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メリパナイトランという文化圏

人生の暮れ時をより愉しむにはどうしたら良いのだろう?を考え、実践してみる「人生の暮れ活」。

先日は、人との関わり方やつながり方について、人生に残された時間が少なくなっている我々は、少し考えなおしたら良いのでは?
という記事を書きました。

この記事で私は、人生の暮れ時において「自分と同じ文化圏」を持つ人とつながっていくことが大切ではないか?という意見を述べました。
今回は、自分が管理人をしているランニングコミュニティを例に挙げて、この意見について少し具体的に掘り下げて述べてみようと思います。
少しだけね(笑

その名はメリパナイトラン

神戸に「メリパナイトラン」というランニングイベント&コミュニティがあります。
どんな内容かというと、毎週火曜日の夜に神戸メリケンパークの中、約5キロ弱の距離をのんびり走るというシンプルなものです。
神戸マラソンが始まった2011年の春ごろに発足、この記事を書いている時点でちょうど10年続いています。
立ち上げたのは私ではなく、ある人生の先輩方3名でした。当時私はランニングを始めたばかりの初心者で、ある夜、知人に紹介されて恐る恐る参加したのが、関わるきっかけでした。その後2015年7月から、私が管理人となって現在に至っております。
10年も続けば、その間に色々なことが起こったり、参加する面々も変わったりします。

最初は「文化圏」に惹かれる

メリパナイトランがスタートした2011年は、ちょうどマラソンブームが本格化し始めた頃でした。
メリパナイトランの「文化圏」は「マラソンを神戸で楽しもう!」ということ。
陸上競技部の延長上みたいなランニング愛好家のコミュニティと違って、初心者ウエルカム、のんびり楽しみましょう、みたいなフワ~っとした雰囲気のコミュニティは当時まだそれほど無かった(と思う)せいもあって、色々な人たちが参加してくださいました。私もその一人でした。
今みたいに文化圏がどうたらこうたらとか意識していなかったですけど、ワイワイ走っている時の居心地の良さとか、何人か居た顔見知りの人たちとランニングを通じて交流が深まっていったことが自分にとっては嬉しかったんですね。
この嬉しさや楽しさは、10年経った今でも変わりません。もしメリパナイトランに参加していなかったら、ランニングを続けていなかったかもしれません。

「文化圏」は参加者が変えていく

メリパナイトランも時を重ね、参加者も増えていくうち、人それぞれの「マラソンの楽しみ方」が変化していきます。
始めたばかりの人が、ぐんぐんと走力をつけていって結果を残すようになって更に上のレベルを目指してストイックになっていったり、別の人はトレイルランニングの世界にドハマりしていったり、ある人はアウトドア的な雰囲気でご飯作って食べることが好きになったり、またある人は全てのことを愉しんだりと、ランニング中に参加者同士で自由勝手にしゃべりながら繋がりを拡げたり深めたりされていらっしゃいます。
ゆっくりと走ることで、そういう交流がしやすかったというのもありますし、走り終えてから毎回「打ち上げ」をして呑みながら食べながらワイワイしゃべる、という一貫したメリパナイトランの「もう一つの文化圏」が、そんな交流を促していったのかな?と思っています。

そんな中でも、やはり人間臭いイザコザも起こります。

運営に対するクレームや、ランニングより出逢いや自分の商売のことを優先する属性を持った輩が参加者の善意を利用してアレコレしたり・・・とかも時々出てきます。また、言葉に出さずとも「アイツ嫌いやねん」という理由で離れてったと思われる人もいらっしゃいます。
やがて仕事や体調の関係などの理由でメリパナイトランの発起人方が徐々に離れていきました。そうなると発起人方に共感していた人も離れていきます。
同じ文化圏でも、人の「好き嫌いという感情」ってのは大きな要素です。好みに合わないと感じた人は別の同じ文化圏へ移動します。仕方の無いことですけど発足から4年ほど経ったとき、毎週の参加者は2,3人程度と寂しい状態が続いていました。

当時の私としては、参加しながら時おり運営の手伝いをしていただけでしたけど、ランニングを通じて得た物事が自分にとってかけがいの無いものであったこと、それを見つけるきっかけがメリパナイトランだったこともあって、なんとか続けることが出来ないか?と思い、発起人の方々の了解を得て管理人としての主体性を持って続けていくことにしました。
今から6年前の2015年7月のことでした。

「文化圏」は外的環境の変化でも変わる

大きな変化は突然起こりました。

それまでのメリパナイトランは毎週水曜の夜に開催していました。
しかし私の仕事の都合上、水曜夜の開催は無理だったので、管理人として続けていくと決めた際に火曜日の夜開催に変更しました。
すると、何故かメリパナイトランに参加する人が激増しました。

おそらく、マラソンの大会が週末に行われることが理由ではなかったのかな?と推測しています。
レースの翌日は、さすがにしんどい。水曜日だとそろそろ翌週のレースが気になりはじめる。でも先週のレースの出来事とか誰かに話したいし頑張ったねーとかお疲れさんとか言って欲しい(笑)という気持ちと自分の体調がちょうど良いあんばいでクロスオーバーするのが、どうも水曜ではなく火曜日だったようです。週末のレースで一緒に走った方々が、遠路はるばる参加してくださるようになったのも、そういうことなんだなと思っています。

同じ文化圏の活動でも、文化と関係ない部分を変化させることで大きく活性化する場合があることは、心に留めておいた方が良いと思います。

「文化圏」を守る

参加者が増えたメリパナイトランの参加者同士の交流は、比例的に活発になっていきました。なので、メリパナイトランをやっているときに私は意図的に存在感を消すように心がけました。なぜかと言うと、メリパナイトランに参加する人に、私が手を引っ張ってではなく、自分自身で楽しさを見つけて欲しかったからです。
楽しませてもらうのではなく楽しむ、なにか楽しみを探す、楽しみを作る、メリパナイトランに参加することは、そのきっかけの一つなんだよってことを表現したいと思ったからです。

なんとなくですけど、このことを意識しだした頃からメリパナイトランに参加する人の数が、少し減っていったような気がしました。
しかし同時に、コミュニティの雰囲気やグルーヴみたいなものは、徐々に明確になってきたような気もしています。

ランニング、いやメリパナイトランがきっかけで知り合った面々は現在、走るだけではなく、楽器を弾いて歌うようになって、発表会という名のライブをするようになったり、打ち上げの店でやっている落語のイベントがきっかけで落語に興味を持ったり、参加されている住職さんのお寺で、絵画やオブジェなど自分の創りあげた作品を展示されたり、そのつながりがランニングを超えて広がっています。

「文化圏」をつなぐ

2020年から現在にかけてメリパナイトランは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って発出された緊急事態宣言によって開催を自粛することが増えています。その間、時折ではありますけどメリパナイトランの「これから」をゆっくり見直す機会を得ています。

おかげで大切なことを気付くことが出来ました。
それは、メリパナイトランのランニングスタイルのことです。

メリパナイトランは「ゆっくりのんびり走る」ことをモットーとしています。それは今もこれからも変わりません。しかし「ゆっくりのんびり走る」というのも走るペースには個人差があります。誰かにメリパナイトランのことを勧めるときには少々説得に欠ける言葉だな~と10年間感じ続けていました。

それが10年経って、ようやく腑に落ちました。
気が付いたのです。

私にとって、メリパナイトランの「文化圏」は「競わないで走る」だったのです。
すなわち「競わないで走ること」の楽しさを作っていくことだったのです。

ランニングを楽しむ人々とこの「文化圏」でつながりを広げていきたいと思いますし、ランニングに興味を持たない人々にも、この「文化圏」の魅力を伝え続けるために、今後も出来る限りメリパナイトランを開催していきます。

雨が降っていないかぎり、毎週火曜日の20時30分に神戸メリケンパーク東側入口で集合&スタートしています。
時間と気分の合う方がいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に走りましょう。

緊急事態宣言も解除されたので、先週(10月5日)から再開しています。

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