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ページをめくって考えたこと

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書評、というほどきっちりした体裁は取っていませんが、本を読んで、一応かみ砕いて考えたことを文章にしています。
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#書評note

【書評】ダン・シモンズ「カーリーの歌」(1985):ホラーの枠を超えて社会の原理を問いかける佳作

■ はじめにダン・シモンズの「カーリーの歌」(原題:Song of Kali)。1985年に発表され、世界的に権威ある「世界幻想文学大賞」を勝ち取った作品だ。 あえてこの本について書く理由は以下の通り。 ①単なる娯楽小説の垣根を超えたテーマに挑んでいるという点、 ②そして作者が挑むテーマはまさに今考えられるべき話題である点 シモンズは「ハイペリオン」シリーズなどで知られる、米国を代表するSF作家だ。いわゆる重厚長大型の本格作品を書く人だと思って敬遠していたのだが、作家の風