堺のミスド

Gに会う為に奈良を目指した僕だったが、乗ったのは和歌山ゆきのバスだった。関西方面に向かうバスがその時間それしかなかったのだが、和歌山がどの辺りにあるかもわからなかったし、奈良がその先にあるのか、その手前にあるのかも知らなかった。想えば僕は東京に生まれ、この歳まで関東から外に出たことがほとんどなかった。地方に生まれた人たちは、何かを求めて東京を目指すが、東京に生まれると、何をするにも東京にいれば出来てしまうという思考回路になりがちで、僕はそれまで、東京から外に出てみようという考えには至らなかった。だけど僕はこの時、Gを求めて東京を出た。Gを求めて東京を出発したのはいいが、僕が求め、僕の目的地であるG本人には、なんの連絡もしていなかった。ある程度行き当たりばったりに生きたほうが、余計な期待を抱かずにすむし、ひとつひとつの体験にいちいちワクワク出来ると睨んでいたのだと思う。

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582字

思ったことを記しておきたい。

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