仕事と夢と挑戦

小学校低学年の頃、絵を描くのが好きで将来は漫画家になりたかった。
人生で初めて描いた夢だ。


小学校高学年の頃、バスケにハマり将来はNBA選手になるのが夢だった。


中学校になって、ギターにハマり将来はミュージシャンになるのが夢だった。


高校は1年で辞めてしまったけど、そこからしばらく"ミュージシャンになりたい"という夢は変わらなかった。

いや、高校を辞めてからは夢があるように見せているだけだったかもしれない。
人に迷惑ばかりかけて、夢に近づけるほどの努力なんてしていなかった。


仕事をしては辞めて、また仕事をしては辞めて。ずっとずっとその繰り返し。

思い通りにいかないとすぐに投げ出し、すぐに逃げ出していた。


19歳の頃、なんとなく見ていた求人広告でタコ焼き屋さんのスタッフ募集を見つけて面接に行った。


よっぽど人手に困っていたのか、明らかタコ焼き屋さんには向いてなさそうな風貌の僕を雇ってくれた。


アルバイトとはいえ、ようやく見つけた職場だ。
『次こそ辞めずに続けるぞ』と、意気込み一生懸命仕事を覚えた。

働き出して3ヶ月程したある日、お偉いさんが店に来た。

店長を呼び出し何やら話をしている。
店長のあとは、他のスタッフも呼び出して話をしている。


『松岡くん、キミもちょっと良いかな?』


新人の僕に何の用があるんだろうと思いながら、話を聞きに行った。

『せっかくウチに来てくれたばかりなのに申し訳ないんだけど、お店閉めることになったんだよ。ごめんね。』

僕は今まで仕事をしては辞めてを繰り返している。
バイトとはいえ、ここはようやく見つけた職場だ。
今までの僕からすると、3ヶ月も続いている奇跡の職場。

 
ようやく見つけて、ようやく続けれるかもしれないその職場が閉店になると聞いた。


(どうしよう。仕事がなくなる。とーちゃんかーちゃんにもまた心配かけるな。次の仕事見つけれるかな。)


不安で頭がいっぱいになった。


『申し訳ないけど、決まったことだから次の仕事探してね。ホントごめんね。』

(何とかできないのかなぁ。何とか続けれる方法は無いのかなぁ。)


僕はお偉いさんに聞いてみた。

「どうにかできないんですか?なんで閉店なんですか?」

お偉いさんは丁寧に説明してくれた。

『つまり・・・・・という事情なんだよ。今の利益じゃ到底お店を続けることなんてできない。毎月毎月赤字が続いていて もう限界なんだ。』

その話は馬鹿な僕でも理解はできた。

売上も少なく利益もない。
給料を払う余裕も無ければ、テコ入れして延命するほどの可能性も感じてない。

僕はお偉いさんに聞いてみた。

「要は利益が出れば良いって話ですよね?3ヶ月僕にチャンスをくれませんか?
みんなはもう辞める気になってるんで、辞めてもらって良いです。僕1人でやります。
残業代とかいらないし、給料も適当にしといてくれたら良いです。
3ヶ月で必ず利益を出します。3ヶ月経つ前に僕を見て無理だと思ったらスグ閉めて頂いてもかまいません。とりあえず僕に全てを任せて欲しいです。」


ただの馬鹿だったんだと思う。

僕はキャリア3ヶ月のたかがアルバイト。
自信なんてあるはずがないし、売上の作り方なんて知らない。


僕は"次の仕事を探すのがだるいから"言ってみただけだ。


探すことに労力を使うなら、存続させることに労力を使う方が気が楽だった。
その時はまだ存続される大変さを知らなかったから。


今思うとお偉いさんも馬鹿だったのかな、、、いや、めちゃくちゃ優しい人だったんだろうな。

『松岡、本当に3ヶ月だけだぞ。』

いや、、、やっぱり馬鹿だったんだろうな。


既存スタッフは僕と同レベルの新人が1人だけ残り、ベテラン陣はみんな翌月に退職した。


僕は新人アルバイトからいきなり店長になった。

ここから僕の"仕事"という概念は変わった。


朝から晩まで頭の中は仕事でいっぱい。
色んなお店に行って吐き気がするほどタコ焼きを食べ歩いた。

絵を描き続けていたあの頃のように。
バスケに夢中だったあの頃のように。
音楽に夢中だったあの頃のように、今自分の中にある"やりたいこと"に熱狂していた。


でも僕は売上の伸ばし方も集客の仕方も分からない。


『美味いもん作って美味いもんがあるって知ってもらえたら人は来るんじゃないの?』

『味を今より上げて、材料費を今より下げれば今より儲かるんでしょ?』

誰でも分かるような、その程度のことしか分からなかった。


そんなことを考えながら1ヶ月間自分なりに研究していると、めちゃくちゃ美味しいけどそこそこコストを下げれるタコ焼きを作れるようになった。


次の課題はそれを「どうやって人に知ってもらうか」だ。

画像1

(タコ焼き屋してた頃)

ここから先は

890字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?