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窓越しの恋人を

雨の時期になると
気が滅入る人が多いけど
私は大丈夫

私の部屋は戸建ての1階で
外には大きめの庇があって
こんな雨の日に
雨宿りするにはもってこいの場所で

すりガラス越しに
ちょっと屈んで外が見えない格好をして
どんな人が居るのか見るのが好き


何だか一人じゃない気がして嬉しくなる
そう、
いっそ、
その人を大好きと思ってしまうと
心がときめいて
白昼夢の世界に飛んでいける


今日は背の高い人が居る
分厚い本か何かを頭に乗せたり
はらりとめくったりするのがわかる

私の好きな色のシャツが見える

チラリとこちらを向いた様な気がした

思いがけずどきりとした


この人どんな顔してるのかな
私の好きなタイプかな
想像して顔が赤らんだ


もしこの窓を叩かれたら?
そんな恋の始まりもアリなのかな?
このすりガラスの窓越しに
手と手を重ねる事が叶ったら?
想像が止まらない



私みたいに
ずっとここに居ると
乙女心も凍えてしまう

あの日

すりガラスの窓を叩かれて
ちょっと期待して
ほんの少し窓を開けた

一目惚れってあるんだ
お互い暫く言葉が出なかったけれど
それから雨の日には
同じ事が始まった

少し話せる様になって
素敵な時間をもらえたの



ずっと続くと思ってた
あの日窓を開けるんじゃなかったんだ



私はこの荒屋で
今もずっと待ってるの
私を二度と外に出られなくした
恋人と信じたあの人を待っているの

色褪せたセーター
白い私

瞳も朽ち果てて何も見えない
白い私

すりガラスの窓越しに
あの色のシャツを着た恋人が見えるまで
白い私
息を潜めてるの


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