見出し画像

『ポピーthe ぱフォーマー』

 映像部門異動当時、レンタル向けのアニメシリーズも複数やっていたが、掛ける予算も中途半端で売れていなかった。それでも、テレビシリーズだと電波料も含めて、1クール1億円以上になるが、レンタル向けにVHS 、マニア向けに当時はLDを出していたが、当たらなかった企画はどんどん売上が下がっていく。とは言え、当時は、売れないので、途中で発売を打ち切りますとはなかなか言えず、赤字は雪だるまのように増えていく、敗戦処理のような発売が続いていた。
 ある老舗のアニメ制作会社の若い社長に疑問をぶつけたら、ローバジェットの短い尺のCGアニメの実験的な企画があると、パイロット版を見せてくれた。とても気に入ってキッズステーションと3社で製作し、夜の帯の枠で放送が始まった。ネットでの話題が盛り上がって来た(と言っても、当時はSNSはなかったから2chとmixiと掲示板)が、当時の上司がなかなかハンコを押してくれない。大きな金額ではないとはいえ、よく待ってくれたと思う。いよいよ頭に来て、その制作会社の売れ筋の作品ともども、他社に渡すつもりで、飛び越えて更に上の人間に話たら、さすがに問題になって企画は直ぐ通った。なので、番組のクレジットは第2シーズンまで、ウチの社名はない。
 デザインは会社の系列デザイン会社に、モンティパイソンのDVDを担当していた若いデザイナーが来たので彼を起用し、コストさえ合えば、キラキラのジャケットなど、後悔の無いようやりたいようにやった。彼は僕の思いつきを、センスよく実現してくれるのだ。宣伝費も掛けられないので、PR の仕掛け作りも、考えつく限りやったと思う。
 でも、ネットで話題というだけのCS局の5分番組のシリーズDVD3枚は、過去アニメ作品の社内実績が悪すぎて、営業も数字をつけてくれない。社内の会議は損益上、相当旗色は悪かった。事前に、限定のボックスをつけセット売りをCS 局で予約を取ることで何とか認められた。局の通販スポットと、自社サイトの担当者がおもしろがってくれ、HP と2chでいろいろ煽ったら(繰り返すが、当時はSNS がなかった(笑))。非常にうまく行って、予約はどんどん増えた。局だけで事前予約が、1万セットを優に超えたのではないか。期末に、社内のヒット賞が出て、賞状と盾を届けたら、迷惑を掛けた制作会社の社長が喜んでくれてよかった。
 マーチャンダイジングの商品も増え、週末、原宿のキディランドや、銀座博品館、秋葉原や札幌、関西でもファンイベントもやった。毎回怪しい格好で、イベントの司会もやっていた。面白かったなあ。DVD3枚しかないので、発売の希望が寄せられていた主題歌のCDに初回特典で3種のキーホルダー(外から見えるようにしたが) を入れたり、サントラの企画アルバムの初回盤には、キャラクターのパンツをつけたり、楽しんだ。
 アニメ業界では、自分は全く知られていないかったせいか、その後、CGアニメの企画の売り込みが沢山来て、みんな『ポピーというキッズステーションで大ヒットした作品ご存知ですか?DVDが何万枚売れているんです。御社も、同様な企画やりませんか』と提案され、自分がやってるんですと言い出せず困った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?