昨日の朝の話
目が覚めた。時計はない。何時かはわからない。
電気をつけていない部屋が、ぼんやりと視界にある。夜は終わっているようだが、まだ僕にとっては朝ではない。
こんな時に目をしっかり開けてはいけない。
曖昧で薄暗い光の中に、普段とは違うものが見えてしまうことがある。
それを認識すると、世界がブレる。
小さな変化でもどこかに歪みが生まれるし、周囲すべてが違っていた場合は体ごとそっちへ引っ張られてしまう。
だから目を開けてはいけない。見てはいけない。現実のものとして認識してはいけない。
僕は枕元のスマートフォンを手繰り寄せ、寝る直前まで繋いでいた通話を開いた。夜更かし組がまだ起きている。通話窓に入る。
おはよう。これが現実だ。
彼らの驚く声を聞きながら、僕はまた眠りに落ちていった。
これが夢だったのか、現実だったのかはわからない。
ただ、起きた時に午前5時半頃の通話記録が残っていたのは確かである。
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