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[2023/01/22] インドネシアでの中国正月をおさらいする(松井和久)

~『よりどりインドネシア』第134号(2023年1月22日発行)所収~

2023年1月22日はイムレック(中国正月=春節)で国民の祝日です。インドネシア政府は、翌23日も政令指定休日(Cuti Bersama)に指定しました。

ちなみに、この政令指定休日というのは、政府職員及び国営企業・公営企業職員を対象とする特別休日で、彼らの有給休暇日数には含まれません。でも、それら以外の民間企業社員などは、その日に休暇を取るかどうかは選択的で、通常、休暇を取った場合には有給休暇日数から差し引かれることになるようです。

この中国正月ですが、筆者が1990年代のスハルト時代にジャカルタやマカッサルに住んでいたときには、今のように盛大に祝った記憶がありません。祝日でもなく、特別なものは何もない普通の日でした。ああ、中国正月だったのね、と後で気がつく程度の日でした。

そのため、筆者からすると、中国正月が国民の祝日になり、大売出しのショッピングモールが赤一緒に染まり、売り子や警備員が中国風の服装で対応し、バロンサイと呼ばれる獅子舞が飛び跳ねて踊り、中国寺院には参拝者が押しかけて大賑わい、という現在の状況に、今でもやや戸惑いを感じてしまいます。

今年の中国正月の飾りつけを施したジャカルタのショッピングモール
(出所)https://akurat.co/pusat-perbelanjaan-di-jakarta-sambut-perayaan-imlek-2023

ちなみに、スハルト時代は見かけなかったのに今盛り上がっているものは、中国正月のほかにも、年明けの花火(爆竹は1971年の死傷事故以来禁止された。爆竹や花火の使用には本来、警察の許可が必要)、2月14日のバレンタインデー(1991年時点ではキリスト教徒の男性が女性にそっと花を送る日だった)なども挙げられます。クリスマスも、キリスト教徒以外は別に祝っていませんでした。今の様子を見れば、この20年余の間で、インドネシアでいかに商業主義が強まったかを実感せざるを得ません。

いったい、どうしてスハルト時代には中国正月を全く祝わなかったのでしょうか。中国正月はいつから国民の祝日になったのでしょうか。中国正月を祝日にした背景には何があったのでしょうか。華人のイスラーム教徒は中国正月を祝うのでしょうか。イスラーム教徒は中国正月のお祝いの言葉を述べてもいいのでしょうか。

これらの疑問に対する答えは、すでに既知のものばかりですが、今回は、おさらいの意味でまとめてみようと思います。

ひとつ言えることは、歴史的なインドネシアと中国との関係が大きな影響を与えてきた、ということです。今でこそ、中国はインドネシアにとって最大の貿易相手国ですが、かつて国交断絶状態の時代が長く続きました。インドネシアと中国の関係は、今もなかなか微妙な関係にあるのです。


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