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話数単位で選ぶ、2022年テレビアニメ10選

 aninadoさんが集計してくださる年末恒例企画、初参加というかそもそも初記事です。よろしくお願いします。
 以下のルールに従い選定・記述させていただきました。

・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2022年中に公開されたものとします。

気になった作品・話数だけでもどうぞ。

・明日ちゃんのセーラー服 2話 「また明日」

明日ちゃんのセーラー服2話より引用。加藤誠演出の十八番たる主観カット。これ以外にもいっぱい。


脚本:山崎莉乃 絵コンテ演出:加藤誠   作画監督:安野将人

なるべく、キャラクターたちの「初体験」を描きたかったからだと思います。

https://media.comicspace.jp/archives/13281


 本作の原作者である博先生は、中学1年生を主人公とした理由を問われ、そう答えています。
 その言葉通り、沢山の「初めて」が詰め込まれた作品ですが、中でもこの2話は、「初めての煌めき」という要素がとりわけ強いと感じました。
 登下校、挨拶、クラスメイトとの会話、給食──何でもない「日常」が、「初めて」というフィルターを通す事で輝く瞬間瞬間が、とても美しく、愛おしい。
 絵コンテ演出を手がけたのが『やがて君になる』等を手がけた加藤誠氏というのも、見逃せないポイントでした。主観カットの使い方が特徴的なのはご本人も自負するところなだけに期待はしていたのですが、冒頭でいきなり使われ、その後も本当に効果的に多用されていて面白かったです。
 『同級生』中村章子氏に『あのはな』『空青』の長井龍雪氏、『かみちゅ!』の舛成孝二氏など、ジュブナイルアニメの大御所が各話絵コンテとして登板する皮切りとしても、理想的なスタッフィングだったなと思いました。

・平家物語 1話 「平家にあらざれば人にあらず」

平家物語1話より引用。美しい。

脚本:吉田玲子 絵コンテ演出:山田尚子 作画監督:小島崇史

 2021年にFODで先行配信されていた作品ですが、TVでの放送は2022年ということを鑑み、また大変好きな話数だったのもあって選ばせていただきました。
 山田尚子監督をはじめとする業界有数の制作陣が歴史もの、それも『平家物語』を手がけるという企画の妙が、これ以上なく感じられる1話だと思います。
 監督の十八番たる、カメラの効果を意識した画面作りによって描かれる四季は、単体の絵としても美しく、平家の人々/びわの物語との多大な相乗効果を呼んでいると感じました。
 中でも印象に残ったのは出会いのシーンにおける雪と、上でも画像を上げた桜でしょうか。アニメーションガイドによれば、絵コンテにも「びっくりするほどきれい」と書かれているそうで、牛尾憲輔氏の手になる美しいサウンドともあいまって、何度も見返してしまうシーンです。

・エスタブライフ グレイトエスケープ 4話 「民主主義から逃げられない」

エスタブライフ グレートエスケープ4話より引用。CGアニメならではの描写でもある気が。

脚本:賀東招二 絵コンテ:夕澄慶英! 演出:関水大樹

 実はこの記事で1番語りたいの、この話数かもしれません。面白さに見合った反響が得られてない気がするので……。
 谷口悟朗×橋本昌和×賀東招ニという組み合わせに期待したものが、期待以上の形で見られた話数でした。
 最近では「かぐや様」などでも効果的に使われていた脳内会議ネタを、分裂できるスライムキャラを主題とすることで自然に描写してるのも上手いし、「会議」でなく「議会」として描く馬鹿馬鹿しさも最高。
 ラスト付近の絵面が無駄に格好いいのも素敵で、すごく楽しいアニメを見たと思えた回でした。
 余談ですがこのアニメ、ディストピアとAIの扱い方が、同クールの『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』と好対照に見えて、偶然ながら面白かったです。

・ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(第2期) 10話 「かすみん⭐︎ワンダーツアー」

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(第2期) 10話より引用。このわちゃわちゃ感が大好き。

脚本:伊藤睦美 絵コンテ:誌村宏明 演出:砂川正和 作画監督:今田茜、佐藤秋子、中島渚、藤田亜耶乃

 こういった「一山越えた直後の、ただただ平和なエピソード」がまず大好きなんですよね。近年ですと、『白い砂のアクアトープ』17話などが類型として印象深いです。
 タイトル通り、中須かすみさんの腹黒さ……に一瞬だけ見える健気さと可愛らしさが炸裂する話数ですけど、「かすみん回」という印象は薄くて、同好会全員の魅力を余さず描ききっている。さらに加入直後である鐘嵐珠さんのささやかな願いを叶えるというサブプロットによって、「良いもの見たな……」という実感がいや増しましているのも凄く好きです。
 他の話数も大好きで、特に児童公園での意味性がてんこ盛りな2話などは演出オタクの端くれとして忘れがたい……んですが、以上のような理由で10話をセレクトさせていただきました。

・ヒーラー・ガール 11話 「サメと合宿、一緒に登っていこう!」

ヒーラー・ガール11話より引用。サメが出てくる作品は名作。

脚本:木村暢 絵コンテ:入江泰浩 演出:飯田薫久 作画監督:加藤恵子、宮原拓也、大導寺美穂、河内和彦、小林陽奈、亀山進矢、鎌田均、松下純子、斎藤和也、吉岡敏幸

 この話数、滅茶苦茶密度が濃くて、なのに全く駆け足感が無いんですよね。3人娘の楽しい観光をたっぷり描いたのちに微妙なすれ違い、衝突からの回復を描き、C級試験に合格するまでを丁寧に描き切っている。脚本と演出の妙だと思いました。
 本作の大きな長所たる、アニメチックなのにどこかリアルを感じる会話劇の魅力も爆発していると感じました。論争の最中、自分に矛先が向いた折に出る「えっ? こっち?」とか、さりげないけどこのアニメならではの台詞だと思います。
 この作品、創作の基本である「テンプレートからのずらし」がとても効果的に使われている作品だと思うんですけど、「最終話前のシリアス」という鬼門とも言えるテンプレートに真正面から取り組んで勝利しているのも素敵。
 
 

・連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ 9話 「星と共に」

連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ9話より引用。ジョー可愛い。

脚本:森悠 絵コンテ:佐伯昭志  演出:白石道太  作画監督:清水勝祐、細田沙織、和田賢人、綾部美穂、鮫島寿志、関口渚、浅井昭人、上野あさみ

 
 片田舎でスタートしたルミナスウィッチーズがニューヨークを股にかけるカタルシスと、壮大な、なのに家庭的で温かいライブシーンの多幸感が素晴らしかったです。
 ドーナツ屋さんや摩天楼といった風俗描写が伏線として機能していて、その回収が映像によってなされるのも、アニメならではの魅力を最大限に発揮していると感じました。
 他の回と同様に、全員の魅力を満遍なく描いている話数ですけど、家族との交流や美しい回想の挿入が「ジョー回」という印象を与える、そのバランス感覚にも感銘を受けました。
 

・ラブライブ!スーパースター!!(第2期) 7話 「UR 葉月恋」

ラブライブ!スーパースター!!2期7話より引用。この顔好き。

脚本:花田十輝 絵コンテ、演出:大島克也  作画監督:阿曽仁美、石井久美、市原圭子、井元一彰、尾尻進矢、工藤ゆき、黒田ありさ、赵晓昕、永山恵、林央剛、松田萌、山口葵、山村俊了

──花田さん脚本での掟破りと言うと?
花田 たとえば、『ラブライブ!』のダイエット回などは、スタッフからは(中略)反対されました。それでも「だからこそ面白いんじゃない!」って押し切れるのは、きっと『ザブングル』の掟破りへの憧れからな気がします。

https://febri.jp/febri_talk/hanada_jyukki_2/

 本作の脚本を手がけた花田十輝さんは、影響を受けたアニメとして「掟破り」が代名詞な『戦闘メカ ザブングル』を挙げ、自作では無印ラブライブのダイエット回が「掟破り」の影響下にあるとしています。
 主要キャラクターの1人がゲームにハマり、生活に支障をきたす本話数も、そんな掟破りの楽しい話数だと感じました。冷静に考えるとすごいなオッドタクシーかよ。
 また、前置きなしに1分近くゲーム画面のみを表示する尖ったワンカット目も印象的ですし、タイムラプス、同ポでのT.Bなど、様々な演出が効果的に使われていたと思います。近年『ドラえもん』などでも活躍する大島克也さんの手腕なのかなと思いました。

・ぼっち・ざ・ろっく! 8話 「ぼっち・ざ・ろっく」

ぼっち・ざ・ろっく!8話より引用。額に入れて飾りたい。

脚本:吉田恵里香 絵コンテ:斎藤圭一郎 演出:瀬尾健、川上雄介(ライブ) 作画監督:けろりら、Franziska van Wulfen、TOMATO

 あまりにも全話満遍なく素晴らしい作品で、どの話数を選ぶか死ぬほど迷いましたが、やはり物語の一転機である8話をセレクト。
 二番煎じ三番煎じの感想ですが、実写映像を取り込むなどのエキセントリックな演出と、地に足の着いたキャラクターの感情やライブ描写が相乗効果を生んでいる作品で、話数だと思います。
 個人的に美しいと感じたのは、虹夏ちゃんの回想シーン、「全部がキラキラして見えて──」と語る所で、セリフに反して画面がグレースケールになる2カットでしょうか。全セルになる2カット目では、斎藤監督が手がけた『Sonny Boy』8話のエフェクトを思い出したりもしました。
 作品の熱量に比例して情熱的な感想をたくさん拝見しましたが、特にリミナさんの記事が、隙のない作りで大変勉強になりました。
 

・ヤマノススメ Next Summit 10話 「新しい季節」

ヤマノススメNext Summit10話より引用。集合写真って好き。

脚本:山本裕介 絵コンテ:倉田綾子 演出:北村将 作画監督:みやち

 こちらもどの話数を選ぶか滅茶苦茶迷いました。松本god憲生氏の激ウマ走り作画が見られる5話は言わずもがな、「ぼざろ」斎藤圭一郎氏とウルトラアニメーター佐藤利幸氏がAパートでタッグを組み、俊英ちな氏が脚本から手がけたBパートが炸裂する年末年始に見返したい7話など、作画・演出的にもお話的にも見逃せない回が目白押しで……。
 結局10話を選んだ理由は「好みの話だったから」というかなり主観的なものです。大人数がわちゃわちゃしてる話と絵面がまず好きだし、キャラクターのゆるやかな成長と交流の描き方も好き。あとかすみさんが好き。
 ショートアニメとして始まった作品が、新たな季節を迎えるこの話で30分アニメに変化するのも、内容に照合していて美しいと感じました。


・機動戦士ガンダム水星の魔女 11話 「地球の魔女」

機動戦士ガンダム水星の魔女11話より引用。MSも人も素晴らしかったです。

脚本:大河内一楼 絵コンテ:金澤洪充、綿田慎也、小林寛 演出:倉富康平、綿田慎也 作画監督:菱沼義仁、戸部敦夫、丸山修二、宍戸久美子

 本作の美点の1つたる予想外で期待以上な展開が、これ以上なく発現した話数だったと思います。
 前話でスレッタとミオリネのすれ違い及び暗殺計画の始動を見せておき、その2つの重なりによる悲劇を描くのかと思いきや、すれ違いの解消をこれ以上なく美しく、楽しく、可愛らしく描いた後に、2人の関係を物理的に断ち切る。
 「血染めのユフィ」に代表される、大河内一楼氏の予想を裏切る作風の、これ以上ない理想的な発露。アニメの脚本において脚本家の担う部分が名前ほどに多くないのは承知の上で、そう思わずにはいられませんでした。
 監督自身によるコンテ、沖浦啓之氏を始めとするスーパーアニメーターの参加など、作画・演出的にも大変充実した回で大満足でした。
 あと無重力下での追いかけっこってやっぱり楽しいなと思いました。なんか地球外少年少女をちょっと思い出しました。大河内一楼氏的にはプラネテスだろうか……。



 以上の10話が、本年のマイベストとなります。
 無論選ばなかった中にも個人的に大好きなアニメ・話数は沢山あり、特にリコリコと着せ恋が入っていないのは自分でもちょっとどうかなと思いました。DIYも入れたかったし……。これら3作は全話数が安定して素晴らしすぎたため、1話のみを挙げるのが難しかったというのもある気がします。そういえば86の最終2話も今年だった……とか言い始めるとキリがないですね。
 しかしなんだかんだ言っても、選んだ10話は全て自分が大好きだと言えるアニメ、話数で、選択に後悔はありません。
 2023年も素晴らしいアニメの数々と、そのスタッフの皆様への感謝を忘れず過ごして行けたらいいなと思います。
 最後に、この記事を読んでくれた貴方にも最大級の感謝を。
 本当に、ありがとうございました。
 
 あと誤字脱字衍字や事実誤認等があった際は、コメントやTwitterで教えていただければ幸いです。

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