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企業法務のメディアとSEOについて考えてみた

この記事は「裏 法務系 Advent Calendar 2021」(裏legalAC) 18日目のエントリーです。

弁護士ドットコム株式会社でBUSINESS LAWYERSという企業法務に関するメディアの編集長をしています、松本慎一郎と申します。

BUSINESS  LAWYERSは2016年の3月末にリリースし、来年6周年を迎えます。月間約100万PV、メールアドレスを登録いただいている会員様が約7万名という規模感のメディアです。

「BUSINESS LAWYERS見てますよ。検索するとよく出てきますよね」と言っていただくことがあります。

「検索するとよく出てくる」

こう聞くと、勘のいい方はSEO対策をしっかりやっていると思われるのではないでしょうか。

ところが、私たちは少なくともコンテンツ制作時のSEO対策に力を入れていませんでした。今年の春先から詳しい方々と意見交換しながらようやく体制を整え始めているところです。

まだまだ取り組みは始まったばかりですが、学ぶことが多くありましたので、今回はSEOについて考えてみたことをご紹介したいと思います。SEOに興味はあるけどあまりできていないな、ご自身のこと、自分たちのサービスをWeb上で知ってほしいな、と考えている方のお役に立てば幸いです。

SEOとは

SEOとはSearch Engine Optimizationの略称で、「検索エンジン最適化」を意味します。具体的には、自分のWebサイトの内容を、Googleなどの検索エンジンが理解しやすいように最適化すること、自分の伝えたい情報がユーザーにとって有益である、と検索エンジンが評価するように最適化することです。

詳しくはこちらもご参照ください。

SEOの3つの側面=「内部施策」、「外部施策」、「コンテンツ制作(コンテンツSEO)」のうち、今回はコンテンツSEOに限って話をします。

2016年の企業法務メディア

BUSINESS LAWYERSが立ち上がった2016年頃、SEO対策をしっかり行っている企業法務メディアは少なく、コンテンツ面で特別な対策をしなくても記事を公開するだけアクセスが増え続けました。
「内部施策」、「外部施策」については同じチームのエンジニア、デザイナー、分析担当の協力を得ていたこともあり、右肩上がりで気持ちよく成長していきました。

コンテンツの企画をする際、キーワードを起点に考えるのではなく、法務の実務上必要になると思うテーマを列挙し、どんなにニッチなテーマでも1人でも役に立つ人がいるのであれば掲載する。そんな編集方針で来る日も来る日も記事を発信し続けました。

2021年の企業法務メディア

ところがここ数年、法律事務所やリーガルテック企業が運営する企業法務系のメディアが増えてきました。
同じジャンルのメディアが増えてくると、SEO対策の有無による影響が検索結果に如実に現れてきます。特に、日本は検索結果1位の記事をクリックする率(CTR)が高いと言われており、検索結果1位を取れるか取れないかはアクセス数に直結します。

競合の存在は脅威でもありますが、全体としてメディアの質が上がり、満足する読者が増えることは望ましいことです。

SEO対策の考え方

コンテンツSEOの基本的な流れは下記になります。
① 検索ボリュームと競合性を勘案してキーワードを選定する
② 関連する検索語、上位表示される記事の内容を参考に構成を考える
③ 記事を書く
④ 公開後は順位を見守り、適切なタイミングでリライトをかける

一見すると機械的に実行できるようにも思いますが、核となる思想がなければ環境の変化に対応できません。検索エンジンのアルゴリズムは定期的に見直され、いきなり大規模な順位変動が起きることもあります。

『現場で使えるWeb編集の教科書』(2021、朝日新聞出版)でウェブライダーの松尾茂起代表は、
「SEO=『Search Experience Optimization』(検索体験最適化)と定義しているんです。(中略)SEOは検索者の悩みを解決し、願望を叶えるための『ソリューション』であるべきである、と。この考え方は、Googleが目指す方向性とも合致しています」
と述べています。

SEOに関する書籍や記事は星の数ほど出ていますが、松尾さんが同書で語っていた上記の考えに私は強く共感しています。

同書で松尾さんは
「読者に新たな視点を与えたり、深い思考を促したりするコンテンツの提供は、メディアの役割の1つです。しかし、検索上位にくるような記事を目指すなら、やはりソリューションの提供が大切になってきます。さらにその先で、読者になんらかの行動を促すことができれば、最強のコンテンツになるでしょう」
とも語っており、ソリューションの提供と行動変容は、私も1つの理想として掲げていたいと考えています。

SEO対策の始め方

本格的にSEO対策に取り組む場合、キーワードの選定から検索意図をカバーする情報の収集、ライティング、モニタリングなど様々な準備が必要になってきます。前述したとおり、コンテンツ以外にも対策が必要なので足が遠のいてしまう方もいると思います(数か月前の僕はそうでした)。

BUSINESS LAWYERS以外にいくつかのメディア運営に関わらせていただいていますが、SEO対策を本格的に行いたい、というご相談はあまり受けたことがありません。

しかし、検索での上位表示が長期的に多くの読者を獲得できる有益な手段であることは間違いありません。

いきなり完璧な姿を目指すと大変になりますが

その記事、どういうキーワードで検索した人に読んでほしいですか?

まずはこの質問に答えるところから始めてみることからオススメします。
そのキーワードで上位表示される記事を見る。上位表示されている記事に含まれているキーワード、構成を参考にする。足りないキーワードを補って記事を作る。

Web上で自分の記事がもっと読まれるようになりたい、自分たちの取り組みを知ってほしいと考えている方は、ここから始めてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、初心者向けにはこちらの記事が推せます。僕たちのメディアには紙媒体出身でウェブ初心者の編集者も多いのですが、本当に初歩的なところから愚直に1つずつ取り組んでいます。

SEOの先へ

ここまでSEOについて書いてきましたが、SEO「だけ」に偏るメディア運営はしたくないと考えています。当然、検索エンジン経由で記事にたどり着いた方にはソリューションを提示し、行動変容を促していきたいのですが、適切な言葉で検索できないモヤモヤを抱えている方や、自分でも課題に気づいていない方はたくさんいます。

『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社、2019)で田中泰延さんは概要、下記のように書き手の姿勢を語っています。これは僕のメディアの責任を担う立場の拠り所になり、編集者としてのあり方にも通じます。

「読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。わたしが言いたいことを書いている人がいない。じゃあ、自分が書くしかない。読み手として読みたいものを書くというのは、ここが出発点なのだ。」

BUSINESS LAWYERSの運営を続けている中で、今までの法務のあり方を変えたい、法務業界がもっと良くなってほしい、という思いを持つ方々と出会い、インタビューの機会をいただいてきました。

この人の思いを、同じ課題を感じている誰かに届けたい。変わりたいと思っている1人の背中を押したい。大勢に理解されないかもしれないけど、前に進もうと懸命な人の声に耳を傾けていたい。

検索はされないかもしれないけど、何よりも自分が読み返したときに胸が熱くなるものを読みたい。

そんなことを、SEOに取り組むようになって、かえって強く思うようになりました。

「検索エンジンに出てこなくても大丈夫、ここに来ればあなたと同じ気持ちを持っている人がいる。」

そう言えるメディア運営を私はしていたいのです。

この記事を読んで共感してくれる方が1人でもいれば嬉しく思います。少しでも気持ちが動いた方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。

さて、#LegalACも後半に差し掛かってきましたね!表裏共に毎日素晴らしい記事が読めて楽しいです。

明日のおけいさんのエントリも楽しみしています!おけいさん、よろしくお願いいたします!

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