新聞報道について

東京電力福島第一原発事故について、住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟について、東京新聞のニュース
https://www.tokyo-np.co.jp/article/185157?rct=national
では「国に責任があるとする反対意見を書いたのは、検察官出身の三浦守裁判官。1陣、2陣含め原告が5000人超の福島訴訟への判決文では、補足意見を含め全54ページ中、30ページに及ぶ。・・・判決文の実質的な判断が書かれた部分が4ページなのに比べると、反対意見の内容は多岐にわたり、判断も詳細な理由が述べられている。」と記載されています。
最高裁は、賠償責任ありとした仙台高等裁判所の判断を取り消しましたが、1名の裁判官の反対意見があったとのことです。

令和3(受)342  原状回復等請求事件 令和4年6月17日  最高裁第二小
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/243/091243_hanrei.pdf

どのような理由で一人反対したのか、興味があったので最高裁の判決を見てみました。

下記に、三浦守裁判官の反対意見を一部抜粋してます。

多数意見は、本件事故以前の知見の下において、安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が津波により浸水することが想定される場合に、適切な防潮堤等を設置するという措置が津波対策として不十分であったと解すべき事情はうかがわれず、それ以外の措置が講じられた蓋然性があるということはできないとする。

しかし、津波に対する安全性評価については、旧安全設計審査指針においても、平成2年安全設計審査指針においても、30年以上にわたり、地震以外の自然現象を包括して抽象的な指針が定められているだけであって、津波の想定やこれに対する防護の在り方に関する具体的な指針は定められなかった。
多数意見は、本件事故以前の津波対策について、津波により上記敷地の浸水が想定される場合、防潮堤等を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することを基本とするものであったことを強調するが、このことを定めた法令はもとより、そのような指針が存在したわけでもなく、また、本件長期評価の公表以前に、防潮堤等の設置により上記敷地の浸水を防止することを前提として、原子炉の設置許可等がされた実績があったこともうかがわれない。それまでは、想定される遡上波が到達しない十分高い場所に上記原子炉施設が設置されることにより安全性が確保されているとして、津波による浸水が想定される場合の対策については、十分な検討がされていなかったというべきであろう。
本件のように、それまで想定されなかった津波による浸水を防止するために、事後的に防潮堤等を設置せざるを得なくなったことは、まさに前例のない事態であり、東京電力としては、この事態に即応して、極めてまれな災害も未然に防止するために適切な措置を講ずる法的義務を負っていたものである。
本件技術基準に従って講ずべき措置については、本件長期評価を前提とする具体的な事情の下で、そのような災害を確実に防止するために必要かつ適切な措置として合理的に認められるものを対象とすべきであり、こうした措置を蓋然性の考慮から除外すべき理由はない。

興味深いものでした。

最初、この記事を読んだとき、全54ページ中、反対意見が30ページ、多数派の理由が4ページ、あとは事実などで構成されているのか思ったら、違いました。

構成としては、全54ページの内、理由部分は8ページ目以降の計46ページです。
そのうち、多数派の理由が4ページ、多数派だが主流派とは理由が異なる2名の補足意見が計約14.5ページ、結論に反対する反対意見27ページです。
ということは、多数派の理由は18.5ページで、反対派の理由は27ページで、それほどバランスに欠けているわけではないのではないでしょうか。

ニュースサイトには、積極的な嘘が書いてるわけではありません。しかし、ほとんどの人は判決文まではたどらないでしょう。最高裁の判事は国民審査がかかります。そうすると、大した検討もせずに、判決をしたというような誤解を読者に与えかねません。評価を入れるなとは言いませんが、やりすぎると戦時中と同じになってしまいます。

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