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20230428 祭とボラの意外な関係 ~西三河の研究より

 これを読んでくださっている人は魚の「ボラ」を食べたことはあるでしょうか? 私の場合,小さいころからイワシやアジを狙ったサビキ釣りをしているときに外道としてボラが釣れることがあっても,「これは食べられない魚」と言われて持って帰ることはない魚でした。その理由として,ボラは川に入ってきて海岸近くの汚い水を泳ぐから匂いがきつくて食べられないとか寄生虫がいるからなどと言われていた記憶があります。
 
 その後関西関東中部といろんな地域に住んできて,サメやマンボウやノレソレやエイなどがスーパーに売られていてびっくりした記憶がありますが,ボラを売っているのはみたことがありませんでした。
そして福岡に住み始めて,初めてボラを食べること,しかも刺身で食べることを知りびっくりしました。

 上に書いたように「臭いがある」イメージがあり最初は戸惑ったのですが,税込98円の安さにあがなうことはできずに食べてみると…けっこうおいしいではないですか。臭いをすこしかんじることはあっても単なる魚臭さで不快なにおいではなくて,味も淡泊だけどそれなりに歯ごたえもあってこの値段で食べられるのは大満足だと思いました。
 
 で,今日祭関係の論文を探していると,このボラを「祭り魚」として利用することがあるらしく,しかも住んでいたことがある西三河が該当するとのことなのでさっそく読んでみることに。
 
小早川 道子 小早川 道子 2015 西三河平野部の 「祭り魚」 ―ボラの地位と利用の変化について―.中京大学文学会論叢, 1(1), 239 – 258.

 西三河以外での祭り魚としてボラが利用される例をまず引用させていただきます。

 神事などにボラを使う事例も散見されるが、特徴的なのは志摩地方である。宇気比神社(志摩市浜島町)の真魚箸神事には、先述したように地元でミョウキチとも呼ばれるボラが使われる。真魚箸神事は福岡県太宰府市の王城神社で行われるものが知られるが、そちらはタイを使っている。静岡県旧雄踏町近辺でも村櫛の八柱神社の祭礼の神饌はボラであり、また浜松市北区滝沢町の四所神社でも、一月一日の祭礼には浜名湖北岸の気賀から購入するボラを必ず神饌としているという。気賀とは姫街道で結ばれる愛知県豊橋市嵩山の長孫天神社でも、かつては祭礼の神饌にボラが用いられていた。西三河平野部では正月三日に行われる西尾市熱池町のてんてこ祭りの神饌がボラである。ナマスを入れたナマス櫃に身をとった後のボラ(頭と中骨・尾の状態)を吊し、これを厄男が運ぶ。熱池八幡社に到着後、このボラは拝殿の柱に縛り付けられる。

 西三河以外でも静岡や三重などの東海地方が中心のようですね。
 
 そして西三河でのボラの利用についてさらに詳しく調べて地図上にしめした図を以下に引用します。

 自分が住んでいたのは矢作川の近くだったのでそのあたりでボラが食べられていたのをしってびっくりしたのですがもっとびっくりしたのが以下の記述でした。  

矢作川沿いの岡崎市中之郷でも、秋祭りの魚はボラであった。各家で大きなボラを煮付けて、みんなでつついて食べた。これは魚屋が売りに来たが、以前は矢作川中流域である中之郷辺りまでボラが上がってきたので、投網でとる人もいた。

 矢作川の河口から岡崎って15kmくらいはあるように思えますがそんなところまでボラがのぼってきていたのですね~。

 その他この論文では祭の魚としての鯛とボラの性質の違いなどがくわしくおもしろくわかりやすく説明されているのでぜひ全文を読んでいただきたいなと。

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