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『今日、雨が止みました。』のはなし

こんにちは、睫です。

この度、所属する劇団・演衆やむなし第九回公演
『今日、雨が止みました。』が無事に終演を迎えました。

宣伝美術は六感デザインさん

睫は今回の公演で、戯曲の翻案(原作を元にした改作)を担当しています。

『今日、雨が止みました。』は、柴幸男さんの書かれた『あたらしい憲法のはなし』が原作になっています。

柴さんの『あたらしい憲法のはなし』は市民劇のために書かれた、人物が21人登場するおはなし。

昨年の今頃にやむなしの中で今回の話が持ち上がり、その時に確実に出演ができる想定の役者は10人だけでした。

じゃあまずは10人でできるようにしよう、ということで、当時はまだ劇団員ではなかった私のところに依頼が来て、それはお仕事としてお引き受けしました。
(少し話はズレるし、その辺のやりとりの詳細は知らないのですが、戯曲の人数や内容を変更しても良しと許可して下さった柴さんには本当に感謝しています)

登場人物と登場人物をくっつけたり、エピソードを組み合わせたり、辻褄を合わせたり。どうにか10人にしようと頑張ったのですが、どうしても11人が限界でした。

そんなことをしてたら、今回JK役を務めたれおなちゃんがやむなしへ見学に来てくれて。18歳の登場に、劇団員はソワソワしていましたが、ちょうどその頃は、戯曲に今の時代を感じるエピソードを入れるためのワークショップをしていた時期。
コロナ全盛期だったので、各自のコロナ禍エピソードを話し合う中で、高校時代の話をしてくれて、思わず泣いてしまった姿が印象的でした。

19歳になったれおな。かわいい。

そんなこんなで11人でトライすることになった『今日、雨が止みました。』。

このタイトルは、今回のスタッフ班で膝を突合せて、2時間ぐらいウンウン唸りながら決めました。

今回は演衆やむなしが誇る最高のスタッフ班の末席に加えて頂き、戯曲から会場の選定まで、演出の中埜さん、制作のまゆみさん、照明ののりおさんと、なんかめちゃくちゃ会議をしました。
マジで何言ってるか分からないこともありましたが(主に機材とか舞台の組み方の話)、勉強になることがとても多くて、いい経験をさせて頂きました。

別に「これがこうだから」みたいなことを教えてくれるわけではないんですが、ひとつの公演に対する取り組み方というか、考え方みたいなところに、ハァー!(感嘆) と思うところがあり、いや、それって何? って聞かれたらぶっちゃけ困るんですけど、とにかく、良かった。
すごく、大切な時間を過ごさせて頂くことができました。

で、ちょっと戯曲の話になるんですが、柴さんの戯曲ってマジで凄いんですよ。

一読した時にはめちゃくちゃ面白くて、何度も何度も読んでいくと「???」ってなるタイミングがあって、芝居が形になっていくと、ふと、遠い世界に来たような気持ちになる。

私が演出を務めた『何処ぞの二人』でも、柴さんの『つくりばなし』を使わせて頂きましたが、柴さんの戯曲は、私たちの足元が世界と、宇宙と繋がっていることを、いつも優しく、けれど唐突に教えてくれます。

そんな柴さんの戯曲『あたらしい憲法のはなし』という土台があって、『今日、雨が止みました。』は出来上がりました。

先程「コロナ禍のエピソードを話し合った」と書きました。基本的にストーリーは柴さんが書かれたままなのですが、途中の一場面と、冒頭のイントロダクションだけ、睫が完全にオリジナルとして加えています。

雨が降って、道が混んでいます。
駅のホームで、夫婦の旅立ちを見送る人がいます。
店先のシャッターを開ける人。
新しいビル。
井戸端会議の声。
鬼ごっこ。
自転車が駆けて行く。
カレーの匂い。
じゃみじゃみのテレビ。
読みかけの本。
目覚まし時計。

人々の営みは折り重なって、小さな歴史になっていきます。未来の新しい昔話には、そんな私たちの日常が登場するかもしれません。
これから始まるお話は、この世界と地続きにあるどこかで、むかしむかし、あるいは、ちょっとだけ昔に、あったかもしれないお話です。
戯曲『今日、雨が止みました。』0場

最初の風景のようなものの羅列は、先のタイトル決めスタッフ会議で、やはり膝を突合せて、がっぷり四つで決めていきました。

時代と時間というふたつの軸に、日常を落とし込んで。『じゃみじゃみ』は、砂嵐状態のテレビを指す福井弁。
もう『じゃみじゃみ』をテレビで見ることは滅多にないですが、とてもお気に入りの台詞のひとつです。

開場中の舞台に漂っていた、紫色の靄と、水辺ライト

今回のお芝居は、演出と、戯曲と、役者と、照明や音響と、舞台と、そして会場と。その全てがぴったりと噛み合って、本当に、誇らしいものになりました。

やむなしは公演の中で、未就学児の方もご入場頂ける"キッズデー"を設けています。お子様が泣いたり、笑ったり、舞台を見ながらお喋りしたり、ぬいぐるみで遊んでいたり。そんな愉快な回ですが、役者、スタッフ一同、改めて気が引き締まる公演でもあります。

キッズデー終演後、出入口の辺りでお客様のお見送りをしていた私に、幼稚園か、小学校低学年くらいの、メガネを掛けた男の子が声を掛けてくれました。

「面白かったゾ〜」

すごく嬉しくて、愛おしい思い出です。

男の子は最前列のド真ん中で観てた

最近、有難いことにいろいろ活動させて頂く中で、「睫さんは自分で劇団やりたいとか思わないの?」と聞かれることがたまにあって。

それはすごく有難いというか、そう思って頂けることが嬉しい質問です。何かしらの能力を見出してくれてないとそんなことわざわざ言わないだろうし、なにかしら、もったいなく思ってくださってるんだろうなって分かるので。

ただ、今回のお芝居を観て頂いた人には、伝わったかと思うんですけど、私は、一番には、演衆やむなしって場所で、お芝居を作っていきたいなって思ってます。

いやもちろん誘われたら客演もしたいし、私の書いた戯曲を上演してくれたら嬉しいし、なにかその他のことでも、誘って頂けたら積極的にチャレンジしていきたいけれど。

でも、ずっと続けていくのは、やむなしがいいなって。

そういうことを、本当に強く、そして心から思った第九回公演でした。

公演を観に来てくださった方、関心を持ってくださった方。公演のご案内をメールなどでお送りした際、可否は関係なく、「お誘いありがとうございます!」とお気遣いの言葉を添えてくださった方。笑

皆様の明日が少しでも優しくありますよう、お祈り申し上げます。

この度は本当にありがとうございました。


また未来で!

睫の素敵なお客様が撮ってくれた写真。
この世で一番綺麗な夜でした。

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