
所得税の課税所得の範囲は、同法7条1項5号により、「同法法161条1項4号から11号まで、~」と記載があります。
同法161条1項10号に貸付金の利子の記載がありますので、前記の外国法人課税所得に該当するものと考えられます。この条文は国内源泉所得を記載しているもので、外国法人や非居住者の課税関係を考えるときには必ず確認する条文です。
次に同法178条1項を見ると課税標準の記載があり、利子の金額がそのまま課税標準になります。つまり、所得ではなく、収入ベースでの課税になります。
税率は同法179条1項1号では20%とされています。ここで、税額が、内国法人の源泉徴収税額と等しいことがわかります。
最後に法人税法141条1項2号を見ると、今回の利子が法人税法138条1項2号から6号までにいずれにも該当しないことを確認できると思います。そうなると外国法人Aの利子に対する課税は内国法人Bの源泉徴収で完結してしまうということです。
外国法人からの税金の徴収に内国法人に労力をかけさせて、かつ、なんらの対価も払わないのですから、賛否両論あるところです。

ご参考

法人税が課されるパターンと源泉徴収で課税関係が完結するパターンが以下にまとめてあるので、ご参考までに。
今回の事例は、下記の図でいうと、(9)貸付金利子に該当するため、源泉徴収のみで課税関係が完結することとなります。(注3)

なお、本投稿は、具体的な税務助言を行ったものでなく、個別具体的な取り扱いについては、税理士等の専門家にご相談ください。

瀧村晴人ほか『改正税法のすべて[平成26年版]』(大蔵財務協会、2014年)686頁

瀧村晴人ほか『改正税法のすべて[平成26年版]』(大蔵財務協会、2014年)686頁記載の図を抜粋

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