スポーツ推進委員ってそもそも何なの?

2021年に音声配信コンテンツでお話した内容をまとめた記事となります。配信の際には、総合型地域スポーツクラブで活躍されている上杉さんにご協力いただきました。
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歴史

1957年に文部省からの職務命令として「体育指導委員制度」が発足。前回の「体育協会」でも記載した通り、日本では戦後から徐々に「生涯スポーツ」軸が強くなってきました。その流れのひとつだったのではないかと思います。

1960年には全国組織の「全国体育指導委員協議会」が結成され、1961年にはスポーツ振興法により、市区町村教育委員会任命の体育指導委員として法的に位置づけられました。

体育指導員は非常勤の公務員として地域でスポーツの指導にあたります。それまでスポーツ指導はボランティアでしたが、この制度により立場が確立され、責任をもってスポーツ振興にあたる環境が整えられました。

2008年、都道府県のスポーツ推進委員協議会は必ずしも教育委員会に限定されないこととなり、2011年に改訂された「スポーツ基本法」では「スポーツ推進委員」への名称変更。これにより、新たに連絡調整等の職務が加わりました。

2020年時点で全国に49,750人のスポーツ推進委員がおりますが、人数のピークは1999年の62,098人。そこから減り続けています。

役割

スポーツ推進委員は、スポーツ基本法により以下のように定められています。

・市町村におけるスポーツの推進に係る体制の整備を図るため、スポーツ推進委員を委嘱する
・スポーツの推進のための事業の実施に係る連絡調整並びに住民に対するスポーツの実技の指導行う
・スポーツ推進委員は、非常勤とする

「スポーツの推進」とありますが、特定の競技種目を盛んにする指導者というよりも、広く幼児から高齢者までを対象とし、スポーツに対するさまざまな要望を行政に反映することが重要視されています。そのため、総合型地域スポーツクラブと連携、もしくは兼ね備えたり、スポーツ振興事業計画を練る補助をすることもあります。

現在、年齢は50代後半が一番多く、会社員や自営業者・教員・教員経験者などが多いです。

<非常勤職員>
専門知識を持ちフルタイムではなく副業も認められていることが多い特別職の地方公務員。

組織

全国組織は「公益社団法人全国スポーツ推進委員連合」です。ここでは、日本のスポーツ推進委員を統括する組織として、推進委員の資質向上や機関誌の発行、他スポーツ団体との連携などを実施しております。

都道府県レベルの事務については、 37 都道府県において都道府県職員が行っています。都道府県職員以外が担っている例として、非常勤職員での組織、市職員、総合型クラブ、などがあります。研修会や初任者研修会の実施は義務化されておらず、全ての都道府県で実施されているわけではありません。

市区町村からスポーツ推進委員に委嘱している活動としては、スポーツ実技指導が最も多く、次いで事業の企画立案・運営連絡調整と続きます。また、総合型地域スポーツクラブの創設や運営に参画している方も多いです。

課題としては、引き受けてくれる人が減っている、認知度が低い、資質向上の機会が十分でない、などが挙げられています。

<公益社団・財団法人>
一般社団・財団法人のうち、民間有識者からなる第三者委員会による公益性の審査を経て、行政庁から公益認定を受けた法人。活動費全体の50%以上を公益目的事業が占めることが公益認定を受ける上で必要な要件。

<社団法人>
一定の目的のもとに結合した「人」から成り立ち、団体として組織や意思などをもって、1つの社会的存在として行動する組織のこと。

<財団法人>
一定の目的のもとに拠出された「財産」の集まりであって、公益を目的として管理運営されている組織のこと。財産の運用を目的とする法人。

まとめ

スポーツ推進委員は、地域のスポーツ振興を目的として行政主導で創られた非常勤公務員としての「体育指導員制度」でしたが、近年は指導だけではなく「連絡調整」の責務も強くなっています。

ただ、担い手が減っていることや、質の向上が難しくなっていること、地域によって活用方法やレベルが異なっていることなどの課題もあります。

「地域の生涯スポーツ普及」を、ボランティアではなく非常勤の公務員として責任と対価を受けながら推進する役割として、今一度見直す機会になっているかもしれません。

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