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20230515 子どもの祭と大人の祭を結ぶもの ~やはりあるかも

 祝!日本心理学会第87回大会発表申込締切延長(締切2023年5月23日(火)17時)!これで今日は時間なくて写真1枚で終わろうと思っていた祭心理学NOTEは論文読んで書けます!ってどうせ5月22日に阿鼻叫喚になっているだけなのですが(笑)。
 
 で,論文を探していると…昨日「子どもの祭と大人の祭を結ぶもの ~ないかもしれない」というタイトルでNOTEを書きましたが,その「つなぐもの」についても記述のある以下の論文を見つけました。
 
卯田卓矢・阿部依子 2015 過疎地域における祭礼の存続形態 : 佐久市望月地域の榊祭りを事例として. 地域研究年報, 37, 33 – 59.

 この論文は,佐久市望月地域の榊祭りを事例に,過疎地域における祭礼の存続形態について検討したものですが,「祭を盛大にするためにどのようにすればよいか」を住民に聞いたアンケート結果や,ポスターデザインの変遷の検討など非常に興味深い内容が盛りだくさんなのです。しかし今回は「子どもの祭と大人の祭をつなぐもの」という視点で見ていきたいと思います。
 
 まず,「子どもの参加を増やす試み」として,子供神輿の活動の充実がはかられたことが以下の記述でまとめられています。

 望月太鼓や子供神輿は町民祭が開始された当初から現在まで続けられている.その中で,子供神輿は減少する担い手の育成を目的に,町民祭開始以前の1983年に本牧地区の本牧小学校4~6年生が初めて参加した.このときの神輿は学年ごとに1基計3基であった.その後,1986年に参加対象が全学年に拡大され,神輿も6基となった.翌年から始まった町民祭では榊祭りが町民全体の祭りと変更されたこともあり,旧望月町内の3地区の小学校(布施小学校,春日小学校,協和小学校)の生徒も学校ごとに2基ずつ参加することになった.これにより小学校の子供神輿は6基から12基に倍増した.また,1995年からは望月中学校,2006年からは望月高等学校の神輿も新たに加わった.小学校における神輿の参加の呼びかけは,町民祭開始ごろは各学校が主体的に行っていた.本牧小学校では子供神輿の参加が8月の学校行事として組み込まれており,在校生のほとんどが参加した.そのため,神輿は1基につき30名以上と多く,年度によっては神輿を追加することもあった.また,当時は学校長や教員も参加し,生徒と一緒に練り歩いたり,神輿を担いだりしていた.

 主に,学校単位での参加が増えていき,かつ小学校から中学,高校にも拡大していったプロセスが分かると思います。「当時」とあるようにその後小学校の統廃合などのからみで呼びかけが学校単位ではなくPTAの委員会が担当するようになり,学校からの呼びかけがなくなったことなどから現在では減少しているようですが,「子どもが子供神輿に参加する」流れは現在でも充実しているのが分かると思います。
 そして,子どもの頃の子供神輿体験が大人の榊祭り参加につながることが以下のように考察されています。
 

 こうした子供神輿の参加の経験は,その後の榊祭り(大人神輿)の参加や道祖団の加入の契機となることも少なくない.詳細は後述するが,榊神輿の担ぎ手への聞き取り調査によると,担ぎ手の多くが子供神輿の経験を有しており,子供神輿に参加することで,神輿を担ぐことの楽しさや面白さ,また榊祭りの荒々しさを知り,成人後も自然と榊祭りへ参加するようになるという.また,住民からは子どものころに神輿を経験し,神輿のイメージや祭りの雰囲気が養われることで,帰省の際などに参加しやすくなるとの意見も聞かれた.

 ここで大事だなあと思ったのが「子供神輿に参加することで,神輿を担ぐことの楽しさや面白さ,また榊祭りの荒々しさを知り」の箇所だと思います。子供神輿を担ぐこと自体は楽しいでしょうが,子供神輿に参加することで「大人がしている榊祭りを見る機会が増え」,そこで「子どもは参加できない荒々しい大人の世界へあこがれ」,「自分が参加資格を得た時に参加したくなる」というプロセスがあるのではと思います。
 それは現在参加している若者への参加のきっかけや榊祭りのイメージに関するインタビューをまとめた以下の表からも読み取れると思います。
 

 荒々しい,激しい,迫力などの「それに参加できることが賞讃され,格好いいと思われる属性」や「他の祭りと違う」「見ればわかる」などの「他の祭りにはない独特の価値」などの魅力をその祭に感じたなら,そりゃ参加したくなるよなあと。
 
 そうした荒っぽい祭に関しては,私のような臆病で運動神経皆無な人間は参加できないので,祭への参加を阻害する要因にもなりうるのかもしれないのですが,その場合も「そんな荒っぽい祭に参加できる人はすごいな~」という尊敬のまなざしがでてくるし,観客としてみたくなるというのはあるので,荒っぽさは全体的にみるとポジティブな効果が大きいのだろうなあと思います。
 
 なので,なんでも規制が増える昨今の祭ですが,このような「荒っぽさ」の面は帰省で毀損してしまわないようにしてほしいなあと思います。

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