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ページをめくって考えたこと

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書評、というほどきっちりした体裁は取っていませんが、本を読んで、一応かみ砕いて考えたことを文章にしています。
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#ホラー

【書評】ダン・シモンズ「カーリーの歌」(1985):ホラーの枠を超えて社会の原理を問いかける佳作

■ はじめにダン・シモンズの「カーリーの歌」(原題:Song of Kali)。1985年に発表され、世界的に権威ある「世界幻想文学大賞」を勝ち取った作品だ。 あえてこの本について書く理由は以下の通り。 ①単なる娯楽小説の垣根を超えたテーマに挑んでいるという点、 ②そして作者が挑むテーマはまさに今考えられるべき話題である点 シモンズは「ハイペリオン」シリーズなどで知られる、米国を代表するSF作家だ。いわゆる重厚長大型の本格作品を書く人だと思って敬遠していたのだが、作家の風

【ホラー書評】澤村伊智「ぼぎわんが、来る」

読書の秋。 自分の中のホラーブーム(3年ぶり4度目)の起爆剤となった、とあるホラー小説を紹介します。 (そしてまた変な投稿シリーズを増やして自分の首を絞めていく…) =============== 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」(2015年、KADOKAWA/2018年、角川ホラー文庫) 【あらすじ】幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。 それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の怪我を負った後輩