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ページをめくって考えたこと

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書評、というほどきっちりした体裁は取っていませんが、本を読んで、一応かみ砕いて考えたことを文章にしています。
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#読書感想文

【書評】銭湯文学を読む:「不動明王の憂鬱」(北森鴻)

銭湯の出てくる映画や小説など、気の向いたときにぼちぼち紹介していきます。 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥ 2010年に夭折したミステリ作家、北森鴻氏。代表作の一つが、京都・嵐山の古刹、大悲閣千光寺(だいひかくせんこうじ)に勤める寺男の有馬次郎が探偵役として活躍する連作短編集「裏(マイナー)京都ミステリー」だ。 なお千光寺は嵐山に実在する由緒正しい寺で、松尾芭蕉によって「花の山 二町のぼれば 大非閣」という句にも歌われている。筆者も昨年聖地巡礼とし

【書評】ダン・シモンズ「カーリーの歌」(1985):ホラーの枠を超えて社会の原理を問いかける佳作

■ はじめにダン・シモンズの「カーリーの歌」(原題:Song of Kali)。1985年に発表され、世界的に権威ある「世界幻想文学大賞」を勝ち取った作品だ。 あえてこの本について書く理由は以下の通り。 ①単なる娯楽小説の垣根を超えたテーマに挑んでいるという点、 ②そして作者が挑むテーマはまさに今考えられるべき話題である点 シモンズは「ハイペリオン」シリーズなどで知られる、米国を代表するSF作家だ。いわゆる重厚長大型の本格作品を書く人だと思って敬遠していたのだが、作家の風

【書評】読み返したくなる3冊の本

■ はじめに昨年、転職してから仕事に関係しない本をあまり読まなく(読めなく)なったけれど、仕事やキャリアに関係しなさそうな、いわば「遊び」の本が逆に印象に残ることが多くなりました。 近ごろ外出自粛で家にいる時間が圧倒的に増え、図書館も閉まってしまったので、家にある本を読み返したのですが、その中で特に読み返したくなる味わいのある本たちを紹介します。 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥ ① 堀江敏幸「雪沼とその周辺」新潮社、2003架空の町「雪沼」に住む