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『紬屋吉平』六代目 浦澤月子さんと番頭、冨澤昭夫さんとの御縁で仕上げた「桜」と「菜の花」の御朱印帖。

こんにちは。京はし満津金と申します。
今日は3月の新作のご案内です。

銀座のあづま通りにはかつて、老舗呉服の名店が建ち並び、中でも結城紬や黄八丈といえば『紬屋吉平』。文壇や歌舞伎界や俳優など、各界の錚々たる方たちを顧客に持つ名店でした。
しかし残念ながら1994年にその歴史に幕を閉じましたが、高い美意識と厳しい目で選び抜かれた個性豊かな品揃えは、今も着物ファンから高い支持を得ています。
その『紬屋吉平』の名物女将といわれた六代目の浦澤月子さんは、直接、織元や染め職人を訪ねて一緒になって着物を創作されていたそうです。
また1980年代半ば「家庭画報」特選きものサロンでは俳優の高橋恵子さんをモデルにして、毎月洒落た着物と帯を紹介していまして『紬屋吉平』は名だたる着物好きの女性たちの憧れのお店であったと…。
そんな明治中期以来180年の歴史を持つ『紬屋吉平』の六代目に仕えた番頭、冨澤昭夫氏がウチを訪ねてきてくれたのは2022年の秋。冨澤氏は閉店後も顧客のフォローを続け、着物生地を大切に保管してきました。
冨澤氏がふらりとウチを訪ねてこられ、「この生地を役立ててほしい」と。聞けばたいへんな名店。着物にすれば何十、何百万円とする貴重な生地をたくさん譲ってくださったので私はとにかく驚くばかりでした。
満津金では開店当初から「形見の御朱印帖」という祖父母が愛用していた思い出深い「着物」を御朱印帖に仕立てていましたので、『紬屋吉平』の生地を他にはない尊い贈りものに仕立てる自信がありました。
冨澤氏は月刊「江戸楽」を見て、「満津金さんならきっと役立ててくださると思いました。昔の人は背丈が小さいので、この反物は今の人の着物には仕立てにくいので御朱印帖という形で生まれ変わってくれて嬉しい」と笑顔を見せてくれました。
それから半年後の2023年3月、隣町の日本橋に館を建てて90周年を迎える髙島屋さんの周年記念催事への出店を機に、『紬屋吉平御朱印帖』の販売をはじめました。
そして今春、桜色と菜の花色に染められた紬屋吉平の生地で御朱印帖を仕立て、春の喜びを表現しました。
「桜」は〈七宝〉紋様、「菜の花」は〈花菱〉紋様で織り上がっています。
これまで友禅和紙や綿地や裂地で御朱印帖を作ってきましたが、隣町銀座の老舗呉服屋店の結城紬に出会えるとは夢にも思いませんでした。これからは六代目の浦澤月子さんや番頭の冨澤昭夫さんの着物作りに妥協しない現場主義を見習い、御朱印帖作りに励んで行きたいと思います。また冨澤昭夫さんとの思いがけない出会いからいただいた御縁を大切に商いに励んで参りたいと考えます。冨澤昭夫さん、ありがとうございました。

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