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2022年に書いたものまとめ

 とにかく忙しい一年だった。どれくらい忙しかったかというと、今年は日記をつけるぞ!と思ったものの全然つけられなかったくらい忙しかった。
 特に仕事が完全に人手不足の状況でトラブル続きだったこともあり、1月から12月までひたすら終電で帰る生活が続いた。3月と4月が本当に最悪で、月の残業時間が100時間を超え、産業医との面談になったものの「まぁみんな頑張ってるから」と言われて終わった。産業医というのは本当に良い仕事だと思う。
 しかし、一応そういう状況下でもなんとか執筆は続けられており、日々感謝である。以下、今年書いたもののリストです。

「影たちのいたところ」(「紙魚の手帖」vol.3収録)

 2月の頭に受賞第一作となる「影たちのいたところ」を東京創元社の新しい文芸誌「紙魚の手帖」3号に載せてもらった。9つの影を持つ男の子とバカンスで暇している女の子のボーイミーツガールもの……と見せかけて実はそうでなかったりする。「射手座の香る夏」の改稿作業と並行して書いていたので、実際には昨年の夏くらいから作業していた。
 難民問題をテーマの一つとしていること、およびいくつかの地理的条件から舞台をイタリアの小島としたのだが、よく考えるとイタリアには2回くらいしか行ったことがないのでなかなか無茶だったように思う。でも、それなりに褒めてもらえたので良かった。

「振り返らない少女たち」(第4回百合文芸コンテストpixiv賞)

 一応プロデビューした身なので、公募には基本出さないようにしようと思っていたのだが、やっぱり百合が書きたいな〜となり、応募要項的にも特に問題はなさそうだったのでこれでラストにしようと思って書いた。
 作品自体は気に入っている(特に終わり方が好き)のだが、いかんせんpixiv社のハラスメント事件があり、色々と台無しになってしまった印象がある。ハラスメントそれ自体も最悪だし、直後の対応もどうかと思ったし、おまけにコンテストの結果発表のタイミングにあわせて「はい、安心して受賞してくださいね」とばかりにとりあえずの声明が発表されたのにも若干腹が立った。こういうことがあるたび、この手のプラットフォームビジネスにとって、我々は「ユーザー」=「お客様」=「商品」なのだということを実感する。
 受賞を辞退しようかとも思ったのだが(Amazonギフト券はそんなにいらないし…)、審査員や他の参加者には別に非がない(というか被害者)わけだし、ここで拒否して他の人が引け目を感じる流れが出来るのも嫌だなぁ……と思ったのと、特にコンテストに参加してない人たちが「ここは受賞拒否するのがかっこいい」みたいな話をしているのも見てしまって、それはそれで嫌な気持ちになったので、もう全てがどうでも良くなり辞退はしなかった。
 あ、でも個人的に推していたねぎしそさんの「あの日、私たちはバスに乗った」が河出書房さんの賞を獲っていたのは嬉しかった。おめでとうございます。

「空に溺れる」(「CATASTROPICAL トロプリ闇アンソロジー」収録)

 二次創作だけど……。ゆりえるさん主催の「トロプリ闇アンソロ」企画に参加させて頂きました。(一応年齢制限がある本なのでリンクはなし)。闇アンソロなのでつまり、暗い二次創作や辛い二次創作ばかりを集めたアンソロジーということですね。でも、僕の作品が一番「光」寄りで明るくて爽やかだったと思います(言い訳)。

「帰宅」(『異界觀相vol.2』収録)

 11月の東京文フリで頒布された、造鳩會さんの『異界觀相vol.2』に載せて頂いた短編。「迷子なのか?」がテーマということで、迷子になった子供の話を書いた。塾の帰り道、どんどん帰宅ルートから外れ、異様な世界に迷い込んでいく息子と、その帰宅を電話の向こうで待つことしかできない母親の話。全編、ほとんど息子と母親の電話口での会話だけで構成しているが、これはジョディ・バドニッツの「来訪者」がものすごく好きだからである。ちょっと前の映画だと「おもかげ」も似たような構成だった。
 『異界觀相』は装丁もおしゃれだし、他の方の作品も面白いし、おまけでかっこいいTシャツももらえたりしたので、とても良い雑誌だと思います(宣伝)。

「十五までは神のうち」(Web東京創元社マガジン掲載)

 商業デビュー3作目。
 いわゆる反出生主義(ただし、厳密には異なる。本作ではベネター的な功利主義を採用していない。どちらかといえば非出生主義というべきか)をテーマにした作品で、〈飲むタイムマシン〉による遡及中絶技術が実現し、全ての子供に出生の事後選択権が与えられた世界を描いている。
 今年はほとんどの(労働以外の)時間をこの作品に費やしたといっても過言ではなく、二作目「影たちのいたところ」の発表以降はずっとこれを書いていた気がする。実は、これの前身となる作品(テーマとアイデアは同じだが、プロットが全く違っていた)の初稿が5月末頃に書き上がっていたのだが、色々あって全ボツにして最初から書き直したのである。おかげで、発表まで随分時間がかかってしまった。
 前2作は若干肩肘を張っているというか、まだ力が抜けていないところがあったというのが個人的な反省点だった(なので、恥ずかしくていまだに読み返せない)のだが、今回はかなり自由に(それと同じくらい真剣に)書けたように思う。テーマがテーマだけに万人受けする作品でないことは承知しているし、あまり無責任に勧めることもできないのだが、しかし個人的にはかなり好きな作品となっている。

 ということで、今年はなんだかんだ短編5つを書くことができた。仕事の状況がもう少しマシだったら、あと一作くらいは書けた気がするが、仕方がない。ともあれ、読んでくれた皆様、および編集部の方々、ありがとうございました。
 一応、来年の2月以降は色々あって多少は(今より)時間が取れるようになるはずなので、まずは単著の出版を目指して引き続き頑張っていこうと思う。あと、今年は時間がなくて全然本を読めなかったので、来年こそは…。

 その他、1月に宮古島でダイビングをしたり、念願の銀山温泉に行ったり、魔法つかいプリキュアが5周年だったり、人生で初めて髪を染めたり、SF大会に行ったり、北海道に2回行ったり、ガーラ湯沢でぐずぐずの雪で春スキーをしたり、「劇場版からかい上手の高木さん」を4回見に行ったり、涸沢でテント泊登山をしたり、大学時代の指導教授が退官なので最終講義にお礼参りに行ったり、サウナとレトロ自販機にハマったり、やんぐはうすラジオに出演したり、金沢旅行をしたり、長崎旅行をして軍艦島に行ったり、竹原に聖地巡礼に行ったり、会社の後輩たちとアジ釣りに行くもフグしか釣れなかったりした。あと、ここに書けないようなことも結構色々あったので、盛りだくさんの一年だったと言える。
 来年はプライベートで色々あったのでそれを頑張るのと、執筆を頑張るのと、あとポッドキャストもやってみたいですね。番組名はMATSUKIN TVでひとつ…。

 では、来年もよろしくお願いします。


 

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