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地域スポーツの本丸を担う「掛川市体育協会」

以前、「体育協会ってそもそも何なの?」という記事を書き、7,500件以上PVをいただきました(僕のnoteでダントツです)。

我々に一番近い立ち位置である地方自治体単位の体育協会(スポーツ協会)は、スポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブなどの管理を担いながら、国と各都道府県体育協会および地域競技団体を繋ぐ、地域生涯スポーツの本丸的な役割を担っています。上の記事では、そのモデルケースとして「掛川市体育協会」をピックアップしました。

体育協会が発足してから110年。その存在意義が問われている現在に理想的な活動をしている「掛川市体育協会」について、事業や組織体制を探ってみたいと思います。

スポーツによるまちづくり

まず最初に、掛川市体育協会会長挨拶としてこう書かれています。

今後も「スポーツによるまちづくり」を目指し、市スポーツ行政とともに歩みを強化する所存です。

「まちにスポーツ環境を整備する(町にスポーツを落とし込む)」のと「スポーツでまちをつくる」は、視点がそもそも違います。今でこそ後者は少しずつ増えていますが、それ以前に「まちをつくる」のは行政の範疇であって、体育協会(スポーツ協会)がこの文脈を語るのは珍しいのではないかと思います。それだけ「市スポーツ行政とともに歩めている」理想的な形なのではないでしょうか。

ついでに、掛川市自体についても調べてみました。

まず、「生涯学習都市宣言」をしており、「個人の学びを自己の充実のみならず、まちづくりに生かしていこう」と記載があります。個人の生涯学習を「まちづくり」に生かすという発想も珍しいなと思いました。

また、「第2期掛川市地域創生総合戦略」の重点プロジェクト1-1-1に「文化芸術・スポーツ事業の充実」があり、「スポーツを始めるきっかけづくり等のために、参加しやすい環境づくりや組織の育成を進め、スポーツに関するイベント等を企画し、参加機会の拡大を図ります。」と明記されています。

掛川市自体が「生涯学習をまちづくりに生かす」という視点をもっており、そのひとつとしてスポーツが重点プロジェクトになっているようです。

事業方針・中期構想

掛川市体育協会の事業方針には以下のような大方針が記されています。

掛川・大家族構想とは掛川体協の地域貢献活動で、地域住民が掛川の同じ仲間として生涯スポーツ推進と、競技力向上、健康づくりやものづくり、そして「元気なまちづくり」を支援する活動です。

ここでも「まちづくり」が明記されており、その一貫性が垣間見えます。では、スポーツでまちづくりをするために具体的に何をしているのか、「第3次中期構想」の1~5から読み解いてみたいと思います。

1、地域住民との絆と融和で「スポーツと健康の満足度向上」を図る
2、体協加盟団体との絆と融和で「生涯スポーツ推進と競技力向上」を図る

1・2の詳細(HP参照)では、市民・行政・企業・スポーツ関係団体で連携することにより、地域住民のスポーツ環境を整えること(まちづくり)が記されています。地域のスポーツ環境整備をするためにその中心に立ち交通整理をすることは、まさに全国各地で求められていることです。

ただ、これを言うだけではなく実行している、そして実行できる組織や事業体制を整えているのが掛川市体育協会の特徴だと思います。以降、3~5でその具体がみえてきます。

3、掛川市体協・ミズノ・鹿島建物との絆と融和で「指定管理業務の充実」を図る

他の多くの地域スポーツ団体でも大きな収益源となっているのが「指定管理」です。市の体育施設の運営管理委託を受け、市から収益を得るものです。

掛川市体育協会では「業務平準化によりサービス向上を図る」「常にコスト感覚を意識し経費削減に取組み、民間企業に勝る安定的な施設経営に努める」など、明確な方針をもってその制度を活用しており、ただ管理するだけではなくその質の向上に努めています。

多くのスポーツ施設を管理されていますが、なかでも「さんりーな」でのパスポート制度・利用者拡大に力を入れているようです。
※掛川市体育協会事業の随所にみられるキャラクターも、個人的にはとてもおもしろくていいなと思っています。

4、積極的な自主事業により、「地域貢献活動の充実」を図る

この「積極的な自主事業」が掛川市体育協会の大きな特徴です。

自主事業の1つ目が「掛スポ」。これは、地域住民のスポーツ参加率向上を目指した総合型地域スポーツクラブです。体育協会で総合型地域スポーツクラブを自主事業として実施しているケースは珍しいのではないでしょうか。そして、プログラムの数も充実しており、北地区と南地区で分かれて開催されています。これらは、地域のスポーツ環境を整備する上で、とても重要なことですね。
※ここでも、ポップなデザインやキャラクターが。親しみやすくていいなと思います。

2つ目として「掛ツアー」。これが一番びっくりしました。「スポーツ合宿や大会イベント等の誘致を行うことで地域経済発展を実現する」として、体育協会で旅行業を実施しているのです。また、8,000人という、地方では大規模なマラソン「掛川新茶マラソン」の事務局すら担っています。

地域住民のスポーツ環境を整えるだけではなく、経済発展のためにスポーツを活用する事業も実施しており、「スポーツのまちづくり」を体現していると言えます。

※昨年度まで「掛ツアー」専用サイトがありましたが、4月1日から「掛スポ」に統合(リニューアル中)となっています。コロナ禍の影響かと思いますが、このリニューアルにも注目したいと思います。

その他にも、「まちづくり協議会との協働事業、介護予防事業、特定保健指導等の委託事業を充実」「プロショップ販売の充実により、利用者や地域住民に喜ばれる商品展開」など、スポーツを活用した自主事業ビジネスプランを常に模索しています。これらすべてが、中長期構想最後の5番目に集約されます。

5、経営体質の強化を図り、「さらに自立した体育協会」を目指す

組織体制

これだけ多くの事業を実施している組織はどうなっているのでしょうか。

公式HPからは確認できませんでしたが、求人サイトからの情報を見ると、常勤で86人!となっています。常勤の範疇がわかりませんが、それでも、寺宝自治体レベルの体育協会としては段違いに多い印象です。

組織図をみてみます。「事務局」「総務課」と組織が明確に分かれており、ここからも組織の充実度が伺えます。施設面では、「さんりーな」「し~すぽ」と2つの軸になる体育施設が単独の課として存在し、おそらくその他施設の管理として「施設マネジメント課」が存在します。最後に、掛スポ・掛ツアーなどを担う「スポーツプロモーション課」があります。

「スポーツプロモーション」がめちゃくちゃかっこいいですし、業務や事業にわけてこれだけの組織を編成できることもまた、地方の体育協会では段違いです。

まとめ

今回は、掛川市体育協会が「スポーツのまちづくり」を推進するために一体どんなことをどんな組織で実施しているのか、について、表面的にリサーチしてみました。

体育協会(スポーツ協会)の一番の目的は、地域住民のスポーツ環境整備をすることであることは間違いないかと思います。ただ、多くの体育協会ふくむ地域公共スポーツ団体は、収益を多く確保することができないがために、人材も多く登用することができず、事業も小さくなり、結果、一番大切なスポーツ環境整備も中途半端になってしまいます。

そんななかで掛川市体育協会は、スポーツ環境整備だけではなく旅行業やイベントも既に確立されたものがあり、それ以外にも常に新規事業を模索されています。それら新規事業には、それぞれの直接的な目的もありますが、体育協会としての収益源を確保することにもつながっています。

もうひとつ、これだけ成果をあげている要因として、「動きがまとまっている」ということが挙げられると思います。掛川市内でスポーツ環境整備をする組織が乱立することなく、掛川市体育協会に一本化されており、行政とも方向性や動きを一致させています。

ビジネスの世界では当たり前であるこれらの動き(「さらに自立した体育協会」)が、全国各地の地域公共スポーツ組織に落ちていけばいいなと思っています。

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