＊脚本の本棚＊フーとスリンと祷りの倣わし（脚本抜粋公開）
フーとスリンと祷りの倣わし
作 ひなた 菱咲
フー・ガシーフェイス
スリン・ベイルベリー
エドロン・ウォーターバック
ニール・プレミオール
ペンター・ウィルシュキッズ
グレープ・プールミント
デライド・シルバールイス
カモノハシ・ビレッジビット
ヤッキ・ガシーフェイス
アキノワ・ガシーフェイス
ミゼッタ・マンブリン
セイロン・キャンディラース
ドミニオン・キャンディラース
レジー・アモルワット
クローブガビラ
フレグリープ
○ 一景Ａ 予編
(２駒) 悪夢
明転
アキノワ入り
アキノワ 人は非日常が好き。火事みたいな、派手な物、明るい物、温かい物、音が鳴る物いつもと違う物壊れていく物、そして自分の身にふりかからない、不幸が好き。黒く焦がしながら広がって、灰を生みながら燃え上がり、命を奪いながら熱を生む。人はそういう物を眺める時に、人であることを一旦やめる。ただの感情に欲望に、或いは何かしらの要素やくちゃくちゃの抜け殻になって。暇をもてあました者達が、さっきまで遊んでいた子供たちが、世間話をしていたおば達や仕事をしていた男達に、すぐ隣に居た友人だけでなく、家族や恋人まで、ひとつのかたまりになっていく。不気味に思えるほど軽やかに。祝祭かのように沸き立って。ふとした時に、人は人をやめる。手も伸ばさず、願いもせず、ただただ並べる、知らぬ顔、分からぬ顔、何も出来ぬ顔しない顔しようとも欠片も思わぬ顔ただ野次馬を増やすだけの声をあげるだけで満足する顔そして、わらう顔。にっこりとぺっとりとからっとぽろっとがらがらとわらう、穴ぼこの顔。何でも吸い込む底知れぬ穴。何かが出てくる真っ暗な穴。人は、個であることを、歴史を背負い未来を創造し得る、人をやめる。個人であることを。自分であることを。
アキノワハケ
○ 一景Ｂ 村へ
(３駒) 目覚め
スリン板付き、フー入り
フー スリン。大丈夫。
スリン 大丈夫。ありがとう。
フー 式、始まるよ。
スリン うん。
フー お姉さん綺麗だったなあ。スリンも早く行ってあげなよ。
スリン 時間は。
フー え。
スリン 式はすぐ始まるの。
フー ううん。まだ少し余裕はあるよ。
スリン ちょっと気分転換してくるのは。
フー 大丈夫。
スリン 悪いね。
フー 機嫌が悪いの？
スリン 悪いのは気分かな。
フー そう。
スリン 機嫌の方は、いつもちょっと悪い。
フー そうかもね。
スリン そうかもねじゃないよ。
フー 悪い。
スリン 真似すんなって。じゃ。
スー うん、気をつけてね、行ってらっしゃい。
(４駒) 煩い二人
ペンター やっとひらけたとこに出たぜ全くこれだから田舎は来るだけでソウエキサイティングだ！ あんなでかいハチが居るなんてハハーンさてはここは世にも危険なところだな！
グレープ ペンターちょっと待ってよヘビが出たからって急に走らないでよ！
ペンター グレープ大丈夫かハチには刺されてないかってヘビが居たのかよハチだと思ってたよ！
グレープ ペンターがしっかりヘビ踏んでたよ！
ペンター そんなばかな！ ハチは見間違いか！
グレープ ハチも居たよ！
ペンター 逃げるしかないぞその状況！ どうなってんだ！
グレープ ペンターが逃げてその後ろをハチが飛んでヘビが追いかけてる後ろで私が 走ってたよ！
ペンター よく追ってきたなグレープ！
グレープ 挟めば勝てると思ったから！
ペンター 俺は逃げてグレープは勝負したってことかかっこよすぎるぜこいつ！
グレープ ペンターが先頭を走る！ これが本当の男前だね！
ペンター よく分からんけど！
グレープ よく分からんけど！
ペンター しかしさすがは都市から離れてるだけあって空気が最高だ味は分からないがなあ、なあグレープ！
グレープ 田舎から都会に行く時は空気悪いなあって感じやすいのに逆はなんかこう、あんまりだね！
ペンター 喫煙者にゃ禁煙席の空気の良さがわからんのと同じだな！グレープ 幸せはそこにあるのに気づきにくいものなんだね
ペンター 俺は吸わんからそいつらの気持ちは分からんけど！グレープ 分からんけど！
○ 一景Ｄ 結婚に向けて
エドロン、ニール入り
(９駒) 川四人組とレジー
ニール おーい、エドロン。
エドロン ニール。
ニール お前こんな日になにやってるんだよ。祭りなんだ。あっち行こうぜ。
エドロン 今日は先生が来るから、それだけ番をしたら行くつもりだよ。
ニール 全くお前は馬鹿丁寧なやつだなあ。
エドロン ニールはもうセイロン達とは話したの。
ニール おう、ドミニオンのやつのぼせてたぜ。
エドロン ドミニオンが。それは見てみたいな。
ニール だろ。
フー入り
フー あ、ニール。
ニール フーか。スリンは。
フー 今休んでるから、もうちょっとで来ると思うよ。
エドロン スリンも働いてたの。
フー ううん、散歩してたら兵隊さんに意地悪されてる人が居たから助けてきただけ。
ニール なんだそれ。
フー 私もよくしらない。エドロンはあっちいかないの。
エドロン ああ、ちょっと先生をね。今日くるから。
スリン入り
スリン お、やっぱり居た。
ニール スリン。お前いつまで寝てんだよ。
スリン うるさいなあ良いだろ別に。
ニール 今日ぐらいは村の事に興味もてよ。
スリン 姉さんの事も相手の事も結婚の事もめでたいと思ってる。
ニール 結婚ぐらいしたら良い。私が嫌なのは何も考えず昔の人がやってきた事を真似するのだけ。
エドロン そうは言ってないんじゃないかな。 おめでたいやつらだとう。
フー あ、船が来たよ。
ニール 小さいな。
エドロン 先生だ。
レジー入り
レジー 皆さん御機嫌よう。向こう岸から見てたらなんだか賑やかだったので、少し早めに来てしまいました。
ニール おうレジーさん、あんた良い日に来たね。今日はセイロンとドミニオンが結婚するってんでそのお祭りをやってるんだ。
エドロン 式もあるから、見ていってください。
レジー それはそれは、是非お祝いしないといけませんね。
エドロン 先生が来てくれたら二人も喜びますよ。
レジー だから先生だなんてやめてください。お互いの村の文化を共有しあってるだけで、私個人としてはむしろ勉強に来てるんですから。
スリン 生真面目だらけだなあ。
ニール 不良にゃ分からねえな。
スリン 一緒にすんな。
エドロン ニール、今日は僕がレジーさんを案内するよ。
スリン フー、あんたも一緒に行ってやったら。
フー え。
ニール そうだな。二人とも仕事気分になっちまうから、遊ばせてやろうぜ。
フー うーん、分かった。
レジーとエドロンとフーハケ
スリン あんたはどこ行くの。
ニール え、いやここにいても。
スリン てっきりエドロンの代わりに番をするのかと。
ニール 俺が。冗談言うなよ。
スリン だろうね。
ニール お前は。
スリン 何が。
ニール 一緒に行かなくて良いいのか。
スリン ……冗談。
(１１駒) キャンディラースさん
セイロン セイロンベイルベリー。セイロンキャンディラース。
ドミニオン セイロン。
セイロン ドミー、どうしたの。
ドミニオン 綺麗だなと思って。
セイロン 何かの真似。
ドミニオン 真似。
セイロン 結婚式で皆の前に出る直前の、二人の会話。ドミニオン 思い出した。
セイロン この間借りた本にあったね、こんなシーン。
ドミニオン もうそこまで読んだのかい。
セイロン 止まらなかったわ。
ドミニオン そう。
セイロン 「どうしたの」って聞いて「綺麗だなと思った」って言われて「綺麗」って呟きながら、過去や未来の事に思いを巡らせて。
ドミニオン あれは呟いたのか。男がまた「綺麗だよ」って言うから、俺は聞き返したのかと。
セイロン いままでの事やこれからの事を思い浮かべてる最中に綺麗だって言ってくれるから良いんじゃない。
ドミニオン なるほどな。セイロン。セイロン 「どうしたの」
ドミニオン 「綺麗だなと思った」
セイロン 「綺麗」
ドミニオン 綺麗だよ。
セイロン ちょっとは恥ずかしがってよ。
ドミニオン それよりちょっと聞き返さなかった
セイロン 聞き返してないよ。
ドミニオン 疑問になってなかった？
セイロン ちょっと語尾が上がっただけよ。あいだよ、あいだ。聞いたのと呟きのあいだ。
ドミニオン そうかな。
セイロン 憧れの通過点だもん。聞かないよ。
ドミニオン 聞き返すほど揺らぐような気持ちじゃないって事。
セイロン そう。
ドミニオン ……これからだね。
セイロン うん。次誰かが結ばれる時は、皆がしてくれたみたいにもっと祝ってあげなきゃね。
ドミニオン 気が早くないかい。
セイロン スリンの事が気になって。
ドミニオン ああ。村の教えとか、嫌いだからね。
セイロン 妹がごめんね。あの子が誰かと結婚するっていう時は、もっと違ってると良いなって思うの。
ドミニオン 習わしが無くなってるとか。
セイロン ううん、そうじゃなくてね。なんていうか、あの本もそうだけど、都会の生活みたいになったらって。この村は一番近い町まで半日ぐらいかかるし森も大きくてなかなか電気が用意出来ない。だから、町の人も開発しに来れないみたい。村の習わしがなくなるとかじゃないし、だいいち森の向こうにも宗教はある。ただ、向こうは自由よ。選ぶ自由がある。選んでも良いっていう文化が根付いてる。
ドミニオン 認められてるね、色んな人が居る事を。道を選んでも、後ろ指をさされてたら、それは自由な社会じゃない。
セイロン あの子が村を出て町に行ったら、どうしよう。
ドミニオン これは頑張るしかないな。
セイロン 頑張る。
ドミニオン 大人の俺が頑張ってこの村の未来を築かないとね。もっと町にある物を使って選択肢を増やして色んな形があって。その為に村も大きくしないと。
セイロン その時は手伝わせてね。
ドミニオン 勿論。
ミゼッタ入り
ミゼッタ キャンディラースさん。
セイロン はい。
ミゼッタ こちらへ。
ドミニオン ええ。
○ 二景Ａ
(１４駒) 一晩経ち、町にて
エドロン板付き、デライドとカモノハシ入り、
デライド 昨晩は休めたか。
カモノハシ ええ、やはりこっちの方が快適ですね。大臣は。
デライド 私は運転もしていない。お前達の方が働いただろう。
カモノハシ とんでもない。
デライド 近くの村落に泊まれば良かったのだが。何もない所に連れまわしてしまってるからな。
カモノハシ そんなお心遣い。
デライド 気にするな。だが、向こうで休めるのが一番だな。良い宿があれば
カモノハシ 泊まるのですか。
デライド ああ。明日、また村に行こう。今度はゆっくり見て回りたい。早朝、車を出してくれ。
カモノハシ かしこまりました。……あんな村ひとつに時間をかけるのか。
(１５駒) 翌日、村
ミゼッタ はあっ、もう乾いてる！ あ。
カモノハシ ん。なんだ。
ミゼッタ 今日は大臣さんと一緒じゃないんですね。
カモノハシ ああ。
ニール入り
ニール どうせまた離されたんだろ。
カモノハシ なんだと。
ニール だってお前みたいなのが友達に居たら嫌だしな。
ミゼッタ 友達って。ニール、口ばっか動かしてないで洗濯物集めて。
ニール 手伝ってもらっといて。
ミゼッタ 何よー、落ち着かないってガタガタ言ってるからやらせてあげてるんじゃない。
ニール ガタガタは違うだろ。
ミゼッタ ガタガタしてたじゃない。大臣さん達が帰る時も突っかかりに行くと思ったら何もしないんだもの。
カモノハシ びびったのか。
ニール お前黙ってろ。暇人。
カモノハシ なんだと。
ニール へっへー鬼ごっこでもするかー。遊んでるって怒られても知らねーぞ。
カモノハシ 失礼な。俺は仕事がないんじゃない。大臣の居ない所で村の奴が変な事してないか監視してるんだ。
ニールハケ
ミゼッタ 兵隊さん。
カモノハシ 隊長だ。
ミゼッタ 一緒よ。指示は大臣さん次第だし。あなたより他の兵隊さんの方がまともに見えるわ。
カモノハシ 人の言う事を聞くだけの人間のどこがまともだ。
ミゼッタ それに、私たちも一緒よ。
カモノハシ 誰かの言う事を聞くだけの人生か。
ミゼッタ ここで貴方を監視してる。
カモノハシ はい。
ミゼッタ 相手にも頭と心があることを知らないんでしょ。
カモノハシ ちょっと。
ミゼッタ 別に誰に言われたわけでもない。私が考えて動いてるだけ。この村に村長というものは居ないわ。
ミゼッタハケ、兵隊入り
カモノハシ 待ってくれ。
ガベラ 隊長。食事の準備が出来ました。
カモノハシ 分かった。
ガベラ どうされました。
カモノハシ 何でもない。大臣の方はどうしてた。
ガベラ いえ、ここに着いてからは仕事でずっと出ているので分かりません。
カモノハシ じゃあ、大臣が出る前に俺に聞いたのか。
ガベラ ええ、まだ二回目の入村なので長くなると思い。
カモノハシ そうか。考えたんだな。
ガベラ え。はい。
カモノハシ 行こう。
２人ハケ
ヤッキとフーとデライドとフレグリープ入り、スリン途中から入り、エドロンも途中入りしてシーン中ハケ
(１６駒) 歯を磨く
ヤッキ しかし私にばかり言っても仕方ないのです。
デライド どうしてです。
ヤッキ 私はこの村の長でもないからです。私に熱心に話されても、決定権はありません。
デライド 分かりました。だがあなたから皆さんに話して貰うことは出来るでしょう。あなたはある程度発言力があるようだ。
ヤッキ それは、あなたの仕事でしょう。あなたの言う、確かな友人というものには、なってさしあげましょう。その方が私の意見もあなたに通しやすそうだ。しかしそこまでです。私はあなたの今回の目的には味方になりますが、それ以上を引き出したければ、あなたの仕事ぶりをもっと見せてください。
フー お父さん。
ヤッキ 大丈夫。手荒はできない。今は平和な時代だ。荒事はすぐに世界に広まる。
デライド ベンダー達か。
ヤッキ ええ。カメラはお返ししたようですね。
デライド ただの旅行者と変わりませんからね。テレビ局の人間であるならどうにでもなりますし。
ヤッキ ですがもし彼らが立場を省みなければ。
デライド 部外者に手を汚させますか。
ヤッキ おや口だけは綺麗潔白で。
デライド 清潔感は政の基本ですから。
フー 大臣さんは、今日歯を磨きましたか。
ヤッキ フー。
フレグリ 何を言ってるんだ
フー 朝、顔を洗って、歯を磨いていると、その日嫌な顔を見ても少しすっきりした気持ちで一日を始められるような気分になります。それも、自分の手で磨いていって、最後口をゆすいだら口の中はそれまでとは違う気持ちのいい状態。私はその口で、お父さんお母さんにおはようをします。次は仲の良い友達。それから、大体朝ごはんを食べる前ぐらいに
ヤッキ フー、ありがとう。言い合ってすまなかった。
フー お父さんが悪いの。
ヤッキ いや、誰も悪くないな。そうでしょう、デライドさん。
デライド カモノハシなら、悪くないって事にしときたいのだろ、と言いそうだな。
ヤッキ この子におさめてもらわなければ、言ってしまいそうでしたか。
デライド ああ。そうですね。目的に向かわなければ意味がない。批判は不毛だ。
ヤッキ ええ。そこの方、批判と、感想の違いは、判りますか。
フレグリ 私ですか。そうですね。批判は、感想と違って分析を伴った意見である、でしょうか。
ヤッキ ええ、ですが、批判というと、否定的な印象も与えます。しかし人は、どの言葉が何を否定してることになるのか、案外気付きにくい。受け取った印象を口に出し合うより、組み立てる為の話し合いになると良いですね。
デライド これから他の者の所に行く私への助言ですか。
ヤッキ ええ。皆が皆気が長いわけでも話を聞く気があるわけでもない、それにここには村長が居ない。１人１人根気よくいかれるのが良いでしょう。
デライド 村長が居ない。
ヤッキ その前にご飯にしましょうか。どうぞこちらへ。
デライド ……ありがとう。
フレグリ 大臣、私が準備を手伝って来ますので、ごゆっくり。
ヤッキとフレグリープハケ
フー 頭の良い兵隊さんですね。
デライド ん。
フー 多分、お父さんは批判を否定の言葉として聞き出したかったんだと思います。でも、あの人は。
デライド 私の付き添いだ。私を立てるために行儀の良い事を言ったんだろう。
フー 頭が良くて、優しいんですね。
デライド ああ、そうだな。良い部下が居るというのにな。
デライドとフーハケ、スリンレジー入り
(１７駒) スリンＶＳレジー、歯は磨いた
レジー スリンさん。
スリン ちょっと急に話しかけないでよ。
レジー 何してるんですか。
スリン 別に何もしてませんよ。
レジー 聞き耳立てて何してるんですか。
スリン ……最初からそう言えば良いじゃん。レジーさんは。何するの。
レジー 本当は皆さんに、うちの村の周辺の事についてお話して、この村の周辺の事を換わりに教えてもらおうかと思ってたのですが、昨日の様子では。
スリン ああ、悪いね。一昨日あいつらが来たからだ。レジーさんの村も、あいつらに話してみれば。私らはタイミングが悪かったから概ね良く思ってないけど、自分らから行ったらあいつら喜んで歓迎してくれるだろ。どっちが先に町になるかな。
レジー いえ、皆さんの顔を見てたら、そんな事。
スリン じゃ見なきゃ良いじゃん。レジーさん自分の村に帰って私たちの顔見ないまま一週間ぐらい過ごしてたらその気になるでしょ。
レジー スリンさんは、私のこと名前で呼んでくれるんですね。
スリン 先生って呼ばれるの気持ちよくないんだろ。
レジー 私がそう言ったからですか。
ドミニオン入り
スリン ごめんなさい。ちょっと、気が立ってて。
レジー いえ、私も。自分の思うとおりにならなかったのを皆さんのせいにするような事。
ドミニオン 先生、今日もいらしてたんですね。今日はどうされます。
レジー いえ、今日はもうちょっとしたら帰ろうかと。
ドミニオン 今回は短いじゃないですか。三日しかいない。もうちょっと泊まっていって良いんですよ。
レジー ですが、あまり居てもお役に立てませんし。
ドミニオン 今は居てください。１人でも居なくなると、今はこの村は寂しくなります。
レジー まあ、皆さんに挨拶はしていくので、そういう事なら、気が変わって残るかもしれません。それでは。
ドミニオン ええ、是非、後でセイロンにも、会ってやってください。先生の村の話に救われる部分があるかもしれません。
レジーハケ
スリン 帰してやりゃ良いのに。姉さんにはあんたがついてやれば
ドミニオン スリン。どうしてあんなことを言った。
スリン 何が。
ドミニオン 先生の村に大臣達の話をする事だ。今みんながこんなに迷ってるのに話を広げるな。先生にはしばらく居てもらった方が良い。この村も明日あたりにはおよそ形は見えてくるだろう。
スリン そうやって形にこだわるのをやめたらいいんだ、ちゃんと自分で考えられるうちに。便利になるのは良い事じゃないか。思いっきりこの村にお金使わせて、姉さんに贅沢な暮らしをしてもらうのもアリだと思うけどね。
ドミニオン 俺たちの傷を抉るような事を。
スリン 埋め合わせだよ。それに、ここが町になったら、キャンディラースさんの事は良い所に置いてくれるんじゃないの。それが地位だか仕事だか知らないけど。
ドミニオン それは分からぬ事だろう。大臣達の様子はどうだった。
スリン ヤッキさんは大臣の邪魔もしなければ協力もしない、そんな所だね、今のところは。大臣はこれから話せる人に話しに行くんじゃない。
ドミニオン そうか。ありがとう。お前は本当に、この村の習わしに否定的だな。
スリン 皆で同じ事をして、昔からあるからと続けて、形ばかり。祈っても天気は変わらない、必要な言葉は人によって違う、信じる物は自分で見つけて決めたら良い。私からしたら無駄で邪魔な事だよ。祈りの習わしなんて。
ドミニオン それ、フーにも言えるのか。
スリン あいつは。ちゃんと考えてる。ような気がする。
ドミニオン いや、この質問は俺が悪かった。
スリン いいよ。
ドミニオン それじゃあな。
スリン ああ。あのさ。
ドミニオン なんだ。
スリン 今日、歯は磨いたか。
ドミニオン えっ、はっ、磨いた。いや、え、そんなに。
スリン 気分はさっぱりするもんか。
ドミニオン いや……さっぱり分からん
スリン はは、ほんと変な奴だよなあ。
スリンハケ
ドミニオン ええ、この距離で。いや、え、どの距離で。どの、どの時だ。ええ。
ドミニオンハケ
○ 二景Ｂ
(１８駒) バカルテット
セイロンとペンターズ入り
ペンター なんてったってこの村は飯が上手いこれに尽きるぜ！
グレープ そうだね！ 胃袋を捕まれたら逃げられない！ カエルもびっくりだね！
ペンター おういなんでカエルなんだグレープ！ もしかしてこんな状態でここほっぽり出して帰るなんて言うんじゃないだろうなあこのミスお茶目！
グレープ ミスターペンター知らないのカエルは胃袋を外に出しちゃうんだよ！ それをがしっと掴む！
ペンター ドッホゥイ！ えぐいの想像しちゃうじゃねえかやめようやい！
グレープ それも変なの食べたりしてお腹の調子がおかしい時にするんだよ！ 大胆だね！
ペンター やめろやめろ飯が変だなんて泊めて貰って言う事じゃないぜ！ やめろ！
グレープ やめる！
ペンター 沈黙！
グレープ 沈黙！
ペンター 沈黙！
グレープ 沈黙！
ペンター ぷっはああ沈黙は息が詰まるな耐えられないぜ！
セイロン 全部うるさい。
グレープ やったよペンター全部だって皆勤賞！ 天国のお父さんも浮かばれるね。
ペンター おいおい浮かれてんのは一体誰だよそれに俺の親父は地獄に落ちてるかもしれねえし第一死んでねえああ死んでねええ浮くには早い！
グレープ じゃあ今もどこかにいるんだね！ 大きい声出したらきっと聞こえるね！
ペンター ファーザァ！
グレープ ファーザァ！
セイロン うるさいって言ってんの！ 部屋ん中でやんないで！ 頭おかしいんじゃないのタイミング考えて！
グレープ おお元気になった！
ペンター そうだどんどん怒れ！
セイロン 目キラキラするとこじゃない！ もうわけがわからない！
グレープ でもねセイロン！ 声出したら元気になったでしょ！
ペンター そうだ！ 昨日もずっとふさぎ込んでたじゃねえか！ もったいないぜ 美人なのに！
グレープ 笑顔が一番！
セイロン 怒らせといて言う事。
ドミニオン ただいま。
ペンター おかえりドミー！
グレープ ようこそドミー！
セイロン ようこそは違うでしょドミーなんか言ってやって。
ドミニオン セイロン、元気になって良かった。
セイロン 怒ってるのよ。
ドミニオン そうだよな、俺たちは許しちゃいけない、断固戦わなきゃな。
セイロン ちょっと暴力は反対。
ドミニオン え。
ペンター ドドドドミーお前そんな奴だったのか！
グレープ うけうけうけ受けて立つよ！ 私はビンゴゲームで大体何かしら当たる女だよ！
ドミニオン 大変どうでもいいので静かにしてください。
ペンター 沈黙！
グレープ 沈黙！
ドミニオン セイロン、ずっと落ち込んでたから、安心したよ。
セイロン ええ、なんか、ごめんなさい。
ドミニオン この２人を泊めて良かった。
セイロン ええ、ペンターさんも、無事グレープさんに会えて良かった。この村に大臣達が来ないように頑張ってくれてたみたい。
ドミニオン 感謝しなきゃな。
セイロン なんていうか、こうやって生きれたら楽なのになって思う。
ペンター おいおい誰が楽してるって！
グレープ ペンターは空気椅子だってやれと言われたらやるよ！
ペンター うっそグレープ無茶が過ぎるぜ！
セイロン やれとは言ってないわ。
ペンター 俺はやるときはやる男なんだ！
グレープ ペンターの涙ぐましいこの姿勢！ これを見ても楽そうだと言えますか！
ドミニオン はい、生きるのが楽しそうだと思います。
セイロン ねえドミー、今日は外の空気を吸いに行きたい。
ドミニオン ああ、行こう。歩こう。
セイロン 私たちは、もっと怒っても良いのかもね。
ドミニオン うん。ペンター、グレープ。外に出るけど、どうする。
グレープ 出る！ ペンターもういいよ！
ペンター おう！ なんでこんな辛い事しなきゃいけないんだっけと思い始めてたところだったぜ！
セイロン ええ、本当にそう。
４人ハケ、アキノワとフレグリープ入り、ミゼッタ入り
(１９駒) ブラックコーヒー
アキノワ それじゃ、いってらっしゃい。
フレグリ ええ、ありがとうございます。
フレグリープハケ
ミゼッタ アキノワさん、今の。
アキノワ ミゼッタ。ええ、デライドさん達、今出て行ったとこ。１人１人説得して回るそうよ。
ミゼッタ 丁寧な人ですね。
アキノワ って言うとそう思うでしょ。あの人、最初はうちにだけ話したら済むと思ってたところを父さんに言われて気づいたんだから。
ミゼッタ もう、アキノワさん試したんですか。
アキノワ 視野を広げる為の特訓よ。
ミゼッタ また都合の良い。
アキノワ 外はもっと大変よ。人が増えればそれだけ色んな物が重なってくる。ルールも増えるし難しくなる。そうしたら、もう何を信じるとかそういう話じゃなくなってくる。
ミゼッタ 私は外には出ませんよ。この村に居て、この村を守っていきます。
アキノワ ミゼッタ。
ミゼッタ この村の人を守っていきます。
アキノワ うん。よろしい。
ミゼッタ ヤッキさん、なんて言ったんですか。
アキノワ そうね。もっと頑張って、って言ってたと思うわ。
ミゼッタ はあ。応援ですか。
アキノワ 元々あの人は排他的な人じゃないから、やり方に問題があると考えてるんじゃないかしら。
ミゼッタ そうなんですね。なんだかアキノワさん、夫婦なのにあんまり分かってないみたいな言い方ですね。
アキノワ 人の頭の中は分からないわ。
ミゼッタ あんなに長く一緒にそばに居て、こんなに頭も良いのに。
アキノワ ミゼッタ、分かったつもりになってはいけないの。他人を語るなんて、とても軽率なことよ。まず確かめる。信頼も交際も、人と人はすべてはそこから。
ミゼッタ つい、忘れちゃいそうですね。
アキノワ 私があの人の事で間違いなく語れる事と言ったら、お客さんの前では苦手なのにブラックコーヒーを飲んじゃう事ぐらいよ。
ミゼッタ それノロケですよー。じゃ、私もご飯頂いて良いですか。
アキノワ どうぞ。
ミゼッタ ありがとうございます。
ミゼッタハケ、エドロン入り
○ 二景Ｃ 想い
(２０駒) 魚をとる迷子
エドロン アキノワさん。
アキノワ あらエドロン。どうしたの。
エドロン ニールみたいに、川に入って魚を追いかけてみたんです。それがなかなか難しくて。あいつ、凄いですね。でも、そんなニールも、あの時は迷いに足が捉えられてた。いつも行動してから結果出して、なんでも後出しで強引に正解にしちゃうような奴が。
アキノワ 自分で、何かしたくなった。
エドロン そうかもしれません。しなくちゃいけないと思ったのかもしれません。僕たちぐらいの歳の人間は、都会に対して羨ましかったり憧れのような気持ちがありました。でもそしたら、都会は僕たちから大切な物を奪っていきます。与えるという大義名分に隠れて裏切るような
アキノワ 勝手に思いを寄せたのに裏切りなんて相手を悪にする事は言わない。
エドロン すみません。村が、村中が憤ってたので。
フー入り
フー お母さん、フライパン使っちゃったけど小さいお鍋どこ、エドロン、どうしたの。
アキノワ 男の子はね、誰かの為に熱くなる時が人生で一番輝いてるのよ。
フー ううんよくわかんないけどお母さんが適当な事言ってるっていうのは分かる。
エドロン またからかって。
アキノワ フー、そうやって分かったふりしないの。
フー いいよ分かったふりでも。違っても怒らないでしょ。それにエドロンが困ってる。
アキノワ さすがは我が娘ね。
エドロン フーは、デライドさん達の事、どう思う。
フー え、デライドさん。都会の人だなって思う。
エドロン そうじゃなくて、これからの事。どうするの。
フー うーん。皆がどうしたいか、知りたいなって。
エドロン フーは
アキノワ まあ焦って出す答えじゃないしねえ。
エドロン そんなに時間あるんですか。まずヤッキさんが止めてくれてたら。
アキノワ これから皆がデライドさんの考えを聞いて、考えて答えを出してそれが本人の耳に届いてあっちでまた幾つか手順を踏んでここに何かしら持ち込んでそれが浸透する、そこまででも結構時間がかかるわ。今はとにかく、逸らない事。誰かに流されない事。川に入って流れ方を覚えたわけじゃないでしょう。
エドロン ですが、みんなで続けてきた事が形を変えます。そうしたら、それらの中心にいたアキノワさん達は、フーは。祈りはどうなるんですか。
アキノワ 例え陰に隠れても、消えなければ
フー 祷りは、形じゃないと思う。
アキノワ フー。
フー こうしたらこうなるとか、そういう決まり事じゃない。人が沢山いるから、集まった時にみんながだいたい自然と感じる事に、気付いた、そう、気付きの塊みたいな物。夜おやすみって言う、夜は安らかなもの、癒しのもの、良いものであってほしいっていう、おんなじ気持ち。好きな人の前に出る時に、息をすーっと吸っちゃうような、そういうみんながやっちゃうもの。意味はないけど、おまじないみたいな、安心や勇気をくれるもの。祈りは、形が変わっても平気。だって決まっていることなんて何もない。だから、大丈夫だよ。ありがとう。
エドロン そっか。アキノワさん、僕が心配しすぎてました。すみません。
アキノワ いいえ。
フー どこいくの。
エドロン いつものとこ。
アキノワ また魚をとるの。
フー 魚をとってたの。
エドロン いや、とれなかったんだ。
フー とってないじゃない。
アキノワ そこはとったって言うのよ。
エドロン 嘘言わせるんですか。
アキノワ 男は見栄を張って生きるのよ。
フー お母さん、人それぞれよ。
エドロン 僕はそういうのいいので。
エドロンハケ
アキノワ 全く、あら、フー。ミゼッタは。
フー あ。
アキノワ １人で食べさせてるのね。話相手が居ないなんて。
フー 子供じゃないんだから、ご飯ぐらい一人で。
アキノワ スリンみたいな事言わない。
フー あ。
アキノワハケ、スリン入り。
(２１駒) フーとスリン
スリン おお、フー。
フー スリン。
スリン どした、外出て。
フー さっきまでお母さんと話してたから。
スリン そうか。おまえんとこはどうすんだ。大臣きてたんだろ。
フー うん、特に抵抗はしない。
スリン そっか。
フー 私もそう。
スリン まあ、お前はそうだろうな。変わっても変わらなそうだ。
フー どういう意味。
スリン 頑固なんだけど頑固じゃないし、マイペースだけどマイペースじゃないし、フーはフー出し。
フー よくわかんないよ。
スリン そう、よくわかんないんだよ。
フー なにそれ。スリンは。
スリン 私もなんでもいいよ。
フー 私はなんでもよくないよ。
スリン 何かあったらその度にちゃんと考えるだろ。大体のやつは、どうでもいいことにこだわるからなあ。
フー こだわり。
スリン ほら、ならわしとかいう、形。
フー 形かあ。形じゃないんだよねえ。
スリン だろ。祈りに頼りっきりなんだよ。
フー いや、祈りが形じゃないんだよ。
スリン ああ。
フー うーん、スリンは、結婚式で騒いだりする。
スリン するわけないだろ。
フー でしょ。なんで。
スリン なんでって。なんでだろう。
フー 騒いだら台無しになるじゃない。台無しにしたら気の毒でしょ。だからやらないんじゃない。
スリン ああ、確かにな。
フー 祈りって、色々あると思うけど、そういう、誰かの為にすることなんじゃないかな。昔からやってることを続けるのも、昔の人の残した結果を大切にしたいって事だと思う。雨を降らせたり、病気を治したりする物じゃなくて、何かを大事に想えるようになる、自然とやっちゃうもの。笑顔で過ごしてたらね、目の前の物全部大切に想える。
スリン 聖人かよ。
フー 大人って意味。
スリン その成人じゃない。ばか。すごくばか。なあいい匂いすんだけど。
フー ご飯食べてたから、何か作る。
スリン ちょろっとつまむぐらいのが欲しいな。
２人ハケ
○ 二景Ｄ 緩和
エドロン入り、ニール入り
(２２駒) 魚はとってない
エドロン ニール。
ニール お、やっぱりここか。
エドロン 川の番が僕の仕事だから。
ニール 楽か。
エドロン 楽でつまらないよ。
ニール そうだな。
エドロン ぼーっと眺めてるだけ。それに稼げない。生きられるだろうってぐらいしか貰えない。
ニール 隣いいか。
エドロン なんでそんな確認するの。
ニール え、なんで。
エドロン いつもはどかっと座ってくるじゃん。
ニール ああ、そうだなあ。
エドロン 別にいいけど。
ニール 良いのかよ。
エドロン ダメって言われたいの。
ニール ダメっていうのか。
エドロン 言わないけど。
ニール じゃあ良いじゃん。
エドロン だから隣来てって。
ニール いやもう居るけど。えっなにエドロンから見て俺は目の前に居たの。隣にいたのにエドロンはずっとここに居るであろう俺に話しかけてたの。
エドロン 立つの座るの。
ニール アッハイ、座ります。
エドロン これから、ニールはどうするの。
ニール なんで俺に聞くんだよ。
エドロン だって、ニールなら絶対大臣に喧嘩売るんだろうなって思ったから。
ニール ああ。
エドロン ニールが何考えてるか、気になったんだ。それで、魚とってた。
ニール え、魚。お前が。
エドロン うん、僕が魚とってた。
ニール え、俺が喧嘩売らなかったらお前が魚をとるの。え、俺大臣喧嘩売らないお前魚とる。セイロン達の結婚式が邪魔されてヤッキさんが
エドロン いいから座って。
ニール アッハイ。
エドロン セイロンから絡めてくるって結構前の段階からやり始めたね。それ長くなるパターンだよ。喧嘩売るところからでいいから。
ニール いや売ってないんだけどな。
エドロン そういえばそうだね、僕も魚とってないし。
ニール え、とってないの。それとってたって言わなくない。一匹でもとったのか。
エドロン いや。おいかけただけ。
ニール じゃあ魚とってないって言えよ。俺が大臣に喧嘩売らないからお前が魚とってないどういう事だよ。お前の普段、どういうことだよ。
レジー入り
エドロン あ、先生。
レジー レジーで良いですよ。
ニール 先生どしたんだ、帰っちゃうのか。
レジー あの。
エドロン ああ、すみません、僕たち癖で先生って言っちゃって。
レジー いえ良いんです。
エドロン レジーさんすみません、昨日も全然お相手出来なくて。
レジー それどころじゃないでしょうから。
エドロン これからお帰りですか。
レジー ええ、いや、どうしようか悩んではいるんです。このまま帰るのもなんだか後ろ髪をひかれるようで。
ニール 何かするんですか。
レジー 私なんかに出来ることがあれば。
ニール そうですか。
レジー お隣、良いですか。
エドロン 良いですよ。
レジー 言葉って大事ですね。
ニール どうしたんですか。
レジー いや、先程スリンさんに会いまして、はっきり言う方ですから、考えさせられましたよ。言葉には責任をもたなければいけませんね。
ニール そうですね、とったとかとらないとか。
レジー 何の話ですか。
エドロン 魚の話です。
ドミニオン入り、ペンター入り
ペンター よおっしゃ川だあ川に着いたぞ先に着いたのは俺だから俺の勝ちだなドミー！
ドミニオン なんで全力で走るんだ競争じゃないんだぞ。ああエドロンニールに先生も。ここに居たか。
ペンター おうチェックポイントはクリアってわけだそれじゃあ次に行くぜ次ってどこだこの村のどこかだなあドミー！
ドミニオン 何を言ってるんだ。
ペンター 俺が先に着いたから俺が先に出発する権利があるのさあアンダスタン！
ドミニオン ちょっと待って。
ペンターハケ
レジー こわい。
エドロン 大変そうですね。
ドミニオン ああもう。
ペンター入り
ペンター どうしたドミーまさかもう走れないなんて言うんじゃないだろうなあ！
ドミニオン 何の為に来たんだ。皆を探してたんだからどこかに言っちゃいけないだろうというか一人でどこかに行くと僕が大変だからここに居てくれ。
カモノハシ入り
カモノハシ ん、こんなところに集まって何をしてるんだ。魚でもとってるのか。
エドロン あなたにとれるんですか。
ニール とれるもんならとってみろ。
カモノハシ そんな事わざわざする必要はない。お前たちが食べる物だろう、自分たちでとってろ。
エドロン いやとってないんですよ。
カモノハシ じゃあ初めにとってないって言えばいいだろ。
ニール いや俺はとってるよ。
カモノハシ どこにその魚があるんだ。
ニール いや今はとってねえよ。
カモノハシ なんなんだお前達は。
ガビラ入り
ガビラ 隊長、ここに居ましたか。本部から連絡がありました。
カモノハシ 誰からだ。
ガビラ それが。
カモノハシ、ガビラハケ
全員ハケ
○ 二景Ｅ 過去
（２３駒） セイロン
セイロングレープ入り
セイロン いるかな。
グレープ 呼べば良いんだよね！ ガシーフェースさーん！ ヤッキガシーフェースさーん！ 神様みたいな。
フー入り、ヤッキ、アキノワ、ミゼッタ、スリン入り
フー 近所迷惑だよ。
グレープ フー！ 元気！？
セイロン やめなさい。
ヤッキ やあグレープさん。セイロン、調子は、どうかな。
アキノワ どうしたの。
セイロン ヤッキさん、どうするんですか。村の事。
ヤッキ どうする、とは。
セイロン あの人たちの事、受け入れるんですか。
スリン 姉さん。
ヤッキ ああ。様子を見ようかと。
セイロン すぐに追い出すべきよ。ちゃんと権利を主張すれば村を好きなようには出来ないはず。
アキノワ 私たちは向こうの全てをちゃんと知ってるわけじゃないわ。大きさも手段も、人のまとめ方も使い方も。今日や明日を凌げたとしても、そのうち必ず影響は及んでくる。
セイロン だからってこの村が守ってきたものを諦めるんですか。
スリン 村が守ってきたもの。
ヤッキ セイロン、こちらも都合の良いように外の物を取り入れて使ってきたのは事実なんだ。大丈夫、少し変わる私たちの生活は失われやしないさ。
セイロン なんでそう言い切れるの。本で読んだわ、近代化でこういう村が弊害をうけたりなくなったりするの。高い建物や煙の出続ける工場っていう施設が森や川を汚したり外から来た人間の価値観にならわないと生きづらくなる。そんな村になるの。
ミゼッタ それは、ちゃんと話し合えば。
セイロン 話を聞いてくれるの。
フー セイロンさんは、あの人たちとお話ししました。
セイロン 家。
ヤッキ 彼らも人間だ。話してみると案外分かり合える。それに、大切なのは村ではない。ここに住む、住んでいた人そのものだよ。土地に捉われずそれぞれの幸せを掴める手段が増えるなら、良いんじゃないかと思う。なあスリン。
スリン なんで私に。ヤッキさんは自分の生きる場所を変えないんでしょ。
ヤッキ ああ、生き方も変わらない。誰かが始め、今まで続けてきたものがあるからね。
スリン 私は皆にこそ。
セイロン 言いたい事は分かったわ。お邪魔してごめんなさい。
アキノワ いいえ。たくさん考えてくれて嬉しいわ。ほら、皆中に戻りましょう。
フー、アキノワ、ミゼッタ、ヤッキハケ
スリン 姉さん、誰も変わらないんだ。皆、自分が何かを捧げる事ばかり。犠牲になることばかり。自分で幸せになったら良いのに。
セイロン スリン。あなたは、自由ね。
スリン 自由なもんか。私は、誰の事も変えられない。
（２４駒） デライド
デライド、フレグリープ入り
デライド ああ、居た。留守だったので探しました。
セイロン 私を。
デライド ええ、あなたに一番迷惑をかけたので、あなたとは話さなければと思い。
スリン じゃあ一番最初に来たら良いのに。
デライド その通りですね。
セイロン それで、私と何を話すんですか。都会の人が、ここを壊していく人が私たちの何を分かってくれるんですか。
デライド ……先に戻っていてくれるか。
フレグリ はい。
フレグリープハケ
スリン 私もどっか行こうか。
デライド いや、君は良い。
セイロン 兵隊さんには内緒の話。
デライド 内緒というわけでもないのだが。別に聞かせても仕方ないので。お二人は、ここで生まれてここで育ちましたか。
スリン 当たり前だろ。
セイロン 馬鹿にするの。
デライド いえ。私自身もそう、というわけではありませんが、私も純粋な王国民と言うには些か特殊でして。私が生まれるより前、父がまだ幼い頃、祖父の代ですが、私の家は、こういう郊外に繁栄していた豪族でした。貴方たちと同じような生活をしていたのですね。祖父達の村はここよりも都会に近かったので、大陸中の文明が発展していく中で吸収されていきました。その村の中でも、祖父は元々支配力のある家だったので、国の中でも役職を貰えました。祖父は役人でしたが、父はそこから軍に入り隊長に。私も家のお蔭と自分の力でここまできました。
セイロン 自慢。
デライド わかりませんか。あなたたちの生活は、保障されうるんです。当たり前です、協力してくれるのですから。なんでもかんでも壊すわけにはいきませんからね。
セイロン だからって。
デライド 特にあなたには、大切な式を台無しにしてしまったので、何か埋め合わせを考えねばと思っておりました。それでは。
デライドハケ
セイロン ドミー。
セイロンハケ
スリン あっ、姉さん待って。
スリンハケ
○ 三景Ａ クライマックス
（２８駒） 結婚式
村人入り
ヤッキ これより、エドロンとフーの結婚の儀を執り行う。二人とも、真ん中へ。
汝に問う 萎むな、浮かべ。
汝に問う 抜くな、詰めろ。
汝に問う 沈むな、膨らめ。
汝に問う 空くな、満ちろ。
汝に問う 引くな、迫れ。
汝に問う 認めるな、許せ。
汝に問う 傾くな、保て。
汝に問う 逸れるな、悲しめ。
汝に問う 進むな、拾え。
汝に問う 泣くな、渡せ。
汝に問う 残すな、忘れろ。
愛するまま。
惑い辿るな、確と踏みしめろ。
生きるな、鳴り止ます燃えろ。
倒れず死ね、失い尊べ。
独りの幸せをただ積むな、救いの上にだけ旗を立てろ。
ヤッキ 汝に問う。
ヤキアキ 汝に問う。
全員 汝に問う。
ヤッキ 二人、幸せに暮らす事を、誓いますか。
エドロン 誓います。
フー 誓います。
ヤッキ さあ、行こう。
フーとスリンと祷りの倣わし より（脚本抜粋公開）
脚本抜粋掲載なので飛び飛びですがシーンとしてお楽しみください。
役者へのリクエストは脚本記載の(○駒)の駒数でリクエストください。
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