合気道マニアック本解説:田中万川『合気道神髄』【有掛日/真空の気/螺旋】
限定600部で世間に内容がほとんど公開されなくなってしまった田中万川先生の著書について、気になった所をちょぼちょぼとピックアップしよう。
今回はかなりマニアックな部分、『有掛日』『真空の気』『螺旋』についてだ。
合気道修行者のひとりとして、自分の理解の及ぶ限りで解説してみる。
有卦日とは?
田中万川先生と言えば有卦日のポーズだ。『有卦日』とは手のひらを天に向けることで、田中万川先生は「悪魔退散の手」と言っている。
などと書かれている。
やはり万川先生らしく呼吸発声(気合)、いわゆるなんか叫ぶやつについても書いてあった。
声と同時に体と体、気と気の交流が重なるところで敵の弱点を見抜き、気合の入れどころを考えろ的なことまで書かれていて面白い。掛け声と技には一体的な関係性があるらしい。
技というのは自分が投げるのではなく、自分が正しく動くことで相手が勝手にまきこまれてくるのが技なのだという説明はかなり印象的だった。確かにそうだよね。
真空の気とは?
『真空の気』と『空の気』というふたつの『気』については、開祖の「武産合気」でもたびたび出てくる説明だ。
田中万川先生はこれについて、実際に図解つきで説明してくれている。
『真空の気』とはつまるところ物事の根源である『中心』を知ることでもあるのだという。
まぁ今風に言うとするならこれは『軸』とかの話になるのかも知れない。
真空の氣の図にもあるように、本当にわずかでも相手を中心からズラしてやると、相手は簡単に崩れてしまう。
合気道神髄にはこの理屈での正面打ちや横面打ちへの入り身投げや四方投げについて書かれている。
円とは何か?
合気道はよく『円』や『玉』に例えられる。技を行う上でもこの円を考えることは大事だ。
開祖はこれを『玉』とは『かたまり』のことであり『形円(かたちまるく)』が短くなったものだとしていたらしい。
これを神話として考えるなら、玉の形とは天の形でもあり、水は円く、火は三角、このふたつを合わせたものが玉であり天でもある。これもまたひとつの陰陽の形を成していることになる。
要するに円というのは、こうした天地、火水といった陰陽の両方が合わさった姿だ。
それを人の姿で行うなら押しているわけでもなく引いているわけでもないとか、上げているわけでもなく下げているわけでもない、といった形の陰陽になるのではなかろうか?
田中万川先生は合気道の鍛錬とは「外虚内実」から「上虚下実」へと至る鍛錬なのだという。
そしてこの気を腹に入れ、陰陽を回転させることで表裏がなくなり一つになる。業に形があるのではなく、その時その時に根本に従って業がなされていく。
螺旋とは何か?
自分の中にある気を螺旋に動かすことが技において重要なことになる。
田中万川先生の説明は以下の通りだ。
ここまで解説を読んできたなら、なんとなく言わんとすることがわかってくると思う。
田中万川は気合の人でもある。それは「言霊」の発声においても同じで、技を出す時に出す声も螺旋の動きで出し、あらゆるものを抱擁していく必要があるという。
これをもう少しわかやすく言えば、コマがキレイに回っている時のように中心で回るということだ。
『合気道は中心をなくした状態を気の流れによって螺旋状に導く気を真空の気の業という。』
吉祥丸先生はこれを『スミキリ』だと説明していた。
まとめ
というわけでざっくりと大枠をまとめてみた。
・有掛日で導く
・真空の気で崩す
・螺旋で動く
合気道において大事なことが説明されているわけだけど、同時に神道的な説明も合わせて行われている。
これは弟子たちから「なにを言っているのかわからない」と言われていた開祖の言葉が、実際の合気道の動きに則って行われていたことも物語っているのが面白い。
色んな物事を合気道として説明できるということでもあると思うし、色んな要素を同じものとしてひとつにまとめていくことが大事なのかも知れない。
つづく、かな?
マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?