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読んだ本と、少しの感想。
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アル中の主人公。学生運動の過去を経て、同時に過ぎていく時間に、親友は何を感じてどこでどうしているのか。

テロリストを産むのは、自分かもしれない。

ある程度、人間は文脈の上で生きていて、それは当然のように決めつけをしている事にもなる。覆すには、前提を見つめ直すこと。猫だって喋るし、木だって歩くし、人間だって透明になる。

猫が喋ったらいいな。

その作家の、仙台での暮らしと不安。震災との向き合い。社会が混乱している中、何を書くべきかの葛藤。大好きな作家の生活を覗けたような背徳感。

その男の、パートナーとの出会いと、その過程と、捉え方と、大切にする気持ちの蓄積。近くにいる人との向き合いが少しずれてしまったときに、帰ってこられるような、少しうるさいので、帰って来たくないような。

置かれている状況と、足りない何かと、手に入れたものと、手に入らなかったものを見つめて、同じ人間がどう暮らしているのかを見つめ直すことで、自分が囚われていることに、筆者とともに気づいて行くような、追体験。

異性とか同性とかでもなく、そこには人間と人間が面と向かっているだけ。女とか男とかはその間柄に一番に関係せず、その相手との1対1の人間関係から始まるもの。どこまでが大切で、どこまで相手を想えるか。自分の余裕を着飾ったその刹那に崩れ去ってしまう愛もあること。食べ物は体をつくること。

愛はどこにでも生まれ得る。それは一方的なものかもしれないし、相互関係かもしれないし、登場人物は2人じゃないかもしれない。まっすぐかも、緩いのかも、硬いのかも、温度も、その愛によっては千差万別だということ。同じ愛など全くないこと。でもそれを愛だと共感できる力が、我々にはあるはず。

どんな差別もマイノリティも、理解し消し去るためには、まず当事者性を持つ事。
遠い話のようで意外とありふれている差別について、その悔しさを肌で感じられる一冊。
世の中の半分の人がこの差別に悩んでいる事。それを消せるのは、紛れもなく今を生きてる自分たち。

敵は先入観。
どんな逆境も、少しの知恵と機転でひっくり返す事が出来る。そんな勇気をもらえる短編集。
伊坂幸太郎イズムの詰まったコロナ禍に読みたい一冊。