無効審判と侵害訴訟で同じ証拠なのに無効判断が異なり、知財高裁で統一見解がなされなかった事件

1 事件
令和4(ネ)10008 知財高裁
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/603/091603_hanrei.pdf

1審
令和1(ワ)25121東京地裁
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/900/090900_hanrei.pdf

令和3(行ケ)10027審決取消訴訟
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/607/091607_hanrei.pdf

2 時系列の整理
無効審決R3.1.6
現クレームは有効
訴訟(口頭弁論終結日 )

侵害訴訟(1審) R3.9.19
現クレームは無効

侵害訴訟(知財高裁1部) R4.9.22
1審判断を維持(現クレームは無効)

審取(知財高裁1部) R4.9.22
現クレームは有効(審決維持)

通常は、1審侵害裁判所と、審決で判断が異なった場合、知財高裁で一致させるのが普通ですが、本件は結論としてはそのようにはならなかった事案です。

3 このような判断となった理由
高石弁護士の説明を、私なりにまとめると以下のような事案のようです。

審決およびその審取では、乙8を「サーバを含むシステム」と認定し、本件発明はスタンドアローンの装置なので、そこが相違点となり、無効理由なしと判断されました。

1審は、乙8を「サーバを含むシステム」と認定したが、無効と判断。
控訴審では、被告(被控訴人)は、乙8「サーバ」と比較した補充主張を行いました。これにより、無効審判の認定で問題となった相違点がなくなりました。

詳しくは高石弁護士のブログを参照ください。
https://ameblo.jp/hideki-takaishi/entry-12811616256.html?fbclid=IwAR17T-o6ikVrm-QGukouPdzNTogGmiu8UPP-oNARrnW8PWD90E1ZjpOoNUc

4 その他
・審取の場合、争点は審決の判断に誤りが無いかで、主張をずらすことは原則として認められません。すなわち、そのような追加主張のない前提で、無効審決の判断に誤りが無いかという観点のみが争点となっているため、このような判断が異なることとなりました。侵害訴訟では、主張を追加・変更することは、時期に後れた抗弁とならない限り可能です。

・特許権者は、控訴審判決の後(R5.4.25)に訂正をしています。
訂正2022-390212で、訂正は認められています。

もし、訂正後の発明の技術的範囲に、被告装置が属するとしたら、複雑です。
本件は、特許権者は、代理人無しの本人訴訟をしています。特許庁の手続きも、登録までは代理人がいますが、審判も代理人無しです。

訂正後の請求項1
 ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1受付手段と、
 前記第1受付手段によって受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を行う質問手段と、
 前記質問手段による質問に対する返答である個人情報を受け付ける第2受付手段と、
 前記第1及び第2受付手段によって受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応する属性とが紐付けた状態で格納される格納媒体と、
 前記第1又は第2受付手段によって受け付けられた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行う提案手段と、を備え、
 前記提案手段は、
  前記個人情報に基づいて該当するウェブサーバにアクセスし、ウェブサイトからそのリンクではない、前記ユーザに対して提案すべき情報を取得する手段と、
  前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段と、
を有する情報提供装置。

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