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世界最大級の総合気象情報会社「ウェザーニューズ」を調べてみる

先日カンブリア宮殿で、ウェザーニューズをテーマにやっているのを見た。

今までは、日本国内の個人向け天気サービスのイメージしかなかったが、世界規模で事業をしていることを知って、気になったので、調べたことをまとめます。

ウェザーニューズの概要

1986年設立の民間気象情報会社で、30余年にわたる発展の中で世界50か国でサービスを行う世界最大級の総合気象情報会社です。創業当初は、創業者・石橋博良さんの原体験から海洋気象専門の専門会社として発足し、現在は陸・海・空の気象情報を提供している会社です。

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※出典:メディアガイド

法人向けサービスは、航海気象、海上気象、石油気象、水産気象、物流気象..etcなど様々あるので、詳しくはこちらをご確認ください。


気象庁と民間気象事業者の役割の違いについて

基本的には「注意報・警報などの防災気象情報」「気象観測データ・数値予報資料」などは気象庁が担当しており、「個人/法人などの顧客ニーズに合わせた情報」は民間気象事業者が担当していると思われます。

個人的には、カンブリア宮殿で、ウェザーニューズの草開さんがおっしゃられていた「気象庁→みんなの気象台に対して、ウェザーニュース→あなたの気象台」という言い回しが端的にわかりやすいと思いました。

ちょうどわかりやすい資料を見つけたので、置いておきます。

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※出典:気象業務法における民間気象事業者の役割について

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※出典:交通政策審議会第30回 気象分科会資料


天気事業について

日本では、気象業務法によって一定制約がありますが、1993年の法律改定によって制限緩和されました。この時の改定により、気象庁長官の許可があれば、気象庁以外の者が予報業務を行うことができるようになり、気象予報士の制度も整えられました。民間気象事業者にとって「天気予報の自由化」と呼ばれるような出来事だったようです。

海外では、国家気象機関からの許可を得る必要の有無が分かれるようです。

(例)アメリカ→国家気象機関からの許可が不要。ヨーロッパ→国家気象機関からの許可が必要

マーケットについて

少し古いですが、2017年の三井物産戦略研究所の資料によると、日本国内の市場規模は300-350億円、アメリカでは約420~735億円、ヨーロッパでは約360億円程度とようです。

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また現在でも様々な分野で、気象データは活用されており、今後も新たな分野での活用の仕方、ニーズが生まれてくるため、市場規模としてはさらに大きくなるのではないかと思いました。

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PEST分析

大きな制約としては、日本国内では気象業務法に従って事業を行う必要があります。その上で、テクノロジーの発展により、国内/国外問わず、事業機会が広がっている(技術的には国内→海外に応用の効くので、海外展開も比較的しやすいと思われます)

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■気象業務法について
1993年の法律改定を代表するように、年々民間でできることを緩和していく方向にあるようです。ただし、民間事業者は気象庁長官から許可を受けた上で予報業務を行う必要があるため、必ず法律を順守する必要があります。もし順守していないと、業務停止、許可の取り消しが発生するようです。

ビジネスモデルについて

大きくは、①BtoS事業(メディアへのサブスク、広告事業)②BtoB事業(海・空・陸などの気象情報を企業/自治体に提供する事業)の2つがあります。

基本的に気象予報の精度が非常に重要となる事業ですが、長年の企業努力により、独自の気象DBを構築→予報精度を高めてきたことが企業の資産となり、顧客獲得の武器や競合企業の参入障壁となっているようです。

サポーターと呼ばれる個人から情報を収集する仕組みを作ったり、独自で気象データを集めることで予報精度が90%以上を実現しています(詳細

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事業について

決算報告書を元に、気づいたことを書いていきます。
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①直近の売上構成費だと、BtoB事業が約51.1%、BtoS事業が約44.6%、SRSが約4.1%と、大きくは2事業が売上を支えている
②BtoS事業の伸び率が高く、将来的にはBtoS事業の売上構成費がさらに高まりそう(事業的な伸びしろ有)
③BtoS事業はサブスクの売上構成費が大きいため、安定した売上が見込めそう。広告はコロナ影響が一定ありそうであるが、利用者のトラフィック増に支えられ、今後も売上貢献が期待できそう

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まとめ:観察して感じたこと

今回調べてみて感じたことをまとめてみます。

(1)事業領域に一定の参入障壁がある
元々気象市場は300〜350億円と小さい上に、気象業務法による気象庁からの許可の障壁があります。その上で、初期から参入していた「一般財団法人日本気象協会」「ウェザーニューズ」は一定の先発優位性があると考えられます。

(2)気象観測ネットワークの構築
正確、かつ予報に必要な情報を得るために、気象庁のアメダスの情報に加えて、非常に多くの観測器具を設定し、観測ネットワークを作ったことが事業的な優位性になったと思いました。また気象予報のアルゴリズムもAI技術を用いて、ブラッシュアップしているところもポイントだと思います(詳細

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(3)国内市場のみならず、海外にも進出
ウェザーニューズは1994年に韓国、2003年に中国に進出していますが、2015年時点だと海外売上構成は2割程度だったようです。ちなみに中期経営計画では、BtoB事業はグローバル展開を掲げ、国内・海外売上を50:50でとする方針のため、今後さらに注力していく方針だと思われます。

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※出典:中期経営計画(2019-2022)

2015-2016年ごろの記事ですが、詳細気になる方はこちらどうぞ。


(4)新規事業開発への投資
企業文化として、新規事業の投資を積極的に行っているようです。調べてみると、わかるのですが、iモードやiphoneが登場後にも早い時期にサービスの立ち上げを行っています。
直近だと、気象データをビジネスの将来予測に利用するための新サービス「WxTechサービス」を始めていたり、気象データAPIを従量課金制で提供開始したりしています。


(5)気象事業のハードルの高さ
気象情報は気象庁などから発表されており、個人/法人も無料で入手できることができます。ただ、無料でも取得できる状況で、「ウェザーニューズ」というサービスを選ぶサービスを提供できていることが素晴らしいと思いました。

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お読みいただき、ありがとうございました。
自分なりに調べてみましたが、もし何かの参考になりましたら、幸いです!

(終)

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