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ページをめくって考えたこと

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書評、というほどきっちりした体裁は取っていませんが、本を読んで、一応かみ砕いて考えたことを文章にしています。
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#森見登美彦

【書評】世界の果てを目指す物語(森見登美彦・「ペンギン・ハイウェイ」)

※森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」(角川書店・2010年)の書評です。 ==================== これは、世界の果てを目指す物語だ。 日本SF大賞の本作だが、読んだ人は、果たしてSFなのかと首を傾げることだろう。そもそもSFに疎い私でも、異色の作品であることは理解できる。 主人公アオヤマ君の住む郊外の街に突如現れたペンギン。何も食べなくても平気、車にはねられても無傷、街を離れると消えてしまうなど、どうやら普通の動物ではないらしい。 そして時を同じく

【書評】京都に行きたくなる短編3選

※2/4 画像を追加。 昨年の後半は仕事で毎週のように京都に行っていたため、読む本もおのずと京都を舞台にしたものが多かった。そんな中から、読むだけで京都に行きたくなる短編を紹介します。 =============== ①有栖川有栖「除夜を歩く」良い素材に良い調理だけで、小説はじつに面白い。 遡ること30年前以上前、1988年の大晦日の京都を舞台にした短編。 ハッキリ言ってしまえば、本作は実にゆるい。 京都市の今出川にある架空の大学「英都大学」(作者の出身校の同志社