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ページをめくって考えたこと

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書評、というほどきっちりした体裁は取っていませんが、本を読んで、一応かみ砕いて考えたことを文章にしています。
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#京都

【書評】銭湯文学を読む:「不動明王の憂鬱」(北森鴻)

銭湯の出てくる映画や小説など、気の向いたときにぼちぼち紹介していきます。 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥ 2010年に夭折したミステリ作家、北森鴻氏。代表作の一つが、京都・嵐山の古刹、大悲閣千光寺(だいひかくせんこうじ)に勤める寺男の有馬次郎が探偵役として活躍する連作短編集「裏(マイナー)京都ミステリー」だ。 なお千光寺は嵐山に実在する由緒正しい寺で、松尾芭蕉によって「花の山 二町のぼれば 大非閣」という句にも歌われている。筆者も昨年聖地巡礼とし

【書評】京都に行きたくなる短編3選

※2/4 画像を追加。 昨年の後半は仕事で毎週のように京都に行っていたため、読む本もおのずと京都を舞台にしたものが多かった。そんな中から、読むだけで京都に行きたくなる短編を紹介します。 =============== ①有栖川有栖「除夜を歩く」良い素材に良い調理だけで、小説はじつに面白い。 遡ること30年前以上前、1988年の大晦日の京都を舞台にした短編。 ハッキリ言ってしまえば、本作は実にゆるい。 京都市の今出川にある架空の大学「英都大学」(作者の出身校の同志社

【書評】読み返したくなる3冊の本

■ はじめに昨年、転職してから仕事に関係しない本をあまり読まなく(読めなく)なったけれど、仕事やキャリアに関係しなさそうな、いわば「遊び」の本が逆に印象に残ることが多くなりました。 近ごろ外出自粛で家にいる時間が圧倒的に増え、図書館も閉まってしまったので、家にある本を読み返したのですが、その中で特に読み返したくなる味わいのある本たちを紹介します。 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥ ① 堀江敏幸「雪沼とその周辺」新潮社、2003架空の町「雪沼」に住む