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物語という名のドレス

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「物語という名のドレス」

わたしは苦手なことの多い子どもでした。

外で遊ぶのが苦手。
友だちと軽口を言い合うのも苦手。
アリをいじめるもセミをつかまえるのも苦手。
村の教会に続く急な階段で、誰が一番高い段から飛びおりることができるか、度胸くらべなんてのは、いちばん苦手なことでした。

でも代わりにわたしは器用な手を持っていました。
小さい頃から紙やハサミを使って工作をするのが好きでしたが、針と糸に出会ってからは裁縫に夢中になりました。
今では縫うだけでなく、編んだり、刺したりすることもお手のものです。
部屋でひとりで手を動かすことが、わたしにとっては、いちばん得意なことでした。

苦手なことで疲れたときには、わたしは黙々と手を動かしました。
大好きな美しいものたち、例えば白い鳥や、黄色い蝶や、色とりどりの野花が指先から生まれました。

中にはわたしをからかったり不思議がる人もいました。お母さんは感心しながら、心配もしました。わたしがひとりぼっちでさみしくないか、気がかりだったのです。

でもわたしは全くひとりではありません。わたしの手が作りだすものが、友だちになり、世界にもなりました。

満足のいくものができあがったとき、心が勇気で満ちあふれるのを感じました。



わたしはいつか自分用のドレスを作るつもりです。
大人になったらそれをまとって、遠いところへ旅に出るのです。ドレスをはためかせ、胸を張って歩く自分の姿を、夢見ています。わたしのドレスは、青い空の下で白く輝くでしょう。
そのドレスの名は「物語」です。


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額縁サイズ:訳220mm×275mm
使用画材:水彩・アクリルガッシュ
¥27,000+tax

−個展詳細−
個展「筆が編むレース」
2021/8/25(水)〜9/5(日)
at ranbu Space A → http://blog.ranbu-hp.com
12:30-19:30 火曜日定休

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