Fateとかなんとかはどこから手をつければいいの?[型月]

 どうも普通のシロクマVtuberの抹皚遊氣です。初配信で月姫(*1)の話をするくらいにはTYPE-MOON(以下型月)の作品が好きです。型月の世界に入ったきっかけは友達に借りた小説『空の境界』(*2)で、Fateシリーズや魔法使いの夜もプレイ済みですが、全てに触れているわけではありません。具体的にはFate/hollow ataraxia(*3)とかやってないです。

 この記事は、そんな俄とはギリ言えないかもしれない型月ファンによる、初心者にオススメの作品紹介です。ネタバレはなしです。ネタバレはなしです!

*1 月姫(つきひめ) 2000年発売の同人ノベルゲーム(R18)。長らく入手困難だったが2021年にリメイクされた(全年齢)。
*2 空の境界(からのきょうかい) 同人小説。初回イベントは数十部しか売れなかったらしいが、後に角川から書籍化。その後映画化も果たす。
*3 Fate/hollow ataraxia(ふぇいと ほろうあたらくしあ) Fate/stay nightのファンディスク(R18)。2014年にPS Vitaに全年齢化され移植。


手っ取り早く「Fateシリーズ」に触れたい場合

 「Fate/stay nightとかFate/Grand Orderとか名前はよく聞く。なんなら他にもFate/xxxxxは見かける。気になりはするんだけど何から手をつけていいかわからない。」
 「聖杯とか、英雄の召喚とか、殺し合いとか、ワードは聞いたことあるけれど、他のことはぜんぜんわからない。」
 僕がFate好きだと言うとよくオススメを聞かれます。名前は知ってるって雑談から、マジでどこから手をつければいいかわからない相談まで温度は様々だけど、その温度によってオススメが変わってくるので、それぞれ書いていきたいと思います。
 「なんでも願いが叶う聖杯」を求めて英雄たちを召喚して戦う、熱い物語に触れてみましょう。

そもそもFate/xxxxの全てが続きモノなわけではない

 Fateシリーズの大元はFate/stay nightです。それは揺るぎない事実です。
 でも他のたくさんのFate/xxxxには明確な順番はほとんどありません。Fate/stay nightの「万能の願望器である聖杯を求めて、魔術師が英雄を召喚して最後のひとりになるまで殺し合う」という根本の設定を生かした、創作の広がりがあるだけです。Fate/Apocryphaを読むためにFate/EXTRAを知る必要がある、なんてことはないんです。
 それでも中にはFate/EXTRAの続きのFate/EXTRA CCCやFate/EXTELLAだったり、Fate/stay nightの前日譚や後日譚があったりしていて、初心者がそれを判別することは難しい状況です。
 ここではそんな中から、Fateにとりあえず触れたい時に何をすればいいのか、大元のFate/stay nightを中心に書いていこうと思います。

手軽にアニメで触れたいなら『Fate/stay night Unlimited Blade Works』

 TVアニメシリーズのやつです。映画版(*4)ではないですよ。以下UBWと略します。
 アニメという手段はビジュアルノベルゲームをプレイすることに比べれば随分と手軽です。ひとによっては絵を描きながら見る、なんてこともできるかもしれません。その気軽さは大きなメリットでしょう。
 アニメ側も、Fate/stay nightのアニメ化が久方ぶりだったこともあって、シリーズに初めて触れるひとを意識して丁寧に作られています。

 デメリットはひとつだけ。この[Unlimited Blade Works]というルートは原作ではふたつめの話だということです。
 ひとつめのルートはアニメ化されておらず(*5)、UBWを見るだけでは取りこぼしてしまう要素はあります。ヒロインが聖杯を求めてまで願うことが何だったのかわからないし、とある有名なかっこいいセリフも聞けません。
 しかし、Fate/stay nightに触れるという目標はしっかり果たすことができると思います。触れ方はひとそれぞれ、厳密なことは気にせずに見て問題ないのではないでしょうか。

 映画の『Heaven's Feel』はこのアニメを見ているか、原作を知っていることが前提です。最初に手を出してはいけません。

(*4)映画版は尺不足でダイジェストになっているので原作を知らないと大変です。
(*5)Fateが初めてアニメ化された時はエロゲ原作アニメがどれだけ売れるかも予想できず、一回限りのアニメ化になる可能性が高かったようです。よってシナリオはひとつめのルート(Fate)にふたつめのルート(UBW)の要素を混ぜたものになったけれど、今見ると落ち着いてFateルートを見れない上に、理由なくUBWルートのネタバレをされるようなものになってしまっています。よって初心者に勧める時の優先順位は低いです。

手間を惜しまず原作をプレイする『Fate/stay night [Réalta Nua]』

 一番最初に出たFateの原点、その原作に触れる。プレイ時間というコストを度外視するなら最適解です。文章を読むのが速いひとならコストは下がると思います。
 Fate/stay nightは、2004年に出たオリジナルの復刻(R-18)が2019年にパソコンで、2007年に出た全年齢版[Réalta Nua]の移植が2015年にスマホで出ています。このどちらかに触れるのが、簡単に原作をプレイする方法だと思います。

 ここで全年齢版[Réalta Nua]を推す理由はふたつあります。
 まず、ひとつめのFateルートだけなら無料でプレイできることです。
 アニメUBWでは触れることができないこのFateルートに無料で触れられます。素晴らしいですね。容量が大きいらしいので、ダウンロード環境は気をつけたほうがいいかもしれないです。
 ゲームでFateルートに触れてからアニメでUBWルートに触れる、なんてコンボもできてしまいますよ。

 もうひとつの理由は、別にR-18である必要がないことです。
 もともと前作月姫の頃からR-18要素は単なる客寄せパンダのようなものであって、話の本筋とはあまり関係ありません。なんなら唐突に脱線するような印象すら与えることがあります。復刻版がファンディスク付きなことは魅力的ですが、ファンになるかどうかもまだわからない初心者に「ファンディスク付きのこれを買え」とは言いにくいですね。

 公式サイトの下の方にiOSとAndroidのDLリンクがあります。


『Fate/Grand Order』

 言わずと知れたスマホアプリFate/Grand Order(以下FGO)です。最近は下火になったかと思いきや、本編が更新されるたびに売上ランキングを駆け上がり、変わらない潜在的なプレイヤー人口の多さを伺うことができます。
 こちらもスマートフォンという新しいプラットフォームであることから、新規ファンが意識され、過去のFateシリーズ作品に触れていなくても楽しめるようになっています。
 しかし現在、2部も終盤かというタイミングを考えると「今からプレイして、普通にソシャゲとして楽しみたい」というのはハードルが上がってしまっています。
 シナリオに最も重きを置いたゲームということで、ネタバレへの配慮がしっかりされているのですが、その結果「特定の本編をクリアしていないと触れることもできないイベント」という制約が多くあります。その結果、ソシャゲとしてイベントを楽しむには、何日もかけて本編をクリアする必要があり、初心者にとっては長い道のりとなることでしょう。

 もちろん「イベントなんかどうでもいい。俺はFGOの本編を楽しむぞ!」という方なら、イベントを完全に無視して自分のペースで本編をプレイする、ということができます。
「消えてしまった未来を取り戻すために、英雄たちの力を借りて戦う」
 今までにない大規模な戦いは、きっとあなたを満足することでしょう。
 ゲームとしてのあり方を模索していたせいで退屈ともされる1部1章~4章を乗り越え、6章、7章にたどり着く頃には、素晴らしい達成感と忘れられない体験があるはずです。

 セリフや短文を読むのが好きならFGO、まとまった文を読むのが得意ならFate/stay nightのほうが馴染みやすいかもしれません。


それ以外のFateシリーズ

・Fate/ZERO
 小説版とアニメ版があります。『Fate/stay night』の前日譚となっていて、stay nightを知っていることが前提となる物語ですが、時系列的に先に来ることや、アニメ版が初心者に丁寧に作られていることによって、十分に初心者向けと言えます。当時Fate/ZEROのアニメで初めてFateに触れて嵌った、という人はたくさんいました。
 著者は『魔法少女まどかマギカ』『仮面ライダー鎧武』などで有名な虚淵玄。Fate/stay night本編より重く暗い脚本が魅力です。そういう作品が好きならぜひ触れてみてください。
 何も言わず友達に見せたら怒られました。でも激ハマりした。

・Fate/EXTRA
 月の電子世界が舞台になった作品。Fate/stay nightの世界線とは分岐してしまった平行世界の話。アニメはオシャレ寄りで初心者に優先的に勧めるものではなく、ゲームはリメイク版制作決定から2年経って発売日は決まっていない。もともとゲーム以外のシナリオが少ない故かマンガ版もダイジェスト的。現在触れるのが難しい作品かもしれないですね。つまり初心者向けではないです。
 EXTRA CCCやEXTELLA、EXTELLA LINKは関連作品。

・Fate/Apocrypha
 stay nightからは分岐した世界。前述の儀式の道具が盗まれ、日本で行われていた聖杯戦争の儀式が、ルーマニアで行われることになりました。なんなら英雄たちが二組召喚されちゃった世界。
 登場人物が倍増していることによる複雑化、煩雑化があるので『聖杯戦争』について他の作品で触れてからのほうがスムーズに理解できるかもしれません。

・他小説作品など
 現状はメインではないので、好きな人が触れればいいといった感じです。特に『ロード・エルメロイII世の事件簿』は魔術モノとして非常に高い完成度なんですが、少なくともFate/stay nightとFate/ZEROを知っていることが前提となっています。できれば空の境界も。

・氷室の天地 Fate/school life
 通称ひむてん。Fate/stay nightの日常パートに登場する一般人3人を主人公とするギャグ漫画です。1話からベクシンスキーだの我が子を喰らうサトゥルヌスだのニッチなパロディを攻めていく。英雄とか全然出てこない。
  Twitterでは「人が最も残虐になるのは自らが正義の側に立っていると認識した時だ」の2コマが人気です。でもこれギャグ漫画なのよね。


Fate以外に触れたい場合

 型月の作品はFateばかりではありません。他にも世界観を同じにした魅力的な作品が多くあります。
「Fateはピンとこなかったけれど型月作品には興味がある」「Fateは知ってるからFate以外に触れたい」といった理由でFate以外の作品の紹介を求められることも何度かありました。ここでは代表的な作品について紹介をしようと思います。

型月ゲームの元祖『月姫』

 同人ノベルゲームでありながら圧倒的な支持を集めた『月姫』です。この人気が同人の域を越えたため、Fate/stay nightが商業作品になったという経緯があります。そして伝説へ。
 Windows95/98向けの同人ゲームということで長らくプレイする手段がなかったのですが、2021年の夏にSwitch版とPS4版が発売されたということでお求めやすくなっております。このリメイク版は原作全5ルート中表の2ルートをリメイクしたもので、裏の3ルートのリメイクにも期待が高まりますね。待ってます。待ってますよ。

 以下僕の独断と偏見によるあらすじ
 
 彼には死の線が見えた。その線は簡単になぞることができて、その線をなぞられたモノは簡単に壊れてしまう。壊れそうな世界に狂いそうになっていたけれど、偶然出会った先生の教えと、譲ってもらった線が見えなくなるメガネの力で、少年は体が弱いながらなんとか青年へと成長していった。
 ある日、彼は街で見かけた女性を衝動のままに惨殺してしまう。わざわざメガネをはずして、見ないようにしていた死の線へと鮮やかにナイフを通して、熟練者のように彼女を解体してしまった。
 我に返って自分の行いから逃げ出した彼は、怯えながら日常へと戻ろうとした。まだ見つかっていないのか、猟奇殺人事件であるにもかかわらずニュースにもなっていない。そんな異常の中で登校した彼を、校門の前で待っていたのは、昨日殺したはずの女だった。
「私を殺した責任、取ってもらうからね。」

 

型月×ufotableのはじまり『空の境界』

 純度100%の奈須きのこに触れることができる小説版、Fate/ZEROやTVアニメ版UBW続くufotableとタッグを組んだ映画版、どちらも高クオリティで素晴らしい作品です。ぜひオススメしたい。したいんですけど、この作品は1章に罠が仕掛けられています。

 浮遊と飛行の違いは何か。俯瞰の風景は人になにを齎すのか。今起きている飛び降り事件は何なのか。飛び降り事件は7人で止まる。だって最初に見た幽霊が7人の霊を連れていたから。なぜ事件が起きて死ぬ前から死んだ結果の霊がいるのか。あそこは時間の流れが逆転しているんだ。魔術を用いても人単体での飛行はかつて実現していない。
 
 そんな現代の世界観と作品の世界観が曖昧になっていくような高次元の話がいきなり浴びせられます。これにやられてわけわかんなくなってしまった人も何人かいました。
 どういった罠かと言うと、「説明はしないけど、こういうのに魅力を感じる人に向けて書いた小説だからよろしくね」という、選別の罠です。
 しかし内容の完成度は高く、そういったやりとりに魅力を感じない人でも全体を楽しむことはできます。
 1章で混乱してしまうようなら3章を先に見ることもできるので、そちらをオススメします。

 あと映画版はとても美麗なグラフィックによって「美しい」という認識が先に来るとはいえ、しっかり血などのグロ描写があります。気をつけてください。それでもバトルシーンの美しさは息を呑みます。

 余談ですがKalafinaはもともと空の境界の主題歌を歌うために結成されました。解散してしまったの悲しい。


2022年冬、移植決定『魔法使いの夜』

 4/12に唐突な移植決定でファンを沸かせた魔法使いの夜です。
 町外れの洋館に暮らすのは現代最後の魔女と、最新の魔法使い。そして森から出てきた主人公。
 型月世界の特徴である「魔法」と「魔術」を巡るお話です。

 型月世界では魔法と魔術に明確な定義があります。
 コストやリスクを度外視してるかもしれないけど技術的に結果が再現ができるものが魔術。
 どうあがいても再現できないものが魔法です。

 どんな魔力で火を出して大規模に森を燃やしたってガソリンとマッチで再現できるなら魔術だし、証拠が残らない方法で人を呪い殺したって人が死ぬという現象自体はありふれたものだからこれも魔術に分類されます。
 こんな型月世界で、どうあがいても実現できなかったはずのことを実現させてしまった「魔法」というものは5つ存在します。
 それは「無から有を生み出すこと」だったり、「平行世界を運営(観測や決定)すること」だったり、「誰も知らないけど確かにあると言われる何か」だったりするわけです。どれもこれも難しそうでわくわくしますね。
 この設定は型月作品で共通していて、『Fate/stay night』と『hollow ataraxia』で言及され、『魔法使いの夜』でもほとんど明かされなかったひとつめの魔法について、近年になってから『FGO』で追加情報が入り、小説作品『ロード・エルメロイII世の事件簿』の設定資料集で更に情報が、なんてことも起こります。この壮大な世界が型月世界の魅力だと思うんです。
 そんな中で、一番新しい5番目の魔法使いが主役になるのが『魔法使いの夜』です。

 そんな壮大な世界の一端を知れるこの作品ですが、残念ながら3部作と言われているうち最初のひとつしか出ていません。僕は続きを待っています。本当に。この移植は2部発売の布石ですよねそうですよね。
 一部登場人物が共通しているので、『空の境界』に触れていると追加の面白さがあるかもしれません。
 『月姫』の先生である蒼崎青子と、『空の境界』の店主、『Fate/stay night』の人形師、『ロード・エルメロイII世の事件簿』では冠位の魔術師として活躍する蒼崎橙子。それらの作品では見られなかった一面を見ることができます。
 型月初心者向けかと言われると、一番最初じゃなくていいんじゃないかという気もしますが、最初でも問題はないと思います。


そんなかんじ

 いかがだったでしょうか!!!(言ってみたかった)
 僕の勝手な解釈による型月世界の初心者向けプレゼンでした!
 結論としては「アニメならUBWかZEROか空の境界、原作ならFateスマホアプリ版か月姫リメイク版、ソシャゲならFGO、小説なら空の境界、あとは好み!」という感じでございます。

 世界観が繋がっている型月世界ですが、制作側の意図としては「繋がった他の作品を知らなくても十分楽しめる。知ってたら追加でちょっと楽しめる」を意識したものだそうです。つまり究極的にはどこから手を付けたっていいのです!
 でもそれだとちょっととっつきづらいから、こうして初心者でも安心な選択肢を提示してみました。誰かがこれをきっかけに型月世界に触れてくれたら、僕はとても嬉しいです。そもそもここまで読んでくれてる人がいるだけでも嬉しいです。

 これからも、好きなものや面白いもの、勧めたくなったものがあったらこうして書いてみるつもりです。完全不定期ではありますが、よろしくおねがいします。7500字超えちまった。


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