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剽窃とオマージュ

ちょっとこの動画を視聴してみて下さい。
オアシスが1994年にデビューアルバムを出し、
その数ヶ月後にリリースされたミニアルバム、
その表題作である「ホワットエヴァー」。

知ってますか? CMなどでも使われてた曲なので、
オアシスのファンでなくてもたぶん聴いたことがあると思います。
僕は3曲くらいしか好きな曲がない程度のオアシスファンなのですが、
つーか、当時僕はオアシス自体にはあまり興味は無かったのですが、
そのミニアルバムに(大好きな)ビートルズ
アイ・アム・ザ・ウォルラス
がカバー曲として収録されていたことから、
ほぉ~、じゃあちょっとどんなものか聴いてやるか、
と軽い気持ちでそのミニアルバムを買ったのでした。
1曲目「ホワットエヴァー」、ぶっ飛びました!超名曲だと思いました!
こいつら天才じゃないか!とマジで思いました!

で、このミュージック・ビデオですが、
曲の終わりで「ナンバーワーン!ナンバーワーン!」
などと賞賛されながらも、
だけどなぜかボーカルのリアム・ギャラガーは醒めた浮かぬ顔。
作曲者であるギターのノエル・ギャラガーも、
おどけながらもどこか表情が冴えない。なぜか。
その理由、
実はこの曲、のちに盗作で訴えられることになるんです。

聴いて下さい。
ニール・イネス「How Sweet To Be An Idiot」(1973年)
(ハウ・スウィート・トゥ・ビー・アン・イディオット)

完全にパクってます。
誰が聴いても完全なる剽窃(パクリ)だと思うでしょう。
例のリアムの浮かない表情の理由は、
あのビデオ収録の時点でそれが分かっていたからではないでしょうか?
「兄貴これパクってるやん、俺らパクリやってるやん、どないするん?
俺知らんで」とか思っていたんじゃないかなと。

ノエルも実はこの日収録があることを知っていながら
前の晩に浴びるように酒を飲んで二日酔いだったそうです。
おそらくは次のような自己内対話の葛藤があってのことだったのでしょう。
「気づいたらパクっちまってたんだ! だけどよ、こんな傑作が出来ちまったんだ、今更これをお蔵にできるか? できねー! だけど罪悪感が! いや、バレやしない! ニール・イネスなんか誰も知らねーだろ! いやいやいや知ってる奴は知ってるだろ! 知る人ぞ知るミュージシャンズ・ミュージシャンだぞニール・イネスは! じゃあどーすんだ、あした収録だぞ! 知るかッ! ええいッ酒でごまかしちまえ!」的な(まあ僕の勝手な想像ですけど)。

さてこの一件、
オアシスとニール・イネス、どっちが勝ったでしょう。

訴訟の結果は、
ニール・イネスを同楽曲の作曲者に名を連ねる(印税を折半する)
こととし、和解が成立しました。
つまりオアシスは盗作を認めたわけです。

訴訟では負けたことになるわけですが、
しかし、僕の個人的な軍配なら、オアシスを勝ちとします。
なぜか。
正直ニール・イネスの原曲はツマラナイんです(僕には)。
完成度が低いんですね。
可哀相だと思いますし同情もしますけど、だけど、ほとんど聴きません。
それに比べオアシスのホワットエヴァーは圧倒的に素晴らしい!
何回聴いても素晴らしい!
切なさと高揚感が同居したカタルシス!超名曲です!

何回聴いても良い。何回聴いてもカタルシス。それが価値です。
エンタメに於ける「勝ち」とは「価値」あることなんです。
ホワットエヴァーは(僕個人にとっては)
彼らの数多の曲の中でも群を抜いての超名曲!
その名曲とたらしめた真の理由がパクリであったことを知った時は
ショック(いや、なるほどね、だったかな? やっぱりね、とか)でしたが、
それでもホワットエヴァーのことは嫌いになれませんでした。
オアシスは訴えられた後それを素直に認めたわけですから、
その時点からパクリ作品はオマージュ作品へと昇格したわけです。
それに、作品と作者は別物です。
ホワットエヴァーだけは永久に名曲です。そこに変わりはありません。

何が言いたいかと言うと、
これも創作である、ということ。
「誰かが創った作品を改良し、より良い物を創る」
それもまた創作のひとつの方法である、と。
ただ、
公開の際は、あらかじめ元ネタを明らかにしたほうが無難である。
オマージュやモチーフなどと、SNSなどでもいいから公言する。
ただそれだけのことで、恥をかくことも、訴えられることも、
バレることに怯えることも、無かった。

リスペクトの表明さえしておけば相手も太っ腹になって
印税を半分よこせとは言わないんじゃないかな?(知らんけど)


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