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[2023/02/08] ドロパディ戦記(太田りべか)

~『よりどりインドネシア』第135号(2023年2月8日発行)所収~

なぜこんなに長い話になってしまったのだろう? 930ページの大長編である。中ジャワ州スマラン在住の作家トリヤント・トリウィクロモ(Triyanto Triwikromo)のPertempuran Lain Dropadi(『ドロパディのもうひとつの闘い』)は、『マハーバーラタ』のクライマックスをなすパンダワ五兄弟とコラワ一族との間の大戦とその前後を、パンダワ兄弟の妻ドロパディの立場から語り直す物語だ。

ドロパディの立場からとはいえ、ドロパディの一人称で物語が進行するわけではない。女神サラスヴァティが語り手となり、ドロパディを二人称「おまえ」で呼びながらその軌跡をたどっていく。

930ページのうちの大半を戦闘の描写が占める。パンダワ対コラワの大戦だけでなく、ドロパディとさまざまな敵との戦闘が執拗に繰り出される。数え切れないほどの首が飛び、頭が棍棒で粉砕され、目玉が剣で抉り取られる。タイトルが『ドロパディのもうひとつの闘い』なので、そうなってしまって当然なのかもしれないが、この大作を読み通すにはかなりの忍耐を要する。ここまで長くする必要はなかったのでは、という疑問が始終頭にちらつく。

Pertempuran Lain Dropadi

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